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45歳DTPデザイナーは36協定違反で異世界出向  作者: 洋蔵
異世界に出向になったわ
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序章

締切は守っている。


クライアントの要望にも応えている。


修正も、再修正も、さらにその先も。


ただ一つ守られていなかったものがある。


——労働時間だった。


月の残業時間は、いつから数えるのをやめたのか分からない。


タイムカードは形だけ。


実態は、終わらない作業と終わらせるための自己調整だった。


「これ、今日中でお願いします」


「やっぱりこっちの案で」


「もう少しだけ整えられますか?」


“もう少し”が積み重なって、日付を越える。


それでも、ページは整う。整えてしまう。


45歳。DTPデザイナー。


誰かの情報を、誰かに伝わる形に整える仕事。


その日も、最後の書き出しを終えたのは深夜だった。


椅子から立ち上がった瞬間、視界が揺れる。


疲労は限界を越えていた。だが、不思議と焦りはなかった。


やることは終わっている。


納品もできている。


それで十分だと思った。


帰り道、信号待ちで立ち止まる。


赤信号の向こう側に、ぼんやりと街灯がにじんで見えた。


次の瞬間、強い光。


衝撃。


音は、なかった。


——


目を開けると、知らない天井だった。


木組みの梁。


油のランプ。


静かな空気。


身体は重く、頭は妙に冴えている。


ここがどこかは分からない。


だが、もう一つのことはすぐに理解した。


あの生活には、戻らない。


部屋の隅に置かれた一冊の本が目に入る。


古びた革表紙。


分厚い紙束。


手に取り、開く。


そこに描かれていたのは、円と線、そして未知の文字列。


一見して魔法陣のような図。


だが、違和感がある。


中心のズレ。


線の太さのばらつき。


文字間の不統一。


設計として、甘い。


「……整ってないな」


思わず口に出た瞬間、図形が淡く発光した。


空気がわずかに震える。


その反応は偶然ではないと、直感で理解する。


これは“魔法”ではなく、

“設計された現象”だ。


45歳、DTPデザイナー。

過労の果てに、異世界へ。


そして今、

文字と図形で世界が動く場所に立っている。


——今度は、整える対象が違うだけだ。





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