抱き合う僕らは、真東京の空を行く
戦いが始まる前から、僕は知っていた。
だからこそ、この戦いを仕掛けた。
グラビティツリー。
ここは今や、雫の『八角氷雪陣』による気圧低下により豪風地帯となっている。
この場所でまともに立てるものなど、いる訳が無い。
――――そう。ただ平然と立っているように見える雫もまたしかりだ。
僕は気付いていた。
雫の足の裏。それが、グラビティツリーの頂上と氷で接合されているのを。
そう。
ただ、足場を固め、固定していたに過ぎないんだ。
つまり、雫はこの戦いで歩く事すら出来ないし、足の氷を剥がしてしまえば立っている事すらままならない。
それは僕にとって間違いなく、チャンスだった。
普通に戦えばまず勝ち目は無かっただろうが、これなら。
が、まともに歩く事すら出来ないのは、僕とて同じ。
それは雫も分かっているんだろう。
「動けないのにどうやって私を阻止するの?そこから私を殺せる飛び道具でも持ってるの?」
「おいおい、殺すだなんてそんな物騒な物僕が持ってる訳ないじゃないか」
やれやれと腰に手を当て、僕は大きくため息を付く。
――――そして、素早く腰にしまっていた銃を取り出し、雫に向け撃とうと――――して僕の右手は切り飛ばされていた。
「ウギャァァアアアアア!!!」
手首から先が無くなってる!!
地面に落ちて転がってる。
痛い痛い痛い!!!!!
「は・・・、人和、あなたバカね。もう私があなたの言葉を信用する訳が無いじゃない。この嘘つき」
見ると、雫の手刀を構成する氷が伸び、僕の首筋に当てられていた。
すでに絶対絶命。勝負にもなっていない。
あの銃は、さっき石神さんからこっそりくすねておいた、とっておきだったんだけどな・・・・・。
「は、はは・・・・、嘘つきか。言ってくれるね。僕は今の今まで雫に嘘を吐いた事は無かったんだけどな」
―――あんまり死体を弄ぶ事はしたくなかったんだけど、この際仕方ないか。
「でも、今着いたじゃない」
―――石神さん、力を貸してください。
「それはそうだけど、ほら嘘はマジシャンの基本だし・・・・さ!!!」
素早く、僕は石神さんの足を拾い、グラビティシューズに付いているボタンを押す。
瞬間、凄まじい力で僕の体は吹っ飛んだ。
そのまま雫に向かい突っ込んでいく。
ピクリと、雫は反応する。
氷の手刀が僅かに動く。
が、それだけだった。
「きゃっ!!」
僕はそのまま雫にタックルして、勢いで雫の足の氷は剥がれる。
衝撃で氷の手刀は砕ける。
当然、僕にも手刀は当たり、腰のあたりに暑い痛みを覚えた。
でも、そんな事で勢いを緩めたりはしない。
勢いそのままに、僕らは抱き合う様に真東京の空に放り出された。




