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コーダ 二


「では次、金城ミコトさん、お願いします」

 薄暗い舞台袖でADが言った。

「しっかりな」

 傍らのエイリーが出番を待っていたミコの肩を軽く叩く。

「頑張れよ」雄太も声をかける。

「はい」

 桃色地に色とりどりの薔薇をあしらった振り袖姿にヘッドセットを付けたミコが優雅な足取りでステージの中央へ進みでる。ステージには着物レンタル会社のツテで借りることができた琴が置かれている。ミコは一礼して琴の前に腰を落ち着け、ジョン・レノンの「イマジン」をおもむろに演奏し始めた。

 曲の前半はしっとりと琴の音色を響かせながら、まるで子守唄のようにたおやかな歌声で郷愁を誘う。そして曲が進むにしたがって琴の演奏が激しく複雑になってくると同時に情感を込めて歌いあげてゆく。ステージの袖にいた雄太は、その琴と歌声の絶妙なハーモニーに心を揺り動かされ、思わず涙がこぼれ落ちそうになった。エイリーもハンカチで目元を押さえている。

「イマジン」がおわると、雄太とエイリーは急いでADと共にステージ上の琴を片付けた。そしてすぐに「BE SMILE」のイントロがスピーカーから流れ始めた。

 予選では時間の都合上生演奏はできないということで、どうすれば他の出場者より特色を出すことが出来るかを相談した結果、一曲目は琴を使っての弾き語りを秘密兵器として採用したのだった。練習は楽器を貸してくれることになった琴の教室で数時間行っただけだったが、「この間の撮影の時はほとんど弾けなかったから随分久し振りだわ、二ひゃ……二年振りかしら」などと言いながら「レイラ」や「サウンド・オブ・サイレンス」を見た目が中学生の小娘が軽々と弾きこなすものだから、その教室の師匠さんもすっかり自信を喪失してしまったのだった。日本に琴が伝わった頃から弾いているのだから落ち込むことはないですよ、と雄太もフォローしたかったのだが言えるはずもなくなんとも申し訳ない気持ちになってしまった。そして二曲目には評判の良い「Save the GOD!」ではなく「BE SMILE」を持って来たのも敢えて多芸多才さだけでなく、普通のアイドル曲も立派にこなせる所をアピールするためだった。どのみちここで躓いているようでは本選でシスターテイルには勝てないというミコの覚悟の表れでもあった。

 ミコは着物の袖を派手に振りまわしながら華麗に舞い踊る。


いつも授業中 窓の外ながめてばかり

先生のジョークに クスリともしない

現実逃避が得意な君

でも時々見せる笑顔 とても素敵

居眠りのフリしながら

こっそり盗み見てる わたし


LET'S BE SMILE それだけで

LET'S BE SMILE 幸せな気分なの


いつも何も言えなくて 泣き出してしまいそう

目と目があってもすぐに 視線そらせてしまう

もし わたしが微笑んだら

君は笑ってくれるかな

きっとぎこちない笑顔になって

ハハハと笑われるかな


LET'S BE SMILE 鏡の前でなら

LET'S BE SMILE 完璧なのに


きっと明日こそは 自然に笑えますように

きっと明日こそは



 全てのパフォーマンスが終わり、ステージ上には今日予選を戦ったアイドルが集合して、緊張した面持ちで結果発表を待つばかりになった。そして得点の集計が終わり、司会者がもったいぶった口調で結果を告げた。

「JGI南関東予選の優勝者は……金城ミコト!」


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