衝撃と少女
次の瞬間、左手に光が集まる。
「す、すげー。 なんだこの暖かい光は?」
俺の左腕は鎧のように硬い小手に、さらに日本刀に近い鞘に収まる刀のような物をつかんでいた。
「じょうできね。じゃああなたも能力がどれ位のものなのか、試させてもらうわ。じゃあ始めましょうか、マジケン恒例行事、『進入部員歓迎バトル』を、「「キャッチ!!」」。
彼女はさっきよりも早く能力を展開させた。
「タ、タイム! そんないきなり! む、むりですよ!」
『問答無用!』
そう叫ぶ彼女の一撃をギリギリ避ける。
「「「ドゴーーーン!!」」
振り向くと彼女の左こぶしはそのまま一直線に壁へと吸い込まれた。するとどうだろう。普通の打撃では付かない様な大きな凹みが出来ていた。
「こ、殺される。」
多分俺じゃなくてもこの場にいたらそう叫ぶに違いない。
「あちゃー。壁壊しちゃったw てへ! さあ、早く刀を抜きなさい。 私はまだ本気のホの字も出してないわよ。」
笑いごとにならないぐらいの身の危険、俺の体は震えていた。だが覚悟を決めないとこの先「バトル」なんてできない。
「 しかたない、やってみるか!。 いっけぇぇぇぇー!!!」
俺は鞘から勢いよく刀を抜いた。昔マンガで読んだことのある『抜刀術』を意識しながら。 次の瞬間、刀を手にした右手にずっしりと重い反動がのしかかり、北条さんは壁に向かって吹き飛んだ。
「な、なんなの。いったい何が・・・。 ガードしていなかったら・・・・やられてた。」
北条さんはつぶやく、北条さんはとっさに『ドール』を出してガードしていたようだが『リバース・リバース』の左腕の鎧はこなごなに砕けていた。
俺は右腕に違和感を感じながら刀を鞘に戻した。 すると小手と刀は光になって何事も無いように消え去った。
「あの、大丈夫ですか?」
俺は彼女に手を差し伸べようとしたが右腕が思うように動かない。
「衝撃波、多分あなたの能力の正体は剣風で空気を振動させて波を起こし、剣撃の威力を増幅させる能力、でも多分条件付ね。 その証拠に反動で右手が痺れてるんじゃない?」
どうやら本の彼女に戻ったようだった。
「はい、でも俺にこんな能力があるなんて・・・ 正直複雑な気分です。でもなんで今まで出来なったことが急に出来るようになったんですか?」
俺はそのことがきになった。だってそうだろ、いきなりこんなことができるなんて・・・・はっきり言って信じられない。
「それは貴方の『ライセンス』の効果よ。 ライセンスは能力を増幅させてくれるのと同時に『リミッター』の役割もしてくれるのよ。」
「リミッター。ですか?」
痺れる右腕を抱えながら聞き返す俺を見かねたのか、北条さんはまた集中を始めた。
「まあその話は後として、壁とあなたの腕の治療をしないとね。 「「キャッチ!」」。
彼女は能力を手に移した。
「腕を出して。」
俺は言ったように手をかざす。
『リバース!!!』
彼女がそう唱えると俺の右腕は光に包まれた。
「どう?治ったでしょ。 じゃあ次は壁っと。 『リバース!!』 。
壁もみるみるうちに元に戻っていく。 唖然とする俺の後ろのドアが開く。
「部長、言われた通りに来ましたよ。 あと、差し入れも。」
振り向くと金髪の背の高い男がそこにいた。