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45歳DTPデザイナーは36協定違反で異世界出向  作者: 洋蔵
異世界でもDTPなのか
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レイヤー12 回復と治癒

ウィルスを殺す魔法は難しいかと思います


翌朝。


洋蔵は医療班の詰所にいた。


前線とは違う匂い。


血と薬草、そして焦げた魔力の残滓。


簡易ベッドに横たわる兵士。


その周囲で、治癒術師が静かに動いている。


「見学か」


白衣の術師が声をかける。


「はい。現状の把握です」


短く答える。


術師は肩をすくめる。


「好きに見ろ。ただし邪魔はするな」


「承知しています」


洋蔵は一歩引いた位置で観察する。


傷口に手をかざす。


淡い光。


肉が閉じる。


別の術師は疲弊した兵士に触れる。

呼吸が整い、意識が戻る。


「……同じ“回復”ではない」


小さく呟く。


術師が振り向く。


「何が違う」


洋蔵は視線を動かさずに答える。


「対象が違います」


紙に書き出す。


・回復:体力・魔力の補充

・治癒:損傷の修復


「似ていますが、別物です」


術師は少し考える。


「言われてみれば、そうだな」


洋蔵は続ける。


「ですが、記述は混在しています」


一冊の古い魔導書を開く。


「同じ項目で扱われている」


術師は顔をしかめる。


「現場では区別しているが、確かに書き方は曖昧だ」


洋蔵は頷く。


「それが誤用の原因です」


次のページを指す。


「回復をかけるべき場面で、治癒を使っている」


「逆もあります」


術師は腕を組む。


「何が問題だ」


「効率です」


即答。


「軽度の疲労に治癒を使うと、魔力消費が過剰になります」


「重傷に回復を使うと、効果が不足します」


一拍。


「結果として、持続力が落ちます」


術師は深く息を吐く。


「……確かに無駄が多い」


洋蔵は新しい紙を広げる。


「分けます」


・回復系術式

・治癒系術式


「さらに段階化します」


回復系:

・軽度回復(持続重視)

中度回復バランス

・即時回復(緊急用)


治癒系:

・表層修復

・深部修復

・緊急固定


術師が覗き込む。


「細かいな」


「使い分けるためです」


淡々とした声。


「現場で迷わせない」


さらにペンを走らせる。


「併用ルールも定義します」


・先に治癒、後に回復

・重複使用の制限

・過剰回復の抑制


術師は眉を上げる。


「過剰回復?」


「回復しすぎると、負荷になります」


兵士の様子を見る。


「身体が追いつかない」


術師は小さく頷く。


「……経験的には知っていたが、明文化はしていない」


「だから共有されません」


短く言う。


しばらくの沈黙。


やがて術師が口を開く。


「お前、医者か?」


「違います」


即答。


「設計です」


それだけだった。


術師は苦笑する。


「厄介だな」


「その方が安定します」


洋蔵は紙をまとめる。


回復と治癒。

似て非なるもの。


曖昧だった境界に、線を引く。


後美洋蔵、45歳。

異世界出向中。


命に関わる部分ほど、

仕様は明確にする。


解毒はできても損傷した細胞や臓器を治すのは別の魔法だよね

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