Bメロ 二
ニ
雄太は夕方のJR西中山駅前バスターミナルの片隅にある広場でミコを見守っていた。
広場には待ち合わせの目印によく使われる噴水があり、そのへりにキョーイチが座ってアコースティックギターを弾き、ミコがその横に立ってSKD48の「桜マイウェイ」や、ももいろキャデラックの「SKY SWIMMER」などアイドルソングの人気曲を歌っているのだが、周囲の人は忙しそうに通り過ぎていくか、興味なさそうにスマートフォンをいじりながらチラチラと見ているかで反応は冷ややかだ。
雄太の感じた限りではミコの歌もキョーイチの演奏も悪くはないのだが、道行く人々の関心を引くことはなかなか難しいようだった。
自分の歌を聞いた一般人の反応を見てみたいとミコが言い出したので、雰囲気をつかむためにもとりあえずやってみようということになったのだが結果はあまり芳しくない。
(まあ初めから順風満帆とはいかないよな。ピンキャデだって公園で観客ゼロからスタートしたんだし)
雄太はどうすればこの状態からアイドルとして成功できるのか考え始めた。まずはこの路上ライブをどうやって盛り上げようか、ここでつまずいているようではこの先の見通しがまったく立たない。
ミコは歌い終えると一礼した。拍手するのは雄太と、通りすがりの冷やかしの若者たちだけだった。