灰の怪物
「フゥ……フゥ……」
自分の体が作り替えられていく感覚。
激痛には慣れていても、意識を保っているのはギリギリだった。
「凄いわッ。凄いわよ、アズレいっ!?」
興奮した様子で触れてきたお母さんを、新しく生えた太い尻尾が反射で振り払う。
お母さんの体はボールのように飛んでいって、壁に頭からぶつかった。
そのとき、ぐちゃりと何かが潰れた音がたけれど、私にそれを気にする余裕はない。
−−−−「複製品」
聞こえてくるのは、真っ先に潰した筈の父の声。
−−−−「お前は器。道具だ」
頭の中で、幻覚の父が語りかけてくる。
−−−−「お前の記憶も、感情も、何もかもリサイクル品なんだよ。アズレイユの二号機だ、お前は」
「違う……!」
−−−−「何が違う? 粗悪なコピー品が。無様に争ってないで、さっさと自我など捨ててしまえ」
顔を上げた先、赤黒い岩に反射して映る、醜い姿に変わっていく自分の姿。
それを見て、心の中で「違う」と叫ぶものがあった。
たとえ幻聴であっても、父の言葉は正しいのだろう。
だけど。
だけど、一つだけ、譲れないものがあった。
「私、は……ッ」
狭い部屋の中、恐怖に耐え続けたのは。
外の世界を夢見たのは。
「私だ……! 誰かの、モノマネじゃない。二人目なんかじゃ、ない……ッ。そんなの、嫌だ……!」
それは、ワガママ。
父にとって、母にとって、あるいは、他のすべての人にとって、取るに足らないこと。
だけど、私は譲れなかった。
譲りたくなかった。
私の命は、物語/人生は、誰かの複製品/続きではなく、私だけが作れたものだと。
だって、当然でしょ?
大切なものは、私だけのものであって欲しいなんて。
−−−−「ああ、そうか」
−−−−「じゃあ」
『それを作れたら満足か?』
父の声が、別の声へと変わる。
その声を聞いた瞬間、私の耐えていた意識は途切れた。
ああ、見える。
そこに、居る。
私の、私だけの……ッ!
「うぇ、んでぃイイイイイッ!!!」
伸ばした手が彼女に届く。
ああ、やっと、やっと彼女に−−−−




