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サビ 四


 翌朝、加奈子は一人になりたかったので朝の神社の掃除を引き受けた。青紫の空の下、制服のブレザーのポケットに手を突っ込み、早足で神社までやってきた。淡々といつもの手順で掃除をすすめ、夜が明けるころには終わらせた。境内に誰もいないことを確認して、ベンチに腰掛けて昨日から手つかずにしていた封筒をカバンから取り出し、封を開けて、中から手書きの便箋をとりだし、じっくりと読み始めた。

 

 

 

前略 突然の手紙に驚かれたと思います。


 僕は今まで勉強と将棋以外のことに興味もなく、ハタから見てもつまらないやつだと思われていたかとしれません。実際そのとおりなんですが。でも九月の初旬ごろ、たまたま見かけた駅前の路上ライブで金城さんの歌声にハマり、それ以来オッカケみたいに毎週路上ライブに通っていたのですが、観客の中に竹下さんの楽しそうに金城を応援する姿を見つけて以来、金城さんを見に行ってるのか竹下さんを見に行ってるのかわからない状態になってしまいました。

 最近は路上ライブも人が増えすぎて入場制限がかかって見れないことも多くなったので、ダメもとで彼女にどこかのライブのチケットが欲しいんだけどと頼んでみたら、あっさりと、なぜか二枚、チケットを格安で譲ってくれたのです。

来年は受験も控え、このようなチャンスは多分最初で最後かもと、思いきってお誘いの手紙を書いてみました。もしも十二月二十四日、予定が空いているのなら一緒に金城ミコトの出演するライブに行ってください。よろしくお願いします。




 加奈子は読み終えると手紙を膝の間に挟み、頭をかきむしり、両の手のひらで顔を覆って真っ赤な顔を隠して、動悸がおさまるのをじっと待った。気分が落ち着くともう一度手紙を取り上げて読み返し、今度は読み終えると膝に拳を打ちつけて悔しさをにじませながらひとりつぶやいた。

「チキショー、ミコのやつ、何か感づいてやがったんだな」

 だから加奈子が同じライブのチケットを頼んでも「うーん、今回のはちょっと……」とネクフェスの時みたいに優先的に回してくれなかったのか。

 たとえ加奈子が路上ライブの聴衆の中にいたクラスメイトの吉田淳に気づかなくても、ステージに立つミコの側からならよく見えるに違いない。路上ライブの時だけでなく、普段学校にいる時も、彼の視線の先に誰がいるのかも。


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