例え雪男でも
意識が現実に引き戻されると、不思議と胸の氷が解けていくのを感じた。
・・・・・違うな。
溶けているんじゃない。
これ、移動しているんだ。
僕の体を蝕んでいた氷が移動し、左手に握る銃にどんどん冷気が溜まっていく。
にしても、あの精霊たち、最後に中々の皮肉を言ってくれたな。
そうだね。
これで僕は――――雪男だ。
雫からは嫌われそうだな・・・・・。
まあ、でもいいか。
雫の願いが叶いさえすればそれでいい。
世界が凍り付いても、構わない。
氷から解放された肺でいっぱいに息を吸い込み、僕は叫んだ。
「世界が凍り付いても、君の願いを叶えて見せる―――――――『氷結世界』!!!!」
銃を真上に向け、引き金を引く。
レールガンの要領で飛び出す弾は、冷気を帯びた―――魔弾。
それは、地球の重力を無視し、どこまでも、どこまでも上へと昇っていく。
やがてそれは、グラビティツリーツリーのさらに上、雫が先程まで準備し続けていた幾何学模様に吸い込まれていった。
カッ!!
変化は劇的だった。
幾何学模様ははじけ飛び、霧散する。
変わりに、空に浮かび上がったのは、結晶だった。
白く、美しい氷の結晶。
それも有り得ないほどに巨大だ。
「・・・・・!?」
余りの大きさに僕は言葉も出ない。
それは間違いなく、東京全土を覆い尽くすほどの大きさだった。
僕からは、端から端までを見る事すら出来ない。
が、やがて、その氷の結晶も淡い光となって消えた。
消えた拍子に大気は傾ぎ、絶大な量の冷気がそこから広がっていく。
僕は確信した。
間違いなく、この冷気は世界全土をも包み込むだろう。
そして、実際、冷気は僕たちにも向かって迫って来ていた。
叫び声を上げる事すら出来ず、僕は冷気の波に飲み込まれた。




