ブラザーコンプレックス.4
【生徒会部】
会長…………揚羽夜 烈静。カリスマ的存在。
副会長………千年。さわやか苦労人。
書記…………春日。
双子会計……楡&桐。
【転校生とその周囲】
王道転校生…近藤 夏海。もじゃっとした頭をしている。声が大きい。理事長の甥。
一匹狼………大河。
美少年………揚羽夜 満散。傲慢可愛い美少年。
巻き込まれ…田中 季沙羅。胃が痛そう。
【モブ】
平凡1………上早眠醒。語り部。
平凡2………山本。腐男子。
平凡3………前田。エロゲー好き。
みんなまぁるくタケモ○ピアノ~♪
電話してちょうだ~~い
タ○モトピアノ~~~♪
某幼児が泣き止むという有名なCMの着信音が早朝に鳴り響く。
「ん…んん…ぁあ…?」
「みんみーん、着ー信。電話出てぇーー」
「あぁ…ん。わかった……」
昨夜、季沙羅を含め遊んだ後、山本と前田は眠醒の部屋に泊まっていた。
そして……夜遅くまで、前田プレゼンツのエロゲーをやっていた。
早々とダウンする山本。音が煩く寝ることができない眠醒。一人テンションがあがっていく前田。
なにやら二次元なキャラの喘ぎ声や前田の『マジ俺の嫁!!ミカたん最高!!はぁはぁっ!!』という気持ち悪い叫びで全然眠ることができなかった眠醒。
かなりグロッキー状態であった。
「はぃ……もひもしぃ…」
寝ぼけ眠で携帯電話に出る。この着信音は一人しかいない。
『眠醒?』
「ん……叔父さん……おはよぅ…ごしゃいます……」
『ああ、悪いね。起こしてしまったかな?おはよう。眠醒』
「いぇ…だい…じょぶ…です……」
『みーんみん♪寝起き色っぽーい♪ぎゅってしちゃえー♪』
ふざけた山本は寝ぼけた眠醒に抱きつく。
「わっやめ……っ叔父さん冗談通じな…」
『誰か…隣にいるの?』
妙に凍えた声が電話越しから聞こえてくる。
「や、叔父さん!?これはっそのっ」
『…誰だ…私の可愛い眠醒を穢した奴は……っ!!!』
「ひぃぃっ叔父さん!ごっ誤解だよ!!俺はこの学校の悪習に染まってないから!!今のルームメイトだから!!ちょっと山本!!誤解されるようなことするなよ!!!」
「えっ何々?みんみんのお叔父様?こんな朝っぱらから電話するなんて超仲良いねぇ!どーもぉ♪眠醒君の隣で毎日寝てる、山本ですぅ♪」
『まっ毎日隣でっ!?貴様ぁ!!どこの家のものだ!!取り潰してやる!!』
「ひぃぃ!!隣の部屋で、だよ叔父さん!!山本ぉ!!ふざけるなよ!!叔父さん冗談通じないんだって!!!」
「やー、みんみんの叔父さん、めっちゃ美声だねぇ♪」
なんとも凄まじい三つ巴な状態の中、第四の勢力が…。
『あん♪奴ぇ隷ぃぃ!!もっとぉ!!わたくしを楽しませなさいぃぃ!!ぁああん!!』
「ミカたん最高!!超萌えぇぇ!!!」
朝早くから、昨日のログからエロゲを再生し始めた前田。
『女性の声!?まさかの3P!!??うっうちの眠醒が!!!??』
「だから違うって!!!前田!!お前空気読めよ!!」
朝からなんともまぁ、ドタバタな事であった。
そんなこんなと、誤解を解くのに非常に時間がかかった後。
「はぁはぁ、で、叔父さん…ごめんね。朝一に電話してくれるなんて…なんかあったんだよね?」
『……いや。昨夜電話することができなかったからね。……まあ、若いうちに友達と交友を深めるのは悪いことではない。……限度さえ守れば』
「は…はは…。はい、そうですね、叔父さん」
『どうだい?変わりはないかい?』
「叔父さんは…頻繁に電話してくださるからね。こんなちょっとじゃ変わることなんて――」
ふと、季沙羅に関わる一連のことが脳裏によぎる。
「………ないよ」
『……そうか。なら、いいんだ。腐れ縁から不安になるような情報を聞いてね。なにやら、学園を騒がせている生徒がいるらしい。先月季節はずれに転校してきたっていう、腐れ縁の甥っ子らしいんだが……関わると碌なことはないからね。近藤夏海って子には気をつけるんだよ?』
「はい、叔父さん。気をつけます」
うわー微妙に関わっちゃったよ…と苦笑いをする眠醒。
『私はいつでも君の幸運を願っているからね?何か困ったことがあったらすぐに言うんだよ?』
「…はい、ありがとうございます」
胸にじんわりと暖かなものが溢れてくる。
『それじゃあ、今度の夏季休暇に会えるのを楽しみにしているからね』
長い電話を終えると、学校に行く準備をしていた二人が眠醒の方を見ていた。
「えっと…なに?」
「みんみーん、もしかして叔父様が例の”足長おじさん”?」
「つーかなんだ?上早、お前平凡な癖してパトロンがいるのか?」
「ちょっ!!違うよ?永瞬叔父さんは、父親の弟で血縁だからね!?ちょっと、色々あってここでの学費とか出してもらってるんだけど…パトロンなんかじゃないし。あと、叔父さんはあんな限度をしらない愛情過多なプレゼントはしないよ!!」
「ふーん、じゃあそういう事にしておこうか?」
「ああ、そういう事にしておこう」
「そっそういう事って何!?」
「よーし、みんみーん、前々!朝ごはん食べに行こ!」
「おーう」
「なんか釈然としないけど…そうだね」
なんか一日が始まる前から疲れたー。
とぐったりしている眠醒を傍目に、他の二人はとっても元気にしていた。
「前々~みてみて~また季沙羅っち王道君に絡まれてるー!」
「うわ、まじだ。でも、わりかし顔色良さそう。昨日遊んだからかな?」
「「ま、でも絡まれてる今は関わりたくないけどね!!」」
何故かよい笑顔でグっと拳を合わせる。
「…はいはい、朝からテンション高いねー。俺ちょっとぐったりだよ」
「修羅場☆修羅場☆叔父様との18禁♪ぐふふっ」
「……山本、本気で出入り禁止にするよ?」
「みんみん酷!ルームメイトなのに!?」
「じゃあ、空いた部屋に俺が入ってエロゲし放題で万事解決だな!」
「えええーちょっと前々~!!そこは俺のフォローっしょ!!」
「代わりに俺の同室やる。冗談の通じない委員長。七三眼鏡。エロゲやってるとこ見られて軽蔑された奴。最近の会話、『よるな。オタクがうつる』」
「やだよぉ!!そんなの俺のBL本見つかっても軽蔑されちゃうじゃん!!」
「いいよ、山本。お前なら腐男子×がり勉委員長でフラグ立てて仲良くなれるから。俺はその間エロゲやってるから」
「前々~!!俺は読むのと妄想は好きだけどリアルには女の子が好きなんだよ~!!」
「………ちょ…お前ら黙れ。頭いたい」
「「…ごめん」」
いつものように軽口を叩きながら食堂で並ぶ。
「朝何しようかな~♪」
「上早、何にする?」
「朝食しらす御膳」
「渋いなー。俺フレンチトースト」
「俺は朝食がっつりセットかな」
がやがやと、食堂のおばちゃんから朝食をもらう。
朝食に夢中になっていた三人は気付かなかったが……。
「ねぇ、ちょっと!平凡、邪魔なんだけど!」
ざわめきとともに、あの揚羽夜兄弟の弟、満散がすぐ近くに来ていた。
(うをおぉぉぉ!!みっ満散様じゃん!!!超近い超可愛い!!)
(にっ二次元から飛び出してきたようだ!!これが男!?ありえない滅茶苦茶睫毛長いんだけどぉぉ!!!)
固まって脳内会話をする山本と前田。
「あ、ごめんね。もう受け取ったから、すぐ退くね」
へらっと笑って眠醒はすぐに退こうとする。
「ふん平凡が僕の行く先を塞ごうなんておこがましいよ!それに何、そのダサイ朝ごはん」
「えーと、朝食しらす御膳かな」
「平凡っぽい、なんのひねりもない朝食だね!ダサイよ!」
「はは、そうだね」
半笑いしながら、固まる二人を引き連れて眠醒は隅っこの目立たない席に移動していった。
若干、満散ファンの男共に睨まれながら。
「みみみみんみーん!!なに普通に満散様とお話してるの!!??」
「山本、なんか蝉の鳴き声っぽくなってるから」
「うらやましい!!動悸と息切れと眼に焼きつけるので忙しくって話しかけることもできなかったぜ!」
「前田、キモイ」
「普通に話しかけれるみんみんがすごいってぇ!!というか、あの理不尽な感じによく耐えられるね」
観賞用と実際に触れるのでは感覚的に違う。と山本は熱弁する。
いやぁ…眠醒はデレデレと、頬を染めながら語る。
「ああゆう我侭な子って、滅茶苦茶デロデロに甘やかしたくなるじゃん」
なんか、初孫を喜ぶお爺ちゃんのようなことを言う眠醒。
「え、そういうもんか?上早」
「もーう、平凡×ツンデレのイチャイチャも捨てがたいけどみんみんには是非総受けであって欲しいっていう何この葛藤!憎いよ!みんみん!想像が掻き立てられるよぉぉ!!」
「山本、妄想するな」
ちょっとしたハプニングがあったとしても、いつも変わらない三人であった。
が、それとは別のところで、少しの変化が。
「………満散、珍しいな。お前が朝にフレンチトースト以外を食べるなんて」
「いいもーん、今日は、そういう気分なのー。烈静兄様はいつも日替わり朝食だよね」
「あー!満散、しらす御膳って珍しいな!!」
「ほっといてよ夏海。今日はそんな気分なのー」