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第一話 最悪と約束

 高校二年目にして十件目のバイトをクビになった。俺――吹雪ハルトは背中を小さく丸めて歩く。

 今回のバイト先では、落ちそうな皿に気づいて駆け寄った拍子に床のペットボトルを踏んだのだ。すっ転んでバケツの水を頭からかぶり、下準備した食材も全部駄目になった。しかも転ぶのはこれで三回目である。

 俺の少し短い茶髪はバケツの水でびしょびしょに濡れている。鼻にぽたりと水滴が垂れた。

「……あーあ。記録更新か」

 蝉の声が響き、夕陽が街を染めている。髪を滴る水滴に光が宿った。

 ぼうっと景色を眺めていると、金色の太陽が幼馴染の髪色と重なった。俺は苦笑をこぼす。

 道を引き返し、重い足取りで幼馴染のいる高校へと向かった。夏休みが始まってから行っていなかったから、会うのは二週間ぶりだ。

 先々週、別れ際の彼女の視線を思い出した。

 

『……これからもいてね、約束。……きっともう誰もいなくなったりしないから』

 

「もういなくならない……か」

 あの人を失った記憶が思い出されて拳を握りしめる。俺は俯いて小石を蹴った。

 その時、俺の横を母親と手を繋いだ小さい子が通り抜けていった。俺は目を逸らし、頭を振る。

 俺は無心で歩みを進めた。頭上をカラスが数羽、大きな羽音を立てて飛び去っていった。

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