入れ替わりで降りて来た二人
「うう……気持ちわるい……」
起きてからずっと吐きそうな感じが胸にあり続けてる。
食べ物が当たった感覚とはまた違う、すごく気持ち悪い感覚。
「お姉ちゃーん……治してー……」
「無理」
なんて酷い姉だ。
妹がこんなに苦しんでるのに、いつものように看病してくれないなんて。
ていうか、なんでお姉ちゃんは平気そうなの? お姉ちゃんも異界行ってたよね?
「……はぁ。何か適当に作ってあげるから、とりあえずソファーに横になってな」
「はーい」
やっぱり優しいお姉ちゃん。
本読んで興味無さそうなフリしてても、やっぱり妹が心配なんです。
……あー。本当に気持ち割る。吐きそうなのにに吐けないし。
「部屋に居るふたりも……寝込んでるのかなぁ」
だったら、水でも持って行ってあげたいけど。
元気だったら、その時は私のお話し相手になってもら…………ん? チャイム?
「誰だろ……」
ふらつく足で、誰かが来た玄関へ向かう。
ウェンディたちじゃないよね。昼間は鍵かかってないし。
どっちかの保護者が来たとか?
「どちらさまです……か」
扉を開けた姿勢で、私の体は硬直した。
「初めまして、ラマ。ウェンディと友達になってくれて、ありがとう」
その声を聞いた瞬間、全身が冷水に浸されたような悪寒が走る、。
さっきまで何人も居た筈なのに、気が付いたら自分以外に誰も居ないような。
やかましい物音が、突然いっせいに止んだような。
そんな、足元から這い上がって来る不安を、この女の人を見てると嫌でも感じ取れてしまう。
変だな。この子には、何もおかしいところなんかないのに。
普通に立って、普通にしゃべって、普通に微笑んでる。
なのに、なんで、私はこの子の目を見れない?
「プレゼントを持って来たんだけど、入れ違いだったか。……代わりに渡しておいてもらえる?」
……逃げなきゃ。……そうだ、早く逃げなきゃ。
あれ? でも足って、どうやって動かすんだっけ?
瞳って、どうやって、うごか――――
「……ラマ? …………ラマ!」
「…………あれ、お姉ちゃん?」
目が覚めると、お姉ちゃんが私を見下ろしてた。
背中が痛い。
私、いつの間に床で寝てたんだろう……?
「どんな寝相してたら玄関まで寝転がるのさ」
「んぇ……? 玄関……?」
本当だ、私、いつの間にか玄関にいる。
なんでだ?
「あれ、なんか、気持ちわるいの治ってる」
「寝て治したの?」
「そうなのかなぁ?」
頭をぽりぽりと掻くと、その手に何か握ってウことに気付く。
「ん? 何それ?」
「さあ……分かんない」
手に握ってたのは、不思議な作りをした髪飾りだった。
いつ、私は拾ったんだろう。
私はなぜか、それをウェンディに渡さなきゃいけない気がした。