サビ 二
二
雄太は自宅の部屋で曲作りに精を出していた。手元のスマートフォンで時間を確認すると、作業を始めたのは夜十時ごろだったのに、いつの間にか深夜一時を回っていた。パソコンの作業データを保存し、ヘッドホンを外して抱えていたギターをスタンドに立てかけた。肩甲骨をグルグル回して肩の凝りをほぐしながら椅子を回転させて後ろを振り向いた。雄太が作業を開始する前はミコはゾンビ抹殺のコンボを研究していたのに、いつの間にか液晶テレビの電源は落とされ、部屋の隅でトラ猫姿になって丸まっていた。リビングにはミコ専用のベッドがあるのだが、最近は父が猫嫌いを克服しようと色々ちょっかいをかけてくるらしく、その相手をするのに疲れるからと言って雄太の部屋で寝ることが多い。ミコに今完成したばかりの新曲を聞いてもらおうと思ったのだが、きっと疲れているだろうと思って起こすのはやめておいた。彼女の体力を中学二年生で計算しても良いのかちょっと迷ったが。
雄太は再び椅子を回転させて机に向き直り、パソコンを操作し始めた。ホームページや動画サイトのアクセス数をチェックしたり、メールの確認などを行った。
エイリーから一通、重要! のチェックがついたメールが到着していた。
件名:インディーズデビューの件
本文:インディーズレーベルを運営しているプレシャスレコードでアイドルCDの部門を立ち上げるというプロジェクトがあって、第一弾の何組かのアイドルのうちの一枠でミコを使ってくれることになった。とりあえずミニアルバムと小さなツアーを組むらしい。どれだけプッシュされるかはわかんねけどCDは一応全国の流通に乗るのと、カラオケ配信されたり大手のサイトでダウンロード販売もやってくれるってさ。チャンス到来!
雄太は深夜なのに声をあげて喜びそうになった。プレシャスレコードといえば雄太たちのようにバンド活動をしている者なら誰でも知っている有名レーベルで、全国チェーンのCDショップのタワーレコメンドではインディーズレーベルにもかかわらずメジャーレーベルと同等の扱いを受けている。
曲は雄太たちのものを使うのか、レーベルが用意するのかはこのメールだけではまだわからないが、とにかくアイドルとして成功を勝ち取るために重要な仕事になることは間違いない。雄太はすっかり眠気が覚めてしまったので、もう少し曲作りを続けることにした。




