レイヤー14 作用と反作用
前線から戻った術師の一人が、机に突っ伏していた。
外傷はない。
だが呼吸が浅い。
「魔力枯渇か」
医療班の声。
洋蔵は記録用紙を手に、その様子を見ている。
「使用術式は?」
「防壁展開を連続で三回」
「規定内だ」
「そのはずだが……この状態だ」
洋蔵は視線を落とす。
「……記録が足りない」
研究員が振り向く。
「何がだ」
「作用しか記録していません」
短く言う。
紙に書く。
・発動成功
・効果発現
・持続時間
「結果は残っています」
一拍。
「ですが、“反作用”が抜けています」
研究員は眉をひそめる。
「反作用?」
「代償です」
術師の方を見る。
「魔力消費、身体負荷、精神負荷」
「それが積み重なっています」
医療班の術師が頷く。
「確かに、同じ術式でも疲れ方が違う」
洋蔵は紙をめくる。
「現状は“成功すれば良い”設計です」
「ですが現場は連続使用します」
「蓄積が無視されています」
研究員は腕を組む。
「……だから倒れるのか」
「はい」
即答。
新しい紙を広げる。
「作用と反作用をセットで定義します」
ペンを走らせる。
・効果(作用)
・消費(魔力)
・負荷(身体・精神)
・冷却時間
「一つの術式に対して、必ず対にする」
研究員が覗き込む。
「冷却時間?」
「再使用までの間隔です」
「連続使用を制御します」
医療班の術師が口を挟む。
「そんな制限、守られるか?」
洋蔵は少しだけ間を置く。
「守らせます」
静かな声。
紙に記号を書く。
・使用可
・注意
・危険
・禁止
「状態に応じて表示します」
「視覚で制御する」
研究員が息を吐く。
「……また設計か」
「はい」
それだけだった。
さらに書き加える。
「過負荷時の警告も入れます」
・軽度疲労
・中度疲労
・限界直前
「段階的に知らせる」
医療班の術師が小さく笑う。
「親切だな」
「倒れるより良いです」
淡々と返す。
しばらく沈黙。
やがて研究員が頷く。
「……今までは、出力しか見ていなかった」
「はい」
「だから壊れる」
洋蔵は紙をまとめる。
魔法は使えば終わりではない。
使った後に、必ず残るものがある。
それを無視すれば、いずれ破綻する。
後美洋蔵、45歳。
異世界出向中。
結果だけでなく、
代償まで設計に含める。
ちゃんと対価を払わないといけない仕組み




