レイヤー44 明日を迎える魔法
もしも
ある日突然
今まで使えていたものが
全て使用不能になったら…
復旧は続いていた。
だが規模が違った。
周辺ではない。
世界だった。
大陸各地。
同時多発呪災。
空が裂ける。
海が濁る。
魔力嵐。
各地で変異。
研究員が呟く。
「……俺たちがやったのか」
洋蔵は答えない。
沈黙。
やがて低く言う。
「一因です」
「一因?」
図面が広がる。
発生条件。
複数トリガー。
因果干渉はその一つ。
「これだけじゃなかったのか」
「世界が不安定でした」
静かな返答。
「均衡が崩れていた」
一拍。
「災害は」
間。
「自浄作用でもあります」
研究員が絶句する。
「世界が自分で掃除したと」
「誤作動ですが」
沈黙。
「……じゃあ敵は」
「災害だけではありません」
新しい報告。
魔物群出現。
汚染圏から侵出。
人類圏接触。
「戦争どころじゃないな」
「終わりました」
「国家間戦争が?」
「意味を失いました」
短い返答。
各国停戦報。
共同復旧。
共同防衛。
研究員が苦く笑う。
「皮肉だな」
「厄災が争いを止めた」
静かな肯定。
一拍。
洋蔵が瓦礫を見る。
「……私の責任でもあります」
珍しく声が重い。
「禁忌に触れた」
「後悔してるのか」
長い沈黙。
「しています」
研究員が言う。
「なら潰れるな」
「まだ終わってない」
洋蔵は頷く。
「はい」
小さく。
新しい図面。
戦争用ではない。
共生圏設計。
対魔防衛陣。
浄化防壁。
「次は人同士じゃない」
「生き残る戦いです」
一拍。
「魔物と人」
空を見る。
灰の向こうに朝焼け。
研究員が呟く。
「明日は来るか」
洋蔵が答える。
「迎えに行きます」
短い返答。
円が更新される。
災害。
浄化。
復旧。
鎮魂。
均衡。
共生。
再編。
研究員が言う。
「最強の魔法は何だ」
洋蔵は静かに言う。
「壊れた世界でも」
一拍。
「明日を迎えることです」
明日は
何をしようか
どこに行こうか
何を食べようか
誰に会おうか
何を話そうか
明日が待ち遠しい




