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45歳DTPデザイナーは36協定違反で異世界出向  作者: 洋蔵
異世界に出向になったわ
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レイヤー9 納品


三日目の午後。


空気は張り詰めていた。


魔導師ギルドの中庭には、人が集まっている。


研究員、魔導師、そして王都防衛に関わる者たち。


机の上には、整えられた魔導書一式。


中身、装丁、基準書、説明書。すべてが揃っている。


後美洋蔵は一歩下がった位置に立っていた。


前に出るのは、依頼主の役目だ。


「これが今回の術式だ」


研究員が声を張る。


一冊が手渡される。


受け取った魔導師は、表紙を一目見て頷いた。


「防衛用か」


開く前に、用途を理解している。


ページを開く。


視線が迷わない。順番に流れていく。


「……読みやすいな」


小さな声。


指示通りに手をかざす。


次の瞬間、空気が歪む。


安定した防御障壁が展開される。


揺れがない。


乱れがない。


周囲がざわつく。


「同じ術式のはずだが……」


「出力が安定している」


別の魔導師も手に取る。


同じ結果。


誰が使っても、同じ現象が再現される。


沈黙の後、低い声が落ちる。


「……これが“納品”か」


研究員が小さく答える。


「そうだ」


洋蔵は何も言わない。


ただ、机の上を見ている。


すべて揃っているか。

抜けがないか。


最終確認は終わっている。


だが、それでも見る。


やがて、一人の上級魔導師が歩み寄る。


「これを作ったのは誰だ」


研究員が視線を向ける。


「彼だ。後美洋蔵」


視線が集まる。


洋蔵は一歩前に出る。


「後美です」


短く名乗る。


上級魔導師はしばらく見つめ、口を開く。


「これは魔法ではないな」


一瞬の静寂。


洋蔵は答える。


「設計です」


それ以上でも、それ以下でもない。


再び沈黙。


やがて上級魔導師はゆっくりと頷いた。


「……理解した」


それが評価だった。


研究員が小さく息を吐く。


「納期内、問題なし」


三日。

その期限は、守られた。


いや、前倒しで完了している。


洋蔵は軽く頭を下げる。


「以上で、納品完了です」


静かな声だった。


歓声も、拍手もない。

だが現場には、確かな変化が残っている。


誰でも同じように使える魔導書。

迷わず扱える設計。


後美洋蔵、45歳。

異世界出向中。


最初の業務は、完了した。


そして——


次の仕事は、すでに始まっている。

ステータスオープン…はしませんでした

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