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星間航路の小話

ある家族の出来事

作者: 水縹

その時16歳の学生だった。


父母姉姉自分の5人家族で、エホシに住んでいた。


その日の前日から記念式典の準備で家を開ける母と下の姉。学校は休みで、混雑するエホシを離れ上の姉の職場はオトホシに来ていた。


そこで、昨日まで居た惑星が破壊されるのを見ることになった。


母と下の姉、そして上の姉の結婚間近の恋人がいたエホシは、帝国の兵器で破壊されたと教えてくれたのは仕事で帝国に行っていた父だ。


再会を喜ぶより、泣き崩れる父を姉と見ているしかできなかった。


父はエホシで採掘された鉱石の大銀河帝国への販売販路を担当していた。


惑星解散の時にニューミヤグループには付いて行かず、個人の伝で移り住んだ場所で酒に溺れる父。


そんな父を支えながら働いた場所は、環境の悪い兵器開発の会社。


「すまない」ばかりの父の態度と、職場の仕事内容から半月で姉は気がついた。


あの衛星兵器の集積回路に使われるのがエホシの鉱石で、それを販売したのが父だと。


泣いて酒に逃げるだけの父。そして、職場で暴力でケガをした自分を手当てをしていると、とうとう姉はブチ切れた。


「許さない!」


怒りに燃えた姉は、涙に溺れる父を半殺しにすると、自分を連れて勢いのまま帝国のレジスタンスに参加した。


あの日から10年。


姉は今、エホシ事件の衛星兵器を持つ貴族軍人の私設艦隊の秘書官に潜入している。


潜入していると言うか働いている。スパイだと本人は言っている。


組織の下っ端はステラ惑星連合へ越境してのデブリ漁りだ。


表向きは廃品回収業者。他国の廃品回収ってステラ同盟はそれでいいのだろうか。


半年くらい前に仲間の組織が勘付かれ、大掛かりな討伐隊が動き、組織は壊滅したものの珍しく大銀河帝国の艦艇をひとつ轟沈したと盛り上がっているそうだ。


兵器や船の破片を持ち帰りると、今度は艦の補修の仕事だが・・・。


「おかえりケント!」


ムギュッと腕に抱きついてきたのは、17歳のリズ。


「ちょっとリズ!馴れ馴れしいのよっ!ケントは疲れているの」


同僚のセリナ19歳が叱りつける。


「まぁまぁ」


「・・・何をやっているんだ小娘共。ケント、こっちを早く手伝ってくれ」


整備のディア31歳。


「はい、今行きます。2人ともごめんね。また後で」


姉の所属のレジスタンス・マゼンダは帝国軍人遺族婦人会の皮を被った組織で婦女が多い。


容姿は平凡で人畜無害系。才能もあるわけではないわけで・・・職場環境は大事だと思う。


この職場は女性が多く、好きアピールも結構してもらえるから自己肯定感があがる。


(ハーレム最高)


もちろん顔には出しません。出したらバカだ。


久しぶりの休暇で帰ってきた姉は不機嫌だった。


「姉さんどうしたの?」


「・・・父さんが死んだかもしれない」


「酒で身を持ち崩す的な?」


茶化し気味に言うと、姉は首を振った。


「あの兵器会社、何故か最近業績上げててね・・・エホシで違法採掘していたみたい」


「まさか・・・」


「元々、採掘から営業になった人だったからできたのかもね」


「何やってんだよ・・・捕まったんじゃなくて、死んだかもって」


ダン!と、机を叩く。


「3日前の深夜、エホシが爆散したの、違法採掘の事故らしいの」


「事故で惑星が爆散てそんなこと」


信じられなかった。


「どのくらい前から採掘していたかは分からないけど、惑星がおかしな速度で欠けてるって情報はあったから、軍部にパトロールはしてもらってたんだけど」


姉は髪を耳にかけて、ため息をついた。


「今日、兵器会社のガサ入れあって同行したの。父さんまだ在籍して部屋はあるのに居なかった。そしてコレ」


手紙だ。


【2人に会いたい】


トントン。


指で差し姉は問う。


「どっちを差してるかで意味変わるやつ。ケントはどう思う?」


生きている2人に会いたい。

亡くなった2人に会いたい。


「なんなのよもうっ!」


「姉ちゃん」


黙って背中を撫でた。


それでも姉は、仕事を続けるだろう。


しばらくすると、双子でなくなった双子惑星の星域で、亡霊が出るらしいと噂されるようになった。


通信にノイズが入り、呻くような異音が艦内に響き

いつの間にか航路がずれる、と。


しばらく後、デブリの増えたその空域は大銀河帝国の辺境だったこともあり、いつの間にか空域図から無くなった。




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