レイヤー16 評価と循環
評価されないものは用途がわからない
納品から数日後。
報告書が再び集まり始めていた。
だが今回は、内容が違う。
「使用回数」
「成功率」
「消費量」
「負荷状況」
数値として整理されている。
後美洋蔵はそれを一枚ずつ確認していく。
「……揃っている」
小さく呟く。
研究員が背後に立つ。
「前より見やすいな」
「形式を統一しました」
淡々と答える。
「比較できる状態にしています」
紙を並べる。
同じ術式、異なる部隊。
同じ条件、異なる結果。
差が見える。
「ここです」
一点を指す。
「成功率は高いですが、負荷が大きい」
研究員が覗き込む。
「本当だな。持続運用には向かない」
「はい」
次の紙に移る。
「こちらは成功率が低いですが、負荷は軽い」
「訓練用か」
「適しています」
短く頷く。
さらに別の資料を開く。
「反応も取っています」
「反応?」
「使用者の主観です」
紙に書かれている。
・使いやすい
・分かりにくい
・怖い
・安心感がある
研究員は少し驚く。
「感情も見るのか」
「使われ方に影響します」
一拍。
「数字だけでは足りません」
静かな説明。
洋蔵は新しい紙を広げる。
「評価を四つに分けます」
・性能(効果・成功率)
・効率(消費・負荷)
・運用(使いやすさ・判断のしやすさ)
・感情(安心・不安・信頼)
「それぞれで点をつけます」
研究員は腕を組む。
「総合点は出すのか?」
「出しません」
即答。
「用途が違うため、単純比較はできません」
少し間を置く。
「代わりに“適正配置”を決めます」
紙に矢印を書く。
・前線向き
・後方支援向き
・訓練用
・限定運用
「評価から配置へ変換します」
研究員が小さく息を吐く。
「……ようやく回り始めたな」
「はい」
洋蔵は頷く。
「ここから循環します」
紙の端に円を描く。
「結果を回収する」
「分析する」
「再設計する」
「再配布する」
線は閉じる。
「終わりません」
静かな声。
「改善し続けます」
研究員はしばらくその円を見ていた。
やがて口を開く。
「これが……お前のやり方か」
「はい」
それだけだった。
魔法は一度きりではない。
発動して終わるものでもない。
結果が次を作る。
後美洋蔵、45歳。
異世界出向中。
仕事は終わらない。
回り続ける。
何に使うのか?が重要である




