表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の鏡  作者: リーグス
74/80

赤と白

 炎。

 ウェンディが放り出されたのは、燃え盛る建物の中だった。


「え、は!? なんてとこに出してくれてんの、先生!?」


 木造の家は焦げて崩れ、原型を留めていない。

 屋根には何かが落ちて来たかのような大きな穴が空き、その真下のウェンディが立つ場所にはクレーターが出来ている。

 クレーター内には炎が無いお陰で焼け死なずに済んでいるが、それも時間の問題だった。


「ん!?」


 背後から聞こえてくる、ギシギシと何かが動く音。

 振り返ったウェンディの視界に映ったのは、自身の元へと倒れてくる真っ黒の柱だ。

 ――あっぶな!

 ギリギリでの回避に成功するも、危機はそれだけで終わらない。

 音は未だ続き、残る他の柱もまた、今にも倒れてきそうな状態である。

 ――ヤバいッ! 逃げなきゃッ!

 唯一プラスである要素は、穴の空いた天井から雪が舞い込んでいること。

 少なくない量の雪によって炎の勢いが多少抑えられており、魔力での身体強化と合わせれば脱出することは可能だ。

 もっとも、建物が完全に崩れるのに間に合えば、だが。


「――――んっ?」


 走り出そうとしたウェンディは、()()()()を見て足を止めた。

 それは、一つの鏡。

 フレームに花の紋様が刻まれ、全てが圧し潰されたクレーターの中で唯一、その形を保っている。

 だが、それだけだ。

 一秒の遅れが生死に直結するその状況で気にするものではなく、ましてや拾おうとするなんてもっての外。

 そんなことはウェンディも分かっている。

 分っている、が――――


「……ああ、もうっ!」


 自分の中で叫ぶ「置いてくべきではない」という直感に、迷った末に拾う道を選ぶ。

 鏡を脇に抱え、今度こそ炎の先の出口を目指して走り出した。


「熱ッ!痛ッ! 危なッ!」


 圧死も焼死も回避し、たどり着くは雪景色。

 最後の障害である瓦礫の山を飛び越え、ウェンディは雪で覆われた未知の上へと着地した。


「っと。……ん?」


 そして、気付く。

 脱出した先、雪が降り続ける路上に、燃える家を囲んで大勢の人間が居ることを。

 彼ら全員が自身を見ており、その目に敵意を宿していることを。


「……誰か、出て来たぞ」

「女の子だ」

「じゃあ————」



「魔女か?」



 誰かがその言葉を呟いた瞬間、彼らの敵意が一層強まる。

 殺意と呼べる域にまで。

 ――何か、ヤバいッ!

 身の危険を感じ取り、ウェンディは人の壁が途切れている方向へと走り出す。

 何人かは行く道を塞ごうと動く反応を見せるも、速度に大きな差があるため追いつかれることはない。

 

「逃げたぞ! 魔女が逃げた!」

「追え! 捕まえろ!」


 背後から聞こえてくる声は徐々に数を増し、強い熱を帯びていく。

 絶対に掴まってはいけないという確信と共に湧く恐怖。

 雪に足を取られないよう細心の注意を払いながら、ウェンディは人が大勢入ることは出来ない路地裏へと逃げ込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ