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サビ 八


「よーし、休憩入れようぜ」

 雄太はドラムスティックをスネアドラムの上に置いて、汗だらけの顔を肩にかけた金城ミコト公式サイトで通信販売を開始したばかりの物販のタオルで拭き(もちろん自腹だった)、足元のペットボトルの水を口に含んだ。雄太達とミコは、クリスマスイベントを間近に控え、新横浜のいつものリハーサルスタジオで、新曲の練習に励んでいた。

 この所、雄太達は師が走るどころではないほどの忙しい日々を過ごしていた。雄太、キョーイチ、マサトシの三人は大学生活とアルバイトをこなしながら、エイリーはミコのマネージメント業を行ないつつ、全員忙しい合間を縫って教習所に通い始めたし、クリスマスイベントは勿論、年明け早々のレコーディング、二月のレコ発ツアーに向けて演奏の質を高めていく必要があったので今日のようにリハーサルスタジオでの練習も欠かせない。

 ミコの方も学校の勉強を無難にこなしながら、回数は減ったものの義理を欠くわけにはいかないと路上ライブを続けていた。好評だったコマーシャルのおかげで、着物のコマーシャルのお正月バージョンを撮ったり、他にも何本かコマーシャルの依頼が舞い込んだりと一気にマスメディアに露出する機会が増えた。おかげで街中を歩いていても金城ミコトだと気づかれることが増えてミコは嬉しい悲鳴をあげている。

 他にもマサトシが動画投稿サイトにアップした、リハーサルスタジオでのミコの超絶技巧演奏付きの「雨に歌えば」「チキ・チキ・バン・バン」「サウンド・オブ・ミュージック」などのミュージカル映画の踊り付き弾き語り動画が、日本よりも海外で「ジャパニーズワンダーガール」と話題になって、海外のテレビ局からインターネットストリーミング上でインタビューを受け、本当に自分で演奏しているのかと疑う意地悪な海外のインタビュアーを実際に演奏して黙らせたり、有名な音楽イベントのオファーを受けたりと日本より先に海外でブレイクの兆しが見えはじめていた。

 ミコは人間ではないので戸籍がない。当然パスポートも取れないので海外イベント出演は断らざるを得なかったのが残念だった。しかし動画やインタビューがきっかけでアクセス数が爆発的に伸びた事で広告収入がかなり入ってくることになりユウプロの経済事情を一気に好転させた。以来リハーサルスタジオの練習風景などのファンサービス用の動画は英語バージョンも作成することになり、日本語版の動画よりも再生数が多いほどであった。

 休憩中の今も、マサトシが、新たに購入した動画配信向けの小型カメラをミコに向けて動画を撮影しているようで、雄太では聞き取れない流暢な英語で何か喋った後、ホール部分にピックアップを取り付けて、マイクを向けるよりも高音質で録音できるように改造した形見のアコースティックギターをアンプに繋いで、イーグルス「ホテルカリフォルニア」などの有名な洋楽曲のギターソロをカメラの前で披露していた。

 雄太は以前、ミコのファンが増えることがどのようにミコにとってプラスに作用するをミコに質問したことがあった。

「本当は私を祀った神社にみんなが参拝してくれるのが理想なんだけど、神社というのは人間にとってわかりやすいように形にしただけで、本来は想うだけでも十分なの。ほら、キリスト教では食べる前にお祈りしてるでしょ? だから私の歌を聴いて力が湧いた、感動した、というふうに私の存在を認識してくれればそれで私の力の源になるの。一人一人の小さな思いは参拝で集まる力よりは弱いんだけど数が多ければ馬鹿に出来ない力が集まるの」

 とその時ミコは答えたが、それが神道のない海外でも有効なのかどうかは雄太にはわからない。

 雄太達は海外に目を向けてばかりもいられなかった。エイリーが次に目標に掲げた、アイドル業界注目の一大イベントが来年春に控えていて、そのイベントにはシスターテイルも参戦していたのだ。


「JAPANESE GOT IDOLS」


 アメリカの新人発掘オーディション番組の日本のアイドル版と位置付けられて、優勝者には主催するテレビ局から賞金一千万円と好きな番組を作れる権利が与えられる。参加条件は素人、活動開始から二年未満の新人アイドル、または地方限定のいわゆるローカルアイドルであること。各地方で年明けから予選があって、勝ち上がったアイドルが最終的に本選で優勝を争う。予選や本戦の模様はインターネットの動画配信や衛星放送で随時放映され、視聴者も優勝者を選ぶ投票に参加できるという企画だ。

 ミコも予備予選にあたる動画審査を突破済みで、二月の西関東予選出場がすでに決まっていた。シスターテイルも予備予選を突破して東海予選に進出しているのを「JGI」公式サイトで確認出来た。


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