表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の鏡  作者: リーグス
78/80

部屋の外

「悪魔?」

 

 その言葉には聞き覚えがあった。

 父の研究、そのための実験の一つで、私の一つ前に行われたものだと。

 

「なんで……」

 

 私の言葉に呼応するように、ページの真ん中に書かれた文字が薄れて消え、新しい文字が浮かび上がる。

 

『部屋から出たいんだろう?』

「!」

『なら、私が外の世界に行く手伝いをしてあげよう』

「手伝い……?」

 

 何故、悪魔が私の元に来たのか。

 何故、悪魔が私の手伝いをしようとしてくれるのか。

 何一つ分からず困惑する私の前に、真っ白なページに浮かび上がった金色の鍵が、本から浮かび出て現れた。

 

『この鍵で、扉を開けられる』

「……本当に?」

『ああ、本当さ。行きたいんだろう? 外の世界に』

 

 その言葉に、私は逆らえない。

 ずっと欲しかったものだから。

 絵本の少女に、ずっと憧れていたから。

 

「ここに、鍵を……」

 

 誘惑に従って、鍵穴に鍵を通す。

 ガチャリと音が鳴って、ドアノブを回すと扉はゆっくりと開いた。

 その先にあったのは、狭い通路と、長い階段。

 慣れない足取りで、一歩一歩、滑り落ちないように登っていく。

 その果てにも扉があって、今度は鍵がかかっていないそれを開けると−−−−

 

「「え?」」

 

 声が、二つ重なる。

 扉を開けた先に広がっていた広い廊下。

 そこを通りがかった女性は、おそらく、お母さん。

 

「アズ……レイユ?」

「あ……ち、違っ……違くてっ……」

 

 脳裏に、今までの恐怖が蘇る。

 部屋に連れ戻されてしまう。罰を与えられてしまう。

 そんな未来に恐怖して、必死に弁明しようと口を動かすも、言葉は詰まって出てきてくれない。

 

「ああ、なんてこと……!」

 

 お母さんが走り寄る。

 私は逃げることも、防ぐことも出来ない。

 出来たのは、怖さにただ目をつむることだけ。

 何も見えない中、体を腕で拘束される感触があった。

 

「やっと……出てきてくれたのね!」

「…………えっ?」

 

 それは、『抱きしめる』という行為。

 知識の中でしか知らなかったもの。

 お母さんの瞳から滲み出た涙が、私の頬に垂れた。

 

「この瞬間を、どれほど待ったか! 偉いわ、偉いわよ、アズレイユ!」

「……お母、さん。……お母さんッ!」

 

 もしかしたら、私にはお母さんが居ないと。

 居たとしても、私に愛情なんて持っていないと、心のどこかで諦めてた。

 だが、違った。

 その温もりは本物であり、その涙は本音であり、私の内に湧き出た感情もまた、偽りのないものだった。




「ねぇ、アズレイユ」

「?」

「お母さんと一緒に来てくれる?」


 お母さんは、私の手を引いて歩き出す。

 最後のーーの部屋へと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ