表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私は彼女のかわいいを独り占めにしたい

作者: 低東走

高校生になって初めての水族館。


水族館といえばデート。


私、井上みゆは今日人生初デートに来ている。


――好きな女の子と。




「ねえね、あの魚みゆに似てない?」


ぺたぺた歩いてるんだか泳いでるんだかわからない魚を指差してにこにこしてるのは私の好きな女の子、青木まい。


いつもニコニコしている私の好きな女の子。


「えぇ…カエルアンコウって…」


なんとも微妙すぎる魚に似てるといわれて反応に困る。


「え、かわいいじゃん。ほんと、みゆみたい…かわいい。」


水槽に顔がぶつかりそうになるぐらいじーっとカエルアンコウを見つめてる顔は、とても綺麗で可愛くてカエルアンコウに嫉妬してしまいそうになる。




まいは、かわいいという言葉をあまり口にしない。


女子高生なんてみんな何かしらかわいいーっていってそうなものなのに。


そんなまいの貴重なかわいいが魚に向けられ続けるのはおもしろくない。


私にとっては、まいが言う「かわいい」がすごく貴重に感じる。


だから、つい、もっと私に向けて欲しくなってしまう。




「ねぇ…カエルアンコウと私、どっちがかわいいと思う?」


素直に聞いてみた。まいがどう返してくるのか、少しだけ期待して。


「んー、どっちも!かな」


まいはめちゃくちゃいい笑顔で、またしても曖昧な返事をしてきた。


その笑顔があまりにも自然で、あまりにも無邪気すぎて、ちょっとだけがっかりしてしまう。


「どっちがって聞いたのに…」


がっかりついでに不貞腐れた言葉が漏れてしまう。


「えと、いやごめん、さっきの照れ隠し…みたいな?」


「へ?」


まいの言った言葉の意味が理解できずにはてなマークが頭に浮かびまくる。


照れ隠しってカエルアンコウに?


「だからさ…、みゆはかわいーよ。カエルアンコウより」


いつものにこにこ顔とは違う、照れて頬が少し赤くなったまいが視線をそらしながら言った。


「え…本当!?冗談じゃなく?」


「まじまじ、本当だよ…。はい、もういいでしょ?」


頬を赤くしたまままいが私をにらむ。


拗ねたように言うまいは新鮮だ。




その後は水族館をすべて回り終わっても、まいは「かわいい」を口にすることはなかった。


「水族館、久しぶりに来たけど楽しかったね!」


いつものにこにこ笑顔でまいが言う。


「うん、楽しかった。また来たいなー…」


二人で。と心の中で付け足す。


きっと今日をデートだと思っているのは私だけ。


女同士の友達と恋人の境界線は滲んでいて、よく見えないと思う。


でも、今日まいからもらった「かわいい」という言葉は、私を熱に浮かせる。


その言葉が、どこか遠くに消えてしまわないように、大事に心にしまっておこうと思った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ