表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の魔女  作者: リーグス
35/72

眠り落ちる鏡

「……君は、どうしてももう一度、彼女に会いたい?」


「なら、スノーホワイトになる魔女の学校。そこの境界科に入るといい。手続きはこっちでやっておく」


「そこで、五つ目の異界を迎えたのなら、君は————」






「贈り物?」


 宴会を終えて帰ってきたウェンディは、椅子に座っていたラマから小さな物を手渡しされた。

 掌に置かれたのは、白と緑が使われた綺麗な髪飾り。

 

「髪飾り? ……あ」

「心当たりあるの?」

「うん。これは師匠からのだ」


 ウェンディは天井を見上げながら、過去を懐かしむように語り出す。


「私はここに来る前、一年間森に居たんだけど、そこで私に魔術の基礎を教えてくれたのが師匠なんだー。半年くらいで居なくなっちゃったけど」

「へー。でも、なんで師匠のだって分かるの? 私、気付いたら持ってたんだけど」

「前に一度、師匠の前飾り綺麗だねって私が言ったからね。でも、確かになんでラマを経由したんだろ。直接くれたら良かったのに」


 ため息を吐く姿に、ラマはくすりと笑って座っている椅子に体重をかける。

 そして、同じように天井を見上げて大きな伸びをした。


「まぁ、犯人がウェンディの師匠って分かっただけでも良かったよ。幽霊の仕業かと思って怖かったんだから

「あはは」


 肩をすくめてみせるラマに笑顔を返しながら、ウェンディは口には出さず、過去の続きを思い出した。

 ——五回……あと三回異界に入れば、"あの子"に会える。

 ——楽しみだなぁ。


「そういえば、その先輩はどうしたの? 一緒に帰って来たんでしょ?」

「転移先の玄関で青筋浮かばせたアザリエ先生に連れてかれた」







 星間塔。

 異界が生まれては消えていく、無数の鏡を内包した塔。

 境界科の者しか入るのを許されない場所に、境界科のものとは違う制服を着た少女のすがたがあった。

 少女は一つの鏡の前に立つと、波打つガラスへ手を伸ばす。


「あと三つ、か……」


 鏡に刻まれた異界のクラスを示す文字が、AからCへと書き換わる。


「五つの異界を超えたとき、誰の願いが叶うんだろうね?」


 そう呟いた少女の姿は既に消え、残された鏡は静かに輝きを減らす。

 映し出すは流れ落ちる一条の光。

 三つ目の異界が、暗闇の中で口を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ