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秘儀『八角氷雪陣』

 やがて、展望台にいた全ての人々は地上に降りた。

 もう、この展望台には僕と雫しか残っていない。

「ところで、何で人間達をみんな逃がしたの?」

「そんなの、邪魔だからに決まってるじゃないか」

 すると、雫は少し考えるようなそぶりを見せたが、すぐに納得したらしい。

「・・・・ん。分かった」

 そう言って、頷いた。

「よし。じゃあ、始めようか」

「・・・・うん」

 雫は窓ガラスのすぐ近くまで歩いて行き、辺りを見渡す。

 そして、詠唱を始めた。

「―――――『白銀の空、氷結せし太陽、波打たぬ海、吹雪まう山、命止まる生命』・・・・・―――――」

 ・・・・・やっぱり、これは雫でも詠唱が必要な程の大技なのか。

 先日、雫から聞いた話を思い出す。


「・・・・世界を氷漬けにする様な大技を出そうと思うなら、事前の準備と詠唱は不可欠」

「詠唱?でも、雫って、今までそんなのしてたっけ?」

「してない。詠唱って言うのは、大気中に漂う精霊の力を効率よく借りる為の術だから。元々、精霊に好かれている雪女には、よほどの大技でないと、必要ない」

「そんなもんか」

「そう、だからとにかく、この技にはかなり長い詠唱が必要になる」


 人和が昨日の事を思い出している間に、雫の詠唱は終わった様だ。

「――――『灼熱の世界に終焉を。氷結あれ』!!」


 瞬間、グラビティツリーを中心に八か所の地面が白く輝く。

 雫が事前に東京の地脈八か所に雪女の妖力を注ぎ込んでいた場所だ。

 先日の公園デートも公園の下を通る地脈に妖力を注ぎ込む為に他ならない。

 摩天楼の中で輝くそれは、ビルの窓から覗く光よりも比べるまでも無く眩く、見る見ると膨れ上がっていく。

 が、急に光は凝縮され、縮み、一本の線となり、グラビティツリーに向けて、伸びて来た。

 やがて、八つの光はグラビティツリーで交わる。

 さらに、その線は枝分かれを繰り返していく。

「・・・・・・おお!!」

 僕は驚きで声を洩らした。

 グラビティツリーにいるからこそ、この光景を上から見上げているからこそ、分かった。

 今、地面に描かれれいるものの正体が。

 これは、結晶だ。

 氷の結晶。

 やがて、全ての線は繋がり、氷の結晶が完全に完成する。

「――――秘儀『八角氷雪陣』」

 雫が言い終わる瞬間、氷の結晶から絶大な量の冷気が噴き出した。

「・・・・・うおっ!?」

 僕は驚愕に目を見開いた。

 どうなるか雫から聞いて知っていながら驚いた。

 グラビティツリーが。

 いや、グラビティツリーを中心に東京全体が凍り付いたのだ。

 雪女。

 その余りに人知を超えた力の前に言葉も出ない。

「・・・・ひとまず、成功」

 どうやら、術は上手く成功したらしい。

 雫は肩の力を抜き、僕に振り返って疲れた笑顔を浮かべた。

「うん。お疲れ」

 僕も笑って雫に答える。

「後は、この『八角氷雪陣』を祭壇として、『氷結世界』を発動すれば・・・・」

 雫はそう言って、続きに取り掛かろうとするが、体がふらつき、今にも倒れそうだ。

 僕は雫の隣まで歩いて行き、雫の肩を支えた。

「雫、大分疲れてるだろう?今のままじゃ無理だ。少し休もう」

 僕の言葉を受け、雫は少し目を見開くが、すぐに目を細め、やがて閉じた。

「・・・・うん。そうする」

 グラビティツリーから見えるのは、壮大な凍り付いた真東京。


 極寒の世界で、僕の心は温かい何かで満たされていた。


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