まどろみの中へ
砂浜を抜け、アスファルトを踏みしめ、木々の生い茂る山道を登る。
セミの臨床を全身に浴びながら、ウェンディたちは目的の墓地へとたどり着いた。
「……掃除が行き届いてるね。お墓も道も綺麗だ」
「うん。もっと落ち葉とか虫とかがいっぱいの場所なのかと思ってた」
並ぶ墓石に放置された汚れはなく、十分な手入れをされていることが墓地全体に表れている。
そのきれいな細道を、三人は奥へと向かって歩いていく。
――それにしても……ここも、何か嫌な感じがする。
――暑い筈なのに、手足の先が冷えていくような……。
「……そろそろだね」
「?」
ヨモギの言葉に首をかしげたウェンディは、瞳に映る景色が地面へと落ちていく感覚を味わう。
どこか客観的な気持ちで自身が倒れたことを理解し、同時に足しか見えないヨモギが何かを話していることに気付く。
「”鍵”を探しな。”彼女”が言うには、それで奥に進めるから――――」
その意味を考える間も無く、ウェンディの意識は暗闇へと沈んだ。
「やっぱり、私は弾かれるか」
独りになった墓地で、ヨモギは誰かに語り掛けるように言葉を吐き出す。
セミの鳴き声が消え、風が止んだ寂しい世界の中、笑いながら墓地の奥へと向けて一歩を踏み出した。
「約束通り、頼りになる後輩を連れて来たよ。セイン」