レイヤー36 兵器としての魔法
カオス理論って魔法だよね
研究所の机ではない。
広い作戦室。
魔法陣が床ではなく、壁面に展開されている。
巨大。
多層。
研究員が沈黙する。
「……もう個人用じゃないな」
洋蔵が答える。
「違います」
図面を開く。
一人では起動できない。
複数系統。
供給線。
補助陣。
制御陣。
観測陣。
「積層じゃ足りません」
一拍。
「組みます」
「何を」
「兵装を」
静かな返答。
中央に新しい魔法陣。
円ではない。
網状。
階層状。
都市計画図にも似ている。
「魔法陣じゃないな」
「概念を変えました」
短い返答。
「術式ではなく」
間。
「プラットフォームです」
研究員が腕を組む。
「何を撃つ」
洋蔵は紙を出す。
高位魔法。
戦術級。
戦略級。
禁呪級。
沈黙。
「そこまで行くか」
「個人では無理です」
即答。
「負荷が高すぎます」
別紙。
魔力消費量。
術者単独——破綻。
複数供給——成立。
蓄積媒体併用——安定。
「……一人で使うなってことか」
「死にます」
短い断定。
研究員が苦笑する。
「兵器だな」
「はい」
迷いなく肯定。
壁面の魔法陣が光る。
一層ではない。
何層も起動する。
供給が分担される。
「分業か」
「運用です」
一拍。
「術者ではなく」
「組織が使います」
沈黙。
「軍になるな」
「なります」
静かな返答。
「個人魔法は技」
「これはインフラです」
さらに一枚。
運用図。
発動班。
供給班。
観測班。
調整班。
「人員配置まであるのか」
「兵器なので」
当然のように言う。
「剣と同じです」
研究員が低く呟く。
「……魔法が国家になるな」
洋蔵が頷く。
「だから制限します」
「制限?」
「高位魔法は認証制にします」
沈黙。
「鍵か」
「封印とも言います」
円が更新される。
生成。
変換。
供給。
観測。
積層。
構造化。
条件化。
兵装化。
「もう研究じゃないな」
「違います」
短い返答。
「 doctrine (ドクトリン)…つまり魔導教範です」
ドクトリン=運用思想・基本教義




