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神様をさがして  作者: 高山 由宇
第8章 魔女の正体
32/52

―1―


「ねえ、アニキには見えなかったの?」

 朗が尋ねた。

「エラや白雪姫にも見えたし、たぶん雪の女王にもあったと思う」

「だから、何がだよ?」

「光だよ! 白い光。頭の上の方から、降ってくるように見えるの。さっきの白鳥にもあった」

「だから、それは夕日だろ? 雪の女王の時は一面氷に覆われていたし、エラや白雪姫の時は外にいたから、きっと光の反射が見えただけだろ」

「違うよ! そんなんじゃない」

「あんまり騒ぐなよ。喉が渇くぞ」

 読真が、額に浮かんだ汗を手の甲でぬぐった。

 二人は、今、深い森の中を歩いている。

「『白雪姫』を思い出すな……」

「道が平らで、あの時よりは歩きやすいけどね」

「気温も、そんなに高くなくて助かったよ」

「うん。でも、お腹空いたね」

「喉も渇いた」

「ねえ。本当にこの道で合っているの?」

「さあ? でも、立ち止まっていたって助かるとは思えないし。今までのことを考えれば、少しでも進んだ方がいいと思うんだ」

「ふうん。……はあ、お腹空いた」

 そう話しながら森の中を歩いていると、びゅうと風が吹いた。

「……あれ?」

 朗が立ち止まる。

「ねえ、甘い匂いがしない?」

「お前、そんなにお腹が空いているのか?」

 呆れながら読真も立ち止まる。しかし、そんな読真の鼻孔を、甘い香りがくすぐった。

「……花の香り?」

 今いる場所を考えてそうつぶやくが、けれども、何か違うような気がする。

「ケーキじゃない?」

 朗の言葉に、

「そんなわけが……」

 ない、と答えようとした読真だったが、またも匂ってきた甘い香りにその言葉を飲み込んだ。

「あ、チョコの匂いだ」

「……うん」

 ついに読真もうなずく。チョコレートの匂いが、読真にもしっかりと感じられたからだ。

「あっちだよ!」

 朗が走り出した。

「あっちから甘い匂いがする!」

「おい! 待てよ、朗!」

 山の中を散々歩いてきて、どこにそんな体力が残っていたのか……。猛スピードで走り去る朗の背中を、読真は全速力で追いかけた。


「……何しているんだ?」

 ようやく追い着いた時、朗はひたすら何かを頬張っていた。

「アニキ、これ、すっごく美味しいよ!」

 そう言って差し出されたのは、ミルクチョコレートがたっぷりとかけられたビスケットだった。

「お前……それ、どうしたんだよ?」

「これだよ。匂いの正体はこの家だったんだ。これ、みんなお菓子でできてる!」

 その言葉に見上げれば、目の前には一軒の家が建っていた。

 屋根は黒く、チョコレートの板を張り合わせてできているようだ。壁はカラフルに彩られ、壁と壁の繋ぎには生クリームやカスタードクリームが使われている。窓もあり、窓枠には色とりどりのキャンディが散りばめられていた。

「うわ、甘い! ここ、砂糖の味がする!」

 朗が壁をぺろぺろと舐めている。壁は鮮やかな色彩で、三階部分がピンク色、二階部分が白色、一階部分が黄色だった。朗が舐めていた黄色の壁は溶け、その奥にベージュ色の壁が見える。

「これもビスケットかな」

 そう言いながら、さらに壁を掘り進めようとする朗を、読真は制した。

「よせ、それ以上やったら家が潰れるぞ」

「え、でも、誰も住んでないでしょ?」

「住んでいるよ」

「嘘だあ。だって、こんなお菓子の家に人なんか住めないよ。暑い日にはチョコレートは溶けるだろうしさ、ビスケットの壁じゃ雨は防げないよ。水漏れしちゃうもん」

「お菓子の家が出てくる童話、知らないのか?」

「……あ……えっと、『ヘンゼルとグレーテル』?」

「そうだよ。ここは、魔女の家だ。気づかれる前に逃げるぞ」

「逃げるって、どこに?」

 そんなことを話していると、ビスケットでできた扉が、ぎぎぎと音を立てて開いた。


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