Bメロ 八
八
ネクフェス当日、ミコはエイリーと二人でZAP幕張に向かった。雄太たちは客として入場することになっている。雰囲気をつかむため、登場順は最初なので通しのリハーサルは最後になるのだが、早めに入って他のアイドルのリハーサルを見学することにしたのだ。
一度楽屋に入って、オールスタンディングで700人程入るフロアーに二人は入った。いまは空調も効きすぎてひんやりとしている。一段高くなった舞台ではリハーサル中で、賑やかな曲に合わせて六人の少女が歌っていた。エイリーは「お偉いさんに挨拶してくるから」と言って後方のドアから出て行った。
ミコは後方に三角座りで陣取り、舞台を見つつ後方のPAブースと舞台のやりとりを聞いたりしてリハーサル風景を見学していた。いつの間にかエイリーがミコの横に忍び寄って脇腹をつついてきた。
「きゃっ」とミコが小さく身悶えしたのに満足したのか、その横にしゃがみ込んで「どうだ、他の連中は。今日は勝負の日だかんな、いつもの遠慮はいらねーぞ」と聞いてきた。
「まあ、敵じゃないですね」
「でもシスターテイルっつーのが最近人気出てるんだって、ほら」
PAから「BLUE SUGARさん、お疲れ様でしたー。次、シスターテイルさん、お願いしまーす」とアナウンスされ、四人組の少女が脇から出てきて、お願いしますと一礼した。
オーケストラに三味線や琴の音が混じった和の雰囲気を感じさせる前奏が流れてきた。エイリーも他のアイドルの傾向や動向をチェックしていたときに動画サイトで何度か見た事がある「困ったときは巫女頼み」という曲のリハーサルが始まった。ステージの四人はかなりやりなれた感じで歌も踊りもめまぐるしく立ち位置が入れ替わるフォーメーションも統率が取れていて見ていて楽しい。それにセンターの長髪の少女がミコにも負けない程可愛らしい。しかしソプラノまで綺麗に出る清涼感あふれる歌唱力が売りの正統派のミコとは違って、かすれ気味だが伸びのある低音が力強い歌声と、彼女の踊りの仕草の一つ一つに微かなエロスを感じさせるとエイリーは思った。おまけにミコより胸も大きい。
「なんかエロいよなぁ、どー思う? ミコ……おい、どした? ぼーっとして」
ミコはまるで魂が抜かれたかのように顔面蒼白で、舞台の少女達を見つめていた。
「ヤバ……まさか……あたしと同じ事考えてる神がいたなんて……しかも私より強力」と、ミコは呆然としてつぶやいた。




