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神様をさがして  作者: 高山 由宇
第5章 真実の美
22/52

―2―


「なんだ? 不思議な格好をした人間だな」

 小屋に引きずり込まれて床に倒された読真を、鼻の高い男たちがずらっと並んで見下ろしている。

「まだ子供じゃないか」

 伸び放題の髭をさすりながら一人が言う。

「いや、子供を使って油断させる手かもしれん」

 一人が、険しい目つきで読真に顔を近づけた。

「目的はなんだ?」

「誰に頼まれた?」

「お后の命令か?」

 三人の男が腰から剣を引き抜くと、それぞれ読真に突きつける。完全に委縮してしまった読真は、ただ首を振ることしかできなかった。

「なら、なぜお前はここにきたんだ!」

 中でも最も厳つい男が、野太い声を上げて読真に迫る。真っ白になってしまった思考の隅で、なんと答えたらこの場を切り抜けられるかを考えていると、

「みんな、やめて」

 男たちの後ろから、この場に似つかわしくない高い声が上がった。男たちが振り向く。読真もそちらを見た。

「この子、怖がっているわ」

 そう言って男たちをたしなめたのは、雪のように白い肌に赤い頬、血のように赤い唇、烏の濡れ羽を思わせる艶やかな黒髪を持った少女だった。

「……白雪姫……」

 思わず発したその言葉を、男たちは決して聞き逃さなかった。

「なぜ姫の名を知っている?」

「やはりお前は城からの……お后の手の者だな?」

「白雪姫を亡き者にしようとしているのだろう」

「性懲りもなく、またきたのか!」

「白雪姫は渡さんぞ!」

「何度きても同じことだ!」

「そうとも! 今度こそ返り討ちにしてやる」

 七人の男たちが、そろって読真に剣先を向けた。危機を感じた読真は、壁伝いになんとか立ち上がる。

「え……?」

 つい、口をついて疑問の声が漏れた。床にへばりついて見上げていた時には大人の男にしか見えなかった男たちが、立ち上げってみるとその身長は読真の腰ぐらいまでしかない。

「……あ、そっか。ここが『白雪姫』の世界なら、白雪姫と一緒に暮らしているのは小人だよな。ちょうど七人いるし……うん、間違いない」

 ぶつぶつとつぶやきながら頭の中を整理していると、小人たちがずいっと距離を詰める。読真は、いよいよ壁に背中をぶつけるほど追い詰められてしまった。

「お前、一人か?」

 小人の一人が尋ねる。

「いや。さっき、外で話し声がしていたぞ」

 別の小人が声を上げた。

「何人できたんだ?」

 また別の小人に尋ねられ、

「二人。弟と旅をしていたんだ」

と読真は答えた。

「弟? お前みたいな子供が、たった二人だけで旅を?」

「この山の中をか? その割には荷物を持っていないようだが」

 訝しむ小人たち。その中の一人が、

「なら、まだ外にいるんじゃないか?」

 そう言って扉を開けて外に出た。しかし、少しすると戻ってきて、

「誰もいないぞ」

と告げた。

「なんだ、嘘か?」

 小人の一人が凄む。

「いや、だが、俺は確かに人の話し声を聞いたぞ。この小僧と、もう一人、子供の声がした」

 さっきの小人がそう言った。

「……逃げたんだろ」

 ふうっと、ため息とともに読真は肩を落とす。

「あいつは怖がりだし、それに……俺のことが嫌いだからな」

 すると、さっきまで意気込んでいた小人たちからは戦意が失われ、なんとも言えないため息が聞こえてきた。

「……仲が悪いの?」

 白雪姫が心配そうに読真の顔をうかがっている。

「……あんたとお后ほどじゃないよ」

 その言葉を聞き逃さなかった小人たちは、またも臨戦態勢をとった。

「やっぱり!」

「お后のことを知っているのか!」

「白雪姫のことも知っていた!」

「白雪姫がここにいることを知っていたんだな?」

 小人たちが口々に言い合う中、

「違うよ!」

 読真は叫んだ。

「じゃあ、なんで白雪姫とお后のことを知っている?」

「言えない。言っても信じてもらえないから」

 訝しがる小人たち。白雪姫がそんな彼らを制して口を開いた。

「さっきは『その子』なんて子供扱いしてしまったけれど、あなた……もしかして、私と同じ年頃なんじゃない?」

「俺は十四だよ」

「まあ! ぴったり! 私と同じ年だわ」

「……そう」

「ねえ。私と義母のことをどこで聞いたのかわからないけれど、本当の義母は愛に溢れた優しい人なのよ」

「愛に溢れた優しい人が、娘を殺そうとするか?」

「それも二度も」

 小人たちが白雪姫の話の腰を折る。白雪姫が目配せをすると、小人たちは口に手を当てて「何も言わない」姿勢をとった。

「国王である父は、私が三歳の時に再婚したの。それが今のお后様。私の義理の母よ。義母は、血の繋がっていない私のことを、心から愛してくれたわ。父のこと、臣下のこと、国民のことをいつも考えていた。よき妻、よき母、よき后になろうと、本当に頑張っていたの」

「……話がだいぶ違うな」

「あなたがどんな話を聞いてきたかは知らないけれど、私は今も義母に感謝している。私に愛することを教えてくれたのは、紛れもなく義母だもの」

 そう言うと、白雪姫は、お后との思い出を読真と小人たちに話して聞かせてくれた。


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