次の目標
「お疲れ~」
無事異物である電池を回収し、元の世界へと転送されたウェンディ。
そんな彼女は悪びれもせずに現れた先輩に向けて、渾身の右ストレートを繰り出した。
「ゴハッ!?」
――ふっ。スッキリした。
「な、なぜ……」
「君が危ないことしたからだろう」
「げっ」
「あっ」
床へ倒れたヨモギの後ろから現れたのは、二人の所属する境界科の担任、アザリエ。
ヨモギの首根っこを掴むと、猫のように持ち上げて壁の方へと連れて行く。
二人が近付いた壁は一人でに口を開けると、中のらせん階段が姿を現した。
「ほら、自分の持ち場に戻りな」
「はーい」
下ろされたヨモギは、しょんぼりとしながら中へ入ると、ウェンディの方を振り返り微笑む。
「またね、ウェンディ。上で待ってるよ」
「なんてことがあったんだ」
後日、ウェンディは自身の部屋に集まったラマとノアの二人にことの詳細を話していた。
菓子を片手に話を聞いていた友人たちは、当日彼女が居なかった理由を知り「なるほど」と頷く。
「危ない先輩もいるんだねー。良かったー、出会わなくて」
「お目当てはウェンディみたいだし、君の不運に感謝だね」
「やめて感謝しないで。次は他の人かも知れないじゃん!」
「「ウェンディがいいなー」」
「コイツらっ」
――……それにしても、「これくらい」か。
――たぶん、進度Eっていうのは一番下なんだろうな……。力の不足……強化……。
――……やっぱり作るしかないよね、”使い魔”。
「あ、そうだ……はい、ウェンディ。お土産」
「なにこれ」
ラマから手渡されたのは、赤く輝く綺麗な石。
「きれいな街の中で安全な異物探索のついでに入手した宝石だよ」
「宝石泥棒捕まえた手柄としてね。凄かったよ、店の中に綺麗な宝石が並べられた光景」
「ありがとう。ところで、なんでニヤニヤしてるのかな? もしかして、コレ、当てつけ?」
「「うん。そう」」
「ほんっとコイツら!」