桜城高校マジック研究部 その1
『私立桜城高等学校』それが俺が入学した高校の名前だ。なぜこの学校に入学したのかと聞かれると困るが多分、3年前の事件が理由だろう。生徒3人の「行方不明事件」そのことがなぜか俺の興味を駆り立てた。
入学式も無事に終わり知らない顔ばかりの教室の新しい机の寝心地を確かめた後、新担任の挨拶が始まり、午後からは部活見学と言う指示がされた。 まったく、「メンド(面倒くさい)」の一言だった。 俺は適当に文化部に入って即座に幽霊部員となってバイトでもしようかと考えていたので文化部の部室が集まる旧校舎へ向かった。予想どうり廊下はさむかった。
「よっ!!」
いきなり肩を叩かれた。振り向くとオナ中(この場合同じ中学校出身の奴のことを指す)の「鈴原」だった。
「イテー、触るな、寄るなw」
いつものと同じようなリアクションを鈴原にした。
「はいはい、で、なんの部活入んだ?」
「今それを見に行くとこだろorz」
「たしかにw」
鈴原がアホ丸出しで笑う。
「おまえも文化部見に行くのか?」と聞くと。
「いや、お前の後姿が目に入ったからな。」と笑いながら答えた。
そんなこんなで旧校舎までの道のりは結構だるい。1年生の教室は4階にあり旧校舎は一度1階まで下りて体育館を挟んだ向こう側にある。 道は渡り廊下でつながっているがまだ春先の気温なので少し廊下が肌寒い。
1階に着いた頃だろうか、書類を抱えた背の低い女の子が俺のまえをとことこと危なっかしく歩いているのに気がついた。 どうやら彼女も旧校舎に向かっているようだった。彼女は変わった形のヘアバンドをつけ前髪を分けていた。その綺麗なながい黒髪はとても不思議な感じを放っていたが彼女は俺たちに気ずかないのかそそくさと旧校舎に吸い込まれていった。
大体のやつらが靴に履き替えて運動部の活動を見に行っているのか旧校舎の方にはあまり人がよりついていないことがうかがえた。
「そういやさ?」と鈴原が眠そうに俺にしゃべりかけてきた。
「ん?」と話を聞こうとした瞬間に渡り廊下の開いている窓から風が吹き抜けた。
「季節は春」、俺は1年、新生活はゆっくりと、そして確実に始まっていった。