いざ、ちやほやされる正義の味方になりに行こう
「何!?シルクハットボーイがグラビティツリーを占拠しただと!?クソッ!警備員は何してんだ!」
どうやら俺が警察署に来るまでの間に、事態はさらに悪化したらしい。
杉林から報告を受けて来てみれば、警察署は大混乱だった。
「はい、石神さん。どうしますか?僕ら五課は先日の一件で隊員のほとんどがやられてしまっているので、出動要請は出ていませんが・・・・」
杉林が不安げな顔で軟弱な事を言ってくる。
「馬鹿野郎!!お前、あんな事する犯罪者をほっといて、俺らはせこせこ事務仕事してましょうとでも言うのか!!」
「で、ですが、僕らが行ったところで、到底勝てるとは・・・・」
が、俺は杉林にそれ以上、言わせない。
―――――勝てない可能性が高い。
そんな事は俺にだって分かっている。
―――――そう、勝てない。逮捕できない。
それどころか、自分達がやられかねない事くらい。
が、それが何だというんだ?
「あのな、杉林。お前、何で警察になったんだ?」
「えっ、それは・・・・」
「俺はな、ガキ臭いかもしれないが、正義の味方に憧れて、もてはやされたいから、警官になったんだよ」
「石神さん・・・・」
「お前は違うのか?悪い奴らを全員捕まえて、世の中を平和にしたいから、なんて、きれいごとの為に警官やってんのか?」
「そ、それは・・・」
俺は杉林の返答を待たず、言葉を続ける。
分かり切った答えを待つ気は無い。
「そんな訳ないよな?適当に犯罪者捕まえて、みんなにちやほやされたいから、警官やってんじゃないのか?少なくとも、俺はそうだ」
*
思わず、僕の口から笑いが毀れた。
――――――石神さん・・・・嘘、下手すぎますよ。
僕が知る限り、石神という男は誰よりも正義感が強く、現実を見ている男だ。
だからこそ、シルクハットボーイ逮捕に行きたいのだろう。
例え、逮捕できなくとも、逮捕しに行かなかった自分を後で、死ぬほど攻める事に比べれば、大分ましだろうから。
逮捕しに行かなかった苦痛を味わわせないために、遠回しに、僕を誘っているんだ。
変に捻くれてるから、誰も石神さんの優しさに気付けない。
だから『鬼の石神』なんていう、似合いそうで似合わない通り名を付けられちゃうんですよ・・・・・。
「・・・・・僕も、そうです。みんなにちやほやされる正義の味方に憧れたから警官やってるんです」
・・・・だから、こう答えるのが、石神さんに対する礼儀だと、僕は思った。
「よし!じゃあ、やる事は決まってるな!」
「はい!行きましょう!!シルクハットボーイを逮捕しに!!」




