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ほろ酔い気分の中、僕は過去を振り返る

「・・・・・まずっ」

 僕は缶ビールを一口飲んでそう漏らした。

 最近二十歳を迎えた僕は、一様大人の仲間入りをしたという事で、ビールも飲んでいい事になっていた。

 が、僕はビールが好きじゃない。

 あんなただ苦くてまずいものを上手そうに飲む大人たちが理解出来ない。

 でも、家の冷蔵庫にはいつも缶ビールが入っていた。

 ほら、やっぱりビールを飲む男って、何かカッコいいじゃん?

 が、入ってるだけだ。

 そうそう飲みはしない。

 まずいからね!

 でも、そんなまずいビールも今は飲みたい気分だった。


 雫は隣の部屋で寝息を立てている。

 今日は色々な事があったし、雪女でも疲れたんだろう。


 一人、僕は窓から空を見上げ、月を見た。

 真東京でも月は見える。

 半月だけど。

 こんな時は満月の方が雰囲気が出ていいんだけど、そこまでの贅沢は言うまい。


 片手に缶ビールを持ち、開いているもう片方の手で、手首をさする。

 うっすらと跡こそ残ってはいるが、もうそこに手錠は無い。

 何とか針金を使って外す事が出来た。

 が、長時間手錠がはめられていた為に、今だに手錠が付いている様な感覚を覚える。

「ふぅ・・・、もう二度と手錠をはめられるなんて御免だな・・・・」

 もし機会があれば、逆に石神に手錠をはめてやろうか。仕返しに。

「ふはっ」

 そうなった時の石神の顔を想像し、僕は小さく笑った。

 おっと、いけない。

 隣では雫が寝てるんだった。

 僕はもう一口、缶ビールを口に運んだ。

「・・・・にしても、あれだな・・・・。僕にこんな日が来るとは、思いもしなかったな・・・・・・」


 ほろ酔い気分の中、僕は過去を振り返った。


 ――――僕は孤児だった。

 捨て子っていう奴だ。

 幼い頃は児童養護施設で育った。

 別に珍しい事じゃ無い。

 この国には、多くの孤児がいる。

 ひと昔前よりもその数は増えているらしい。

 だから、僕が育った施設でも、沢山の孤児が暮らしていた。

 僕らの面倒を見てくれる人の人数が、まるで足りないくらいには沢山いた。

 今でも、あの施設で僕を相手にしてくれる人がほとんどいなかったのをよく覚えている。

 だからだろうか?

 僕が『笑顔お届け活動』なんて称して多くの人に注目されたがるようになったのは。

 何とかみんなを笑わせたいと、笑うみんなと一緒にいたいと思う様になったのは。

 まあ、実際は空回りして失敗する事の連続だった訳だけど。


 でも、そんな僕の前に雫は現れた。


 雫。

 白い白い雪女。

 僕が一目見て心奪われた彼女は言ったのだ。

 『私に協力、して欲しい』、と。

 最高だったね!!

 それはもう、生まれてこの方、味わったことが無いほどに!

 だって、そうだろう?

 ただ、必要とされるだけでもうれしいのに、それが惚れた女からの言葉だったんだよ?

 しかも、目的は世界を氷漬けにして地球を冷やすと来た!

 何て、壮大で、立派で、素晴らしい目的なんだ!!

 雫も喜び、僕も喜び、人々も喜ぶ。

 WIN、WIN、WINなこの話。

 完璧すぎて震えたね。笑いが止まらなかった。


 ああ、成し遂げて見せよう。

 きっと、これこそが僕の生まれてきた意味。


 僕の全てを掛けてでもやるべき事なのだから。

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