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第一話 泣き虫

第一部


僕が、「強くなりたい」と思ったのはあの時の事。


 あの頃、僕は泣き虫で、

とろくて虐めの標的No.1という存在だった。

幼稚園の頃から、ずっと虐められ続けてきた。

そんな僕を助けてくれる人が一人だけいた。

僕は彼の事を正義のヒーローだと思った。

ピンチの時には必ず現れ、いつも助けてくれる。

虐められていても、龍介が助けてくれる。

だから、虐められても多少の安心感があった。

今思うと情けない。


 龍介は、僕を虐めている連中とも仲がいい。

仲がいいという事は意見を述べやすいはずだ。

しかし、虐めを止めるようには言ってくれない。

もうやめるようにとは言ってくれないのか。

なんで言ってくれないのと聞こうと思った事もあるが、

助けてもらっておいて、そう発言するのはどうかと思う。

僕はあえてこの事には触れなかった。


 ある日、僕は母からおつかいを頼まれた。

しぶしぶ僕は八百屋に向かった。

その途中、あいつらと彼がいた。

僕は、彼がいるから安心だ。そう思って近づいていった。

そして、耳を疑いたくなるような言葉を聞いた。

「おい、龍介。

 正義のヒーローごっこはいつまで続けるんだ?」

えっ・・・

僕の持っていたカバンがポトっと落ちた。

向こうはこちらに気付いたようだ。こちらに向かってきた。

「雄太、おまえいつからここにいた?」

知らぬうちに僕の頬は濡れていた。

「嘘だよね・・?」

これは信じたくない。

龍介とあいつらがグルだったなんて。

彼は、龍介は正義のヒーロだと信じたい。

「嘘じゃねえよ。泣くなよ。泣き虫。」

涙が止まらない。

悔しい。

情けない。

「なんだ?その目は。

 悔しかったら

 泣き虫を卒業することだな。」

馬鹿にした声でそう言われた。

僕はこの言葉を聞いて一層悔しくなった。

足元が濡れている。

「あばよ、泣き虫雄太君よぉ。」

あいつらと龍介は、笑いながら

僕に背を向けて歩いていった。

泣き虫、泣き虫、泣き虫。

いつまでも耳に鳴り響く忌まわしい言葉。

本当に悔しくて、情けなくてしたかたがない。


 ああ・・僕が強かったら。

強いってどんな気持ちか。

僕が生まれつき強かったらどうなってただろう。

あいつらと一緒になって虐めてただろうか。

強いってどんなにいい事だろうか。

生まれて初めて強くなりたいと思った。

今まで強くなりたいと思わなかったのが不思議だ。

「強くなりたい・・・」

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