大脱走したはいいけど、すいません。咽すぎて気持ち悪いんでちょっと休憩してもいいですか?
いや~、未来の僕の嫁は優秀だな~。
僕が発した言葉の意味を、正しく理解してくれた。ますます惚れちまうぜ!!
そう。僕は一度も逃げられない、なんて言ってない。諦める、なんて言ってない。
手を上げ、跪いたのは、ただ逃げる為に必要な作戦だ。
たったあれだけの言葉のキャッチボールで雫が理解してくれるとは、正直あまり思っていなかったけど。
それに引き換え、この警官達はダメだな。
僕の言葉の中に含まれる本当の意味に気付けずに、僕に近づいてくる。
この場合の彼らが取るべき行動の正解は、逃げられない様、僕の足にでも発砲すべきだった。
まあ、僕の言葉の意味に気付けない様では、それも無理な話だが。
というか、もし気付かれたら僕的には万事休すだから、気付いてくれなくてあざーすって感じなのだが。
「そこを動くなよ」
もう一度そう言うと、警官二人はにじり寄って来た。
明らかに場慣れしていない動き。
素人と変わらない。
いや、別に僕がプロって訳じゃないんだけど。
とにかく―――これなら、何の問題も無いだろう。
「ええ、言われなくても動いたりしません・・・・よ!!」
警官が十分に近づいたのを確認して、僕は自分の靴底の土踏まずの部分を思い切り蹴った。
プシユウゥゥウ
途端、靴から煙が吹き出す。
「ぐわっ、何だ!?」
「ま、前が!!」
二人の警官は狼狽えて動きを止め、おどおどするばかり。
―――――これが、僕の奥の手。
流石の石神も、靴は押収しなかった。
僕の靴には、煙が噴き出す細工を施してあるのに――――。
「ふははははは!バカめ!!誰がお前らなどに捕まるものか!!修業して出直して来げーほがはっ、げえっほ!!」
高笑いをした為に盛大に煙を吸い込んでしまった。
「・・・・よく、分かったわ。バカかもしれないとは思ってたけど・・・あなた、かもしれないじゃなくて、ホントにバカなのね」
むっ、心外だな。
とはいえ、むせ返っている今の僕では何も言う事が出来ない。
「ほら、今の内に逃げるんでしょ」
「ま、待て!げほっげほっ!」
警官達はこの煙で視界が制限され、僕達を追って来る事は出来ない。
雫に手を引かれながら、僕達は走り去った。
*
「石神さん!・・・石神さん!!」
「・・・・・う・・ん」
俺が目を覚ますと、さっきまで一緒にシルクハットボーイの隣に座っていた杉林が覗き込んでいた。
「・・・ここは?」
辺りを見回すと、救急車が何台も止まり、救急隊員が忙しなく動き回っている。
どうやら、俺自身も、その内の一台の中で寝かされていたらしい。
「良かった。石神さん、目を覚ましたんですね」
「杉林、一体何がどうなってるんだ?」
「すいません。自分もついさっき目を覚ましたばかりなので、さっぱり・・・。ですが、あれを見て下さい」
「・・・・・・なっ・・・・・・!!」
俺は杉林が指し示す目の前の光景に絶句した。




