僕、何やかんやで警察に捕まちゃったんですけど、意外とマジでこれヤバくね?
ウ――――、ウ―――――
「何だよ・・・・。うるさいなあ・・・・・・」
サイレンみたいな音で僕は目を覚ました。
「っつ!いてて・・・・」
起き上がると、不意に額に激しい痛みを感じた。
まるで額が割れているかのように痛む。
「・・・・?ここは・・・・・?」
辺りを見回すと、むしろ僕の方が見られている事に気が付いた。
僕を遠巻きに見つめる大量の人、人、人。
・・・・・え?どういう状況?
「警察です!道を開けて下さい!」
人ごみをかき分ける様にして、何人かの警察が姿を現した。
・・・・・あ、じゃあさっきのウ―ウ―言ってたのはパトカーのサイレンの音だったのか。
急いでやって来たのだろう。
警官達は頬から汗を滴らせ、疲れの色が見て取れる。
ホント、大変な仕事だよなあ。
「どーも、お勤めご苦労様です。大変ですね」
何しに来たのかは知らないけれど、取りあえずねぎらいの言葉くらいはかけてあげた方がいいだろう。
頑張っている人はその分、認められなくちゃいけない。
僕は頑張っている人を認められる常識的な人だ。
「・・・・・・馬鹿にしてんのか?」
警官の中で特に筋肉質な男が僕を見て言ってきた。
?
何で僕が警官達をバカにしていると思われているんだ?
こんなに敬意を込めて話しているのに。
そんな僕に向かって警官達は銃を突き付けてきた。
・・・・・・え!?何で!?
「まずお前がいなけりゃ、苦労も大変な思いもしねえんだよ!!いいから手を上げてお縄に付きな!!シルクハットボーイ!!」
・・・・あ、そうじゃん!!僕今、『笑顔お届け活動』の途中だったじゃん!!
えーーと、確か、空中歩行をしようとしたんだった。
で、ビルとビルの間に掛けておいた透明な強化プラスチックの橋を踏み間違えて、落ちたんだ。
いや、でも可笑しいな?
もし失敗して落ちた時の為に腰に細いワイヤーを付けて、地面に激突しないようにしておいたのに。
何で僕は地面に落ちて、額を割って、警官に取り囲まれているんだ?
不思議になって、僕はワイヤーが付けてあった腰に手を回す。
――――あ、千切れてるわ。
細いワイヤーというのが悪かったんだろう。
でもな~~。細くないと空中歩行している時に下で見ている人からワイヤーが見えちゃう可能性があったからな~。
それは何かこう、マジックとして美しくない。
まあ、そのせいで捕まりそうになってるんじゃ世話無いけど。
「おい、何ぼーっとしてる。手を上げろって言ってんだよ!!」
おいおい、バカなのか?手を上げろと言われて素直に上げる奴がこんな大胆な犯罪する訳ないでしょう?
逃げますよ。逃げますとも。
唸れ僕のスーパー頭脳!
何かこのピンチを切り抜けるスペシャルなアイディア降りてこい!!
「まあまあ、そう大きな声を出さないで下さいよお巡りさん。その厳つい五角形の顔が、もっと厳つくなっちゃいますよ?」
「ふざけんな!誰のせいだと思ってんだ!!」
おっと、この警官は、僕がなだめようとしたというのに、むしろより一層怒り出した。
何だってんだ。
何か僕の言った言葉で気に入らないところでもあったのか?
じゃあ、ちょっと言い直してみるか。
確かに考えてみれば厳つくなるっていうのは、あんまりいい表現じゃなかったかもしれない。
もっと冗談交じりに話した方がいいのかも。
「その厳つい五角形の顔が、もっと五角形になっちゃいますよ?」
「殺す!!」
「待ってください石神さん!!発砲許可は出てませんから!!ホントに撃っちゃダメですから!!」
厳つい顔した警官は隣の警官達に抑えられながら暴れ出した。
全く、血の気が荒くて困る。
が、これでいい。
警官達から余裕が無くなり、冷静な判断力が失われた今なら、とっておきのあれを披露出来る。
「あ~~~~~~!!!ユーフォ―~~~~!!」
僕は遠くを指さし、大声で叫んだ。
人間、冷静でない時が一番本音を外に出しやすいものだ。
ユーフォ―。それはもっとも有名なUMAにして男の憧れ。
男は取りあえずユーフォ―に憧れを抱くものだ。
だからこそ、今この場にいる警官達は僕の指さした先を振り返り、確認せずにはいられない!
「・・・・あ?バカにしてんのか?」
・・・・て、あれ?誰一人として振り返らないぞ?
何で?
「誰がそんな嘘丸出しの罠に引っかかるっていうんだよ」
「は?う、嘘だ!ユーフォ―と聞いて振り返らない男がいるなんて!!お、お前ら男のロマンを何だと思ってるんだ!!はっ!さてはお前ら男じゃないな!!かといって、女には全く見えない・・・・。つまり、ニューハーふっぶげぇ!!!!」
「バカにすんのも大概にしろ」
厳つい警官の拳が僕の腹にめり込んでいた。
い、威力強すぎるだろ・・・。ゴリラかよ。
「二十時十八分。現時刻を持ってお前を逮捕する」
ガシャリッ
僕の手に手錠がはめられた。
辺り一帯をパトカーが囲み、そこから発せられるライトが僕の周囲全てを照らしている。
「くそっ!放せ!放せよ!!僕にはまだやるべき事があるんだ!!」
暴れてはみたものの、手錠がはめられた今となってはもう手遅れだろう。
「観念しろ。まったく・・・・。おい、この可笑しな仮面はまだ取れないのか?」
警官の中で最も厳つい男が、僕の仮面が取れない事に苛立ちを覚えたらしく、仮面を取ろうとさっきから僕の後ろでカチャカチャやっている別の警官に声をかけた。
「す、すいません、石神さん。しかし・・・、この仮面、鍵が掛けられるタイプの様で、外れません!」
「力ずくで無理やり剥がせないのか、杉林?」
「む、無理です。この仮面、想像以上にしっかりした造りで、ここじゃどうしようも・・・・・!」
そう言って、少しひ弱そうな印象を受ける警官―――杉林は頼りない声を発した。
おっ?これはチャンスじゃないか?
それはつまり、まだ僕の素性がばれる心配は無いという事。
「ふはははは!馬鹿め!!警察に目を付けられていたのは、こちらとて承知!なら、もしも捕まった時の為に対策をするのは当然だ!」
そう。この仮面は鍵をかけてロックするタイプであり、専用の錠がないと外せない。
素性がバレるのが怖かったから、わざわざ鍵付きの仮面を用意したんだ。
しかも、ビルの屋上から落ちても割れない程に、頑丈に作られている。
まあ、仮面の下の顔は落下の衝撃に耐えられず、派手に流血した訳だが。
「くそっ!これじゃ、この変態が誰なのかも分からないじゃないか・・・・・」
厳つい警官―――石神といったか?が悔しそうに唇を噛みしめる。
「ふははははは!」
僕は勝ち誇った様に声高らかに笑った。
いや、正体を隠せている以上、僕の勝ちだろ、これ。
後は、タイミングを見計らって逃げ出す事さえ出来れば、だけど。
「・・・・・・仕方ない。署に帰ってから切断して外そう」
「え・・・・」
ニヤリと。
ゴミを見る目で、石神は口元を吊り上げた。
え?てか、今切断とか、物騒な言葉が聞こえたんですけど!
「な~に、切断するとは言っても大した事じゃない。適当な刃物で鍵の回りの繋ぎ部分を切るだけだ。まあ、たまたま、うっかり、勢い余って、お前の皮膚まで切れてしまうかもしれないが、心配はいらない。死にゃあしない。多分」
「いやいやいや、まさかまさか、庶民の味方である警官様ともあろう方が、そんな物騒な事するはず無いですよね~?」
いや、というかするはずが無いと信じたい。
が、そんな僕の願いも虚しく、石神はわざとらしく悲しそうな表情を作り答えた。
「残念だよ。こちらとしても確かにそんな事はしたくなかったんだがね?だが、犯罪者が誰なのか分からないままにしておく訳にもいかないだろう?その過程でうっかり犯罪者を傷つけてしまったとしても、それは些細な事故、というやつだよ」
言いながら石神は僕をパトカーに押し込んで来た。
「ほら、そんな訳だからさっさと署に向かうぞ。乗った乗った。あ、ちょっと待て。その前に危険物を持ってないかボディーチェックを・・・・」
「えっ、待って。ホント、ちょっ、やめ・・・、痴漢!警察の権力を利用した痴漢だぞ!!いぃ~~~~~~やぁぁぁ~~~~~!!!」
「うるさい!!静かに持ち物を押収されろや!!」
当然だが、僕を逃がす気など全くない。
何なら、僕の安全を保障する気すらない。
何だかんだでいつも警察から逃げきれてたから舐めてたけど、これは・・・・、ホントにヤバい?




