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神様をさがして  作者: 高山 由宇
第7章 個性を受け入れること
29/52

―2―


「ねえ、君たち。ここを雛が通らなかった?」

 朗は、途中で会ったハトの群れに問いかける。ハトたちは顔を見合わせると、

「ああ。あの醜い子だね」

と、みな声をそろえて言ったのだ。

「そんなに醜いかな?」

「醜いとも!」

 朗の声にかぶせるようにハトたちが言う。

「あんな灰色の、汚らしい毛並みは見たことがないよ」

「君たちだって灰色じゃん」

「それに、汚いのは泥をかぶったからだよ。洗えば問題ない」

 思わず雛を擁護する兄弟に、ハトたちが食ってかかった。

「なんだと! 我々とあんな醜い子を一緒にするのか?」

 羽をばたつかせて威嚇してくるハトたちに、朗も負けじと応戦する。

「あの子が汚いなら、君たちだって汚いよ!」

「朗、もういいよ。行こう」

 ハトたちのぎらぎらとした目を見て、危険を察知した読真が朗の腕をつかむと、足早にその場を離れた。

「ちょっと、なんで逃げるんだよ!」

「数を見てみろよ。あんなのに襲われたらたいへんだぞ」

「だけど、逃げることないだろ! 僕、悪いこと言ってない!」

「そうだな! でも、言わなくていいことだってあるんだよ。わざわざ挑発することないだろ」

 走ったことがよかったのか、幸いなことに、ハトたちが二人を追ってくることはなかった。

 その後、カラスの群れに会った。読真と朗は、同じように雛のことを尋ねる。すると、ここでも、

「ああ、あの醜い子のことだな」

 カアカアと、カラスたちはばかにしたように笑うのだった。

 また喧嘩しそうになった朗を抑えていると、

「あの醜い子は、泣きながら向こうへ走って行ったぞ」

と、一羽のカラスが教えてくれた。読真と朗は、そのカラスがくちばしを向けた方へと行ってみることにした。

 しばらく歩いていると、二人ぐらいは並んで通れそうなほどの大きな光の輪が、道の真ん中に浮かんでいるのを見つけた。

 金色の輪の中心はさらに光量があり、まぶし過ぎて全部を見ることはできない。輪の中心は、まるで太陽のようにまぶしく、日向ぼっこをしている時のように温かかった。そして、それは、今まで通ってきた扉と同じ輝きであることに気がついた。

「え……なんで?」

 読真が、唖然としてその輪っかを見つめている。

「これで、この『物語』は終わり?」

 朗も、腑に落ちない様子だ。

「そんな……だって、まだ何も解決していない」

「僕、この話がなんの話かもわかってないんだけど。アニキはわかった?」

「あ、うん。『物語』が何かはなんとなくわかったよ」

「え、わかったの? なら教えてよ」

「嫌だよ」

「え! なんで?」

「少しは自分で考えろって言っただろ。お前も知っている話のはずだし」

「僕も知っている話?」

「うん。それよりも、まずはこの輪っかだよな。通るか、やめるか」

「何言ってるの? 迷うんなら通ればいいじゃん」

 そう言うが早いか、なんの躊躇いもなく、朗は光の輪の中に飛び込んでしまった。

「朗!」

 驚いた読真が呼んでみるが、返事はない。光の輪は、朗を飲み込んだあとも変わらずに輝き続けている。

「……朗?」

 もう一度呼んでみたが、同じだった。

 ――もしかして、本当に次の世界に行ったのか?

 そう思った読真は、おそるおそる光に触ってみる。指先が触れただけなのに、全身がぽかぽかと温かくなるようだった。

「……よし!」

 意を決した読真は、朗と同じように光の輪をくぐった。

「もう! 遅いよ」

 光の輪を出た瞬間、朗に怒られた。

「ここは……次の世界?」

 読真の目の前には、紅葉に彩られた木々が見える。空は青く澄んでいて、羊雲が心地よさそうに泳いでいた。

「違うんじゃない?」

 朗が言う。読真も、どこか違うような気がしていた。

「ここ、さっきと同じ場所じゃない?」

 朗の言葉に周りをよく見れば、間違いなくさっき通ってきた道だ。ただ、違和感がある。同じ道だけど同じじゃない。

 そう、景色が明らかに違っていた。

「突然秋になったみたいだ」

 読真がつぶやくと、それに応えるかのように冷たい風が通り抜けて行った。

 振り向けば光の輪が消えている。

「先に進めってことかな」

 そう解釈した二人は、枯れ葉舞う秋の道を歩いて行った。


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