表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様をさがして  作者: 高山 由宇
第5章 真実の美
23/52

―3―


「……いったあ……」

 朗は、地面に這いつくばったまま、しばらく動くことができなかった。右膝が、じんじんと熱を持っている。急いで逃げる途中、木の根に足を引っかけて転んでしまったのだ。

「……うう」

 起き上がれずにいると、

「どうした?」

 男の人の声が降ってきた。馬の嘶きと、ぱかぱかという足音も聞こえる。

「転んだのか?」

 馬から降りると、彼は朗に手を貸してくれた。一人かと思ったらもう一人いたようで、

「この子に手当てを」

 彼にそう言われた従者らしき男性が、てきぱきと朗の膝の手当てをしていく。

「お前のような子供がこんな山の中にいるとは……。一人か?」

「うん。今はね」

 朗は、涙目になっていた目元を拭って答えた。

「今は?」

「アニキと一緒だったんだ。でも、アニキは……」

「どうした?」

「山小屋があったから休ませてもらおうと思ったんだ。アニキが扉をノックしてさ、扉が開いたと思ったら毛むくじゃらの腕が出てきて、アニキを連れてっちゃったんだ!」

「それは、もしかすると山賊かもしれないな。それで? お前の兄はどうなった?」

「わからないよ。僕、怖くて……逃げてきちゃったんだもん」

「兄を見捨てて逃げてきたのか?」

「だって……」

「手当てが終わりましたよ」

 従者がそう言って、手当てが終わったばかりの右膝をぱしっと軽く叩く。

「……っ、痛い!」

 思わず叫んだ。

「置いて行かれたお前の兄は、もっと痛みを感じたのかもしれないぞ」

 その言葉に、朗はぎゅっと唇を噛みしめる。

「お前、名は?」

「……朗」

「ロー。私は、リヒャルトだ」

「り……りひゃ……っ」

 舌を噛んでしまった。

「ははは。私の名前は言いにくいかな。なら、キッドではどうだ? そう呼んでくれていいぞ」

「……キッド? なんで?」

「父がな、私のことをそう呼ぶのだよ。私はもう十八だというのに、いまだに子供扱いさ。さてと、ロー。もう立てるかな?」

「……うん」

 朗は、リヒャルトの手を借りながらなんとか立ち上がる。

「では行くか」

 そう言うと、リヒャルトは従者に指示を出す。従者は、朗を抱き上げると自分の馬に乗せた。

「え、なに?」

「よし、ロー。案内するんだ」

「案内? どこに?」

「お前が兄と別れた場所だ」

「え……っ」

「お前の兄が山賊に捕まっているようなら、助けてやらねばならないだろう。ついでに山賊どもも退治してやる」

「退治って、たった二人で?」

「その辺の山賊どもが相手なら、私たち二人で充分さ。しかし、まずは、お前の兄の安否を知らなければな」

 そこで、朗を連れたリヒャルトと従者は、読真と別れたところにある山小屋を目指して駆けて行った。


 山小屋に着いた時、地面に掘られた大きくて深い穴の中に、今まさに、棺が埋められようとしていた。

 周りには、毛深くて鼻の高い風貌の小人が七人いて、みな泣き腫らし、悲しみに暮れている。

「なんだ、あの小人たちは。まさか、あれが山賊か?」

 リヒャルトの疑問に、

「この山にはホビット族が住むという言い伝えがありますね」

と、従者がすぐさま答えた。

「ホビット族……。書物で読んだことはあるが、見るのは初めてだな」

「私もです」

「しかし、あの様子は……誰かが亡くなったのだろうか」

 リヒャルトと従者は馬から降りる。そして、従者に手綱を預けると、リヒャルトは棺の方へと歩いて行った。

「……まさか……そんな!」

 棺の中で眠る姿を見て悲痛の声を上げる。

「彼女が、なぜ……」

 リヒャルトは、棺の前に片膝を着いて項垂れた。

「あんたは……もしかして、ミスター・チャーミングか?」

 そんな彼に、小人の一人が尋ねる。

「そういえば、姫が森で人に会ったと言っていたな」

「ああ。イケメンに会ったと言っていた」

「あんな素敵な人は見たことがないって言っていたな」

「もしかして、あんたがそうなのか?」

 小人たちが口々に言い合い、リヒャルトに詰め寄った。

「素敵な人、か……。私も、彼女ほど素晴らしい女性を見たことがなかった。また会いたいと思っていたというのに……」

 リヒャルトは、悲しみを堪えきれない様子で、棺の中で眠る白雪姫を抱き起すと、ぎゅっと胸に抱きしめる。すると、

「う……っ」

 声が漏れた。リヒャルトは驚き、白雪姫の顔をのぞき込む。彼女の口から、ぽろりと林檎の欠片が転がり出た。それとともに、青ざめていた頬には血が通いはじめ、すうすうと静かに呼吸を繰り返している。

 生き返ったのだ。

 その後、リヒャルトは、目覚めた白雪姫にその場で求婚し、彼女はそれを喜んで受け入れた。あとは家の問題があるだけだと思っていた二人だったが、それもすぐさま解決する。なぜなら、白雪姫はもともとこの国の王女であり、リヒャルトは白雪姫の国と国交を深めるため隣国よりやってきた王子だったからだ。

 白雪姫が山にいる理由を小人たちから聞かされたリヒャルトと従者は、白雪姫と七人の小人たち、それから読真と朗を引き連れてリヒャルトの国を目指した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ