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例え犯罪者扱いされようとも、『笑顔お届け活動』を続けて見せる

 人間が好きだ。


 理由は特に無い。

 いや、深く考えればあるのかもしれないが、そこまで深く考えた事が無い。

 でも、それでいいじゃないか。

 別に理由が大切だとは思わない。

 好きという事実が大切なんだ。

 好きな人間の喜ぶ顔が見たい。

 僕としては、それだけだ。それが全てだ。


 だから、今日も『笑顔お届け活動』をする。


「――――――よし!」


 物陰から顔を出し、視界に誰もいない事を確認して、歩き始めた。

 深夜のショッピングモール。

 夜の十時――――営業時間まではどこを見ても人が目に付いたこの場所も、深夜の二時を回った今となっては誰もいない。

 そんなこと言ったって、警備員くらいいるだろうとか思うかもしれないが、今に限ってはいないのだ。

 丁度、交代の時間だから。念入りに調べたんだから間違いない。


 僕は肩にカバンと袋を担いで、ショッピングモールを歩く。

 自分で言うのも何だが、今の僕の格好は中々に奇抜だと思う。

 全身タキシードに身を包み、頭にはシルクハット。顔には太陽と月の模様が入った仮面をしている。

 一様、これが『笑顔お届け活動』をする時の僕の正装なんだけど、世間一般にはあまり良い印象を持たれていないらしい。

 まあ、だからといって変える気はないんだけど。

 それにこの格好、評判こそ良くないが、悪い事ばかりじゃない。


 例えば、監視カメラだ。

 今も辺りを見回せば所々に設置されているが、僕が仮面を被っている以上、正体がバレる事は無い。

 むしろ、このカメラに僕の姿を晒しておいた方が、後で反響が大きくなる可能性すらある。

 あ、じゃあピースとかしとこうかな。ピースピース!

 っと、遊んでる場合じゃ無かったんだ。


 窓から差し込む光を頼りに、僕は手に持っていた袋を開け、中身を確認した。

 袋の中に入っているのは爆弾だ。プラスチックの外装に、数本の配線が顔を覗かせている。

 パッと見、ちゃっちい気もするけど、それでも中々にいい出来だと思う。

 ――――そう。これはネットの情報を頼りに僕が作った爆弾だ。さすがにこんなヤバい物、誰かに作ったよーーって自慢する事も出来ないけれど、出来れば自慢したかった。作るのめっちゃ大変だったし。

 頑張れば僕でも作れるもんなんだね、爆弾って。少し自分に関心する。

 まあ、殺傷様に作った訳じゃないし、一様、威力はそこまで強くしていない・・・・つもりだ。

 だけど・・・・・、

「・・・・・作りすぎちゃった・・・かな?」

 今になって不安になる。

 カバンの中にはせっせと汗水垂らして作った三十個の爆弾。

 ここまで多いと、一つ一つの威力は弱くても、大爆発を引き起こす可能性は十分にあるんじゃないか?いや、実際どうなるかは知らないけど。

 作ってる時は、作るのに夢中で、何も考えていなかったしね!

 ホント、何でこんなに作ったんだろ?しっぱいしっぱい、テヘッ(*‘ω‘ *)・・・・・・・・・今のはキモいな。自分で言うのも何だけど。

 まあ、いっか。キモい顔して舌を出しても、仮面付けてるから誰にも見られないし。というかそもそも誰もいないし。


 ―――――ボタン一つで遠隔操作し、爆破出来るこの爆弾。

 今更だけど、全部持っていくのは危険だろう。

 僕は袋に三つだけを残し、残りの二十七個は近くの柱に立てかけると、屋上へ続く階段を上った。

 三十個も作っておいて三つかよ!と、自分でも思うが、こ、怖いから仕方ないじゃないか!


 僕は急いで階段を上る。

 早くしなければ警備員が着てしまう。

 それは困るんだ。

 警備員に僕がいる事がバレて、めんどい事になるのが嫌だから、というのは勿論ある。

 が、それ以上に警備員の身が危険に晒されてしまうのが嫌だった。

 真面目に働いている人を傷つけるのは、僕の望むところでは無い。

 僕の望みは人々を笑顔にする事。

 スマイルこそ至高。

 傷つけるなど以ての外だ。

「さっさとやるか・・・・」

 階段を上りきって、屋上の扉を開けた。

 僕の視界に飛び込んで来るのは、真東京の空。

 が、そこは都会の空だ。

 満点の星空が僕を迎えてくれるなんて事は無い。

 しかしながら、開放感だけはそんな空でも十分に感じられた。

 というか、どこまでも続く真っ黒い空は一人で見ていると少し怖いまである。いや、ビビってる訳じゃないよ。ホントホント。


 開放的なその空間には、明日のマジックショーで使うであろう色々な小道具が設置されていた。

 そして、メインとなる壇上には、真っ赤な箱が一つ、置かれている。

 明らかに人を一人入れる為のその箱は、『種も仕掛けもありますよ』と僕に訴えかけてくる。

 種と仕掛けしかないマジックボックスがそこにあった。

 ・・・・・にしても、何と言うか、凄いうさん臭い。明日これを使うつもりでいたマジシャンの三流具合が伺えるというものだ。

 子供は騙せても、大人は騙せないんじゃないかと思うよ。いやマジで。

「良かったね~。明日使わないで済んで」

 ならばこそ、このマジックボックスを僕が有効活用する事になお意味が出るというものだ。

 さすがにこれだけ大きなものは、僕個人として用意するのは難しいんだよね。

 申し訳ないが、このマジックボックスは僕が使わせてもらう。

 木っ端みじんになる予定だから、明日のショーは諦めてもらおう。


 僕は爆弾の入っている袋とは別に、肩に欠けていたカバンから、脚立とカメラ、パソコンを取り出すと、手早く組み立てた。

 カメラはマジックボックスがよく映る様に、位置を慎重に調節する。

 胸元には小型のマイクを付け、起爆スイッチを手に隠し持ち、あとは、この爆弾をマジックボックスの横に設置して・・・・・、よし。

「あ、あ~~、おほん。テステス」

 うん。声の調子は悪くない。

 カメラの映像もパソコンで確認すると、良好だ。

 ――――始めよう。

 僕はパソコンの撮影開始ボタンを押した。


「ふはははは!レッディースアーンド、ジェントルメン!!日本の皆さまこんばんわ!みんなに笑顔を届ける男、シルクハットボーイ、です!!」

 ネット上での生中継。

 僕は『笑顔お届け活動』をする度に毎回これを行っている。

 多くの人に見てもらうのに、ネットはかなり有効な手段だ。

 僕の『笑顔お届け生中継』も会を重ねるごとに視聴者の数が増えていき、今ではかなりの人気を誇っている。

 まあ、一つ問題なのは有名になりすぎて警察もこの生放送を見ている可能性があるという事だ。

 あんまりちんたらしていると本当に捕まってしまう。

 一様これ、犯罪だからね!

 不法侵入に器物破損、かな?


 撮影が始まってから、二十秒程しか経っていないというのに、既に中々の反響だった。

 パソコン上には、数多くの書き込みが寄せられている。

 事前にこの時間に事件を起こすと告知していたのが効いたんだろう。

 当然、警察も僕の告知をチェックし、警戒はしていただろうが、どこでやるとは言っていなかった僕の勝ちだ。

 警備員が巡回するこのショッピングモールでやるとは想定していなかっただろう。ふはははは!ドンマイ!!

「さあさあ、今回お見せするのは、大脱出マジックです」

 僕はそう言って後ろを指さした。

 指さす先にあるのは、明日、この屋上で行われるマジックショーの為に用意されていたマジックボックス。

「ま、大脱出マジックであの箱を見せたら、細かい説明は不要かと思います。では、さっそく行ってみましょう!早くしないとお巡りさんが来ちゃうからね!!」

 颯爽と、僕はマジックボックスの中に入り、扉を閉めた。

 ―――――そして、すぐに箱の後ろにある隠し扉を開け、外に出た。

 まあ、後ろにも扉が仕掛けられているのは、マジックボックスのお決まりのパターンだ。

 これで視聴者の皆様には、カメラのアングルからして、今も僕がマジックボックスの中にいるかの様に見えている事だろう。

 僕はマジックボックスから十分に距離を取って喋り始めた。

 マイクを通しての声はどこから喋っているのか相手に伝わらないので便利だ。

「それでは、行ってみましょう!ご唱和下さい!大脱出マジック!!3,2,1・・・・爆破!!」

 僕は手に握りしめていた起爆スイッチをポチッと押した。


 ドッゴオオオオォォォン!!


 凄まじい爆音が辺り一帯に響き渡る。

 目の前のマジックボックスは木っ端みじんに吹き飛んでいた。

 ――――――――ついでに言うなら、マジックボックスが設置されていた壇上そのものが吹き飛んでいた。

「・・・・・えっ」

 あれ~、おかしいな~~~。何か今まで壇上があった場所が瓦礫の山になってるぞ~?

 ・・・・・・ヤバくね?


 想像以上の威力に僕は言葉も出ない。

 いや、えっ、とは言ったけども。

 ふと、パソコンを見ると、書き込みの嵐だった。

 画面は書き込みにまみれ、もはや書き込みしか見えない。


 あの爆発は想定外だったけど、素晴らしい反響と言っていいんじゃないか?

 うれしくなって僕は書き込みの一つ一つをつぶさに確認した。

『シルクハットボーイ、死すwww』

『これ無許可でやってるんでしょ?バカじゃんwwww』

『はい逮捕ー、即逮捕―wwwwwww』

『俺、今マジで警察に通報したった( *´艸`)』

『wwwwwwwwwww』

『シルクハットボーイ、オワタw』


「いや、ふざけんな!!」

 は?通報?ヤバいじゃん!

 あ、でもこんな大爆発が起きた時点で警察は駆けつけるか。

 じゃあ、関係ないな。

 いやでも、それとこれとは話が別だろ!

 何してくれてんだこいつら。

 文句の一つで言ってやろうか。

 マイクに向かって声を入れようかと思ったその時、

 ズズウウゥンッ

 地面が揺れた。

「は?」

 というか、え?何だこれ?

 このビル、崩壊し始めてないか?

 揺れてる。震えてる。沈んでる―――――沈んでる!?

 うん。確かに、間違いなく、このビルは沈んでいる。

 回りに立ち並ぶビルがどんどん高くなっている様に見えるのは、こちらの高度が下がっているせいだろう。

 え、何で?

 何でこのビルは崩れ始めてるんだ!?

 確かに爆発は起きた。

 でも、それはマジックボックスと壇上を破壊しただけの爆発だ。

 ビルそのものを破壊する様な、そんなバカな事はしていない。していない・・・・・よな?

 ・・・・・・・・・・ん?いや、待てよ・・・・・・。

「あ、ああああああ!!!!!」

 そうか。分かった。理解した。

 ビルそのものを――――破壊したんだ。きっと。

 もしも、僕が爆弾を作り間違えていたら。

 いや、威力はすでに間違って作ちゃったのは分かってるけど、それ以外で。

 もしも、起爆ボタンを押した時の爆弾の受信範囲が僕の予想よりも広かったら―――――。

 そう。屋上に上がってくる前に、柱に立てかけておいた残り二十七個の爆弾が爆発するんじゃないか?

 そして威力は間違って尋常じゃない威力になっているはずだから。

 そうなると当然、・・・・・。

「ぼ、僕のバカアアアアアアァァァァァァ!!!!!」


 もう、爆弾なんて、二度と作らない。

 崩れるビルと一緒に落ちながら、僕は心に誓った。

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