足止めをくらってる突撃部隊よりも先に、グラビティツリーに向かうしかなさそうだ
「石神さん、いました。突撃部隊です」
杉林の言葉を受け、俺はビルの陰から顔を覗かせた。
見ると、先ほど急に凍り付いた地面にタイヤがスリップし、パトカーが動けなくなっていた。
シルクハットボーイ達にグラビティツリーを占拠された時点で、磁力駆動式のパトカーは使い物にならなくなっていた。
だからこそ旧型のパトカーを持ち出して来たのだろうが、この氷ではそれも無駄だったな。
警官達はパトカーから降り、自分達の足でグラビティツリーに向かうつもりらしい。
「ちっ、何してんだ。早くしねえとシルクハットボーイの思うつぼだろ」
そう。
恐らくではあるが、この東京中を覆う氷は、シルクハットボーイと、白装束の女の仕業と見て、まず間違いない。
だが、ただ、東京を氷漬けにする事に何の意味があるのか全く分からない。
ならば、その先にある何かを目的としていると考えるのが自然だ。
そんな相手を野放しにしておくのは、一刻でも早く止めるべきなのだ。
「石神さん、やっぱり僕らも突撃部隊と合流しません?こんな訳の分からない事が出来る相手に僕ら二人だけで何が出来るとも思えませんし」
杉林の弱気な発言を俺は鼻で笑った。
「はっ、あのな杉林、俺達は今、命令違反してんだぞ?今更、突撃部隊と合流何てしてみろ。場合によっちゃ、事が終わるまで隔離されちまうよ」
「ですが・・・・」
ばんっ
その時、何かの炸裂音が響いた。
「何だ!?」
音は、突撃部隊のいた辺りから聞こえた。
慌てて振り返ると、そこには―――
「くそっ!何だこれ!?動けないぞ!?」
「うわっ!べたべたする!!」
・・・・・そこには、ネットに絡めとられた突撃部隊の姿があった。
しかも、そのネット、何かべた付く粘液の様なものが染み込ませてあるらしく、隊員がネットを引きちぎろうと暴れる程に、粘ついて行く。
「・・・・何してんだ」
呆れて見ていると、
「ぎゃあっ!」
ネットに絡めとられていなかった隊員からも悲鳴が聞こえた。
そちらを見ると、隊員が盛大に転んでいた。
その足は縛られ、解くのに時間がかかりそうだ。
よく見ると、足元にはワイヤーが張られている。
しかも、ご丁寧に真っ白いワイヤーだ。
この氷漬けの景色の中では、色がとても似通っているので、走りながら見つけて避けるのは難しいだろう。
先ほどまでは、夜とは言っても、ビルの窓から漏れ出す明かりで、真東京は明るかった。
そんな中で、白いワイヤーなど目立って誰も引っかからなかっただろうが、氷漬けになった事で、月明かり以外無くなった今はそうはいかない。
「氷の世界になって、初めて意味を持つ罠・・・・か。厄介だな」
恐らく、この先もいくつかの罠が仕掛けられていると考えられる。
ていうか、あれだな。シルクハットボーイの奴、マジシャンを自称してるけど、もうこんなのマジシャンでも何でもないだろ!
「・・・・こりゃ、突撃部隊がグラビティツリーに乗り込むのは大分先になりそうだな」
そもそも、シルクハットボーイ達の目的が時間稼ぎなのは間違いないのだから、突撃した頃に事態がすでに終わっている事も十分に考えられる。
にも拘らず、肝心の突撃部隊はものの見事に罠に引っかかって動けない。
「・・・ちんたらしてもいられない・・・か。行くぞ、杉林」
「はっ、はい!」
そう言うと、俺達は、恐らく罠が仕掛けられてないであろう小道を使って、グラビティツリーを目指した。




