表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

ブラザーコンプレックス.2

【生徒会部】

会長…………揚羽夜 烈静(れっせい)。カリスマ的存在。

副会長………千年(ちとせ)。さわやか苦労人。

書記…………春日。

双子会計……(にれ)(きり)

【転校生とその周囲】

王道転校生…近藤 夏海(なつみ)。もじゃっとした頭をしている。声が大きい。理事長の甥。

一匹狼………大河(たいが)

美少年………揚羽夜 満散(みちる)。傲慢可愛い美少年。

巻き込まれ…田中 季沙羅(きさら)。胃が痛そう。

【モブ】

平凡1………上早眠醒(あげはやみんせい)。語り部。

平凡2………山本。腐男子。

平凡3………前田。エロゲー好き。


それはいつもの日のこと。


田中季沙羅はぽつんとした机にため息を吐いて座る。


……下駄箱の悪戯には慣れた。机の悪戯にも。

悪戯はこのクラスの人がやっているのではない。

実行犯は過激な親衛隊や転校生の取り巻きだろう。


だが……巻き込まれたくない、とクラスメイトに忌諱され遠巻きにされるのには慣れない。

ひとりっきりの机で、唇を噛み締める。……そうでないと泣いてしまうそうだ。


「………田中君」

「……っ」

顔を上げると…心配そうにするクラスメイトと目が合った。

「眠…眠醒君?」

「これ……ごめんね。靴…探したんだけど、片方しかなかったんだ」

「……っ」

涙がこぼれそうになる季沙羅。

「駄目…だよ…眠醒君……一緒にいる所がバレたら…君も、苛められちゃうよ……」

我関せず…を貫いていたクラスメイトがこちらを凝視している。

皆、一様に痛い顔をしている。

自分が出せなかった勇気…それを、クラスメイトが。


「大丈夫。山本と前田が見張りに立っててくれるから。たぶん、生徒会役員も親衛隊もしばらくは来ないよ」

「眠醒…君……もっもしかして、昨日昼食後に机に入っていた正露○も君が…?」

「たいしたことも、できないけどね。俺は…臆病だから…こんなことしかできないけど」

「……うっくっ……」

「平凡同盟の、同士だろ?山本も前田もちょっとあれだけど、君のこと、心配してたから。表立って動くことはできないけど、いつまでも、君の友達だから……」

「ふ…っっ、う、うん。大丈夫…ぅく。ありが…とう。君の、その言葉で…僕は……」


その言葉で、季沙羅は滂沱の涙を流す。悲しい涙ではなく、嬉しい涙。

涙で歪んだその顔が、笑顔を作ろうとしたその時―――


「ああああーーーーー!!!季沙羅を泣かした!!!!」

窓から入ってきて、二人を指差しながら甲高い大声を上げるのは、すべての元凶。


「夏海君!?」

「おい!!今季沙羅を泣かしただろ!!悪い奴だな!?悪い奴なんだな!!!烈静や春日に言いつけてやる!!!」

そう言いながら、転校生は眠醒に殴りかかる。

「をぁぁあ!?」

「や、やめて夏海君!!眠…っ上早君は違うから!!!」

「何でこんな奴かばうんだよ!!駄目だぞ!季沙羅!!本当のことを言えないなんて!!だから友達もいないんだよ!!」


首にかけられた手が、痛い。

襟を掴んだつもりで押し付けられる手が、上手い具合に眠醒の首を締め上げている。

眠醒は、失いそうになる意識の中、変態ツインズ!見張り失敗したな!!と悪態を突きながら、どうやったらこの場を逃れられるかを考える。


「近藤…く…ん……ご…かいだ…よ」

「おい!!何が誤解だって言うんだ!?」

「田中…くんが目にごみが入った…って言うから…目薬を…貸そう…と」


ドサっ。

眠醒は不自然に落とされる。


「なーんだ、そうだったのか!!紛らわしいことするなよ!!紛らわしいお前らが悪いんだからな!!それとオレは夏海だ!夏海って呼べよ!!」

「っげほっ…ごっほ……っ」

「大丈夫!?眠醒君!!」

「お前、みんせいっていうのか??」

「…っ近藤君。皆からは、みんみんって呼ばれているんだ。…そっちで呼んでくれない…?」

「眠々(みんみん)?パンダみたいな名前だな!!いいぜ!!」


(ごっごめんねっっ眠醒君っ!!!)

(いや、いいよ。田中君、大丈夫だから)


「そうだ、季沙羅!オレ、お前を呼びに来たんだった!なあ、一緒に生徒会室行こうぜ!!!楡と桐たちが遊びに来いって言ってたんだ!!」


季沙羅の顔が青ざめる。

また、今日も…蔑まれる時間が……。


「ごめんね、近藤君。田中君には俺たちと先約があるんだ」

「えっ!?」

「はぁ!?オレが誘ってんのに、そっちを優先させるのか!?」



眠醒は任せてと言うように片目を瞑る。

「中間テストが近いだろう?だから田中君にノートを見せてもらおうと思ってね」

「ああ!!お前あれだろう!!いじめだろ!!ノート見せろって田中に強要してるんだろう!!」

「いやいや、あのね。田中君の数学のノートはクラス一のわかりやすさなんだよ。俺は数学苦手だからね。いつも助かってるんだ。その代わりに一応古典が得意だから俺のノート見せるんだよ。あと山本は化学と物理だけはトップクラスだし、前田は英語得意だしね。ノートの見せ合いっこっていうか、勉強会みたいなものをするんだよ」

「勉強…会??」

「そう、毎放課と放課後にね。みっちり勉強会」

「あ、あーそうか!がんばれよ!!俺は約束通り、行かなきゃいけないしな!!勉強、うん!がんばれよ!!じゃあな!!!」


なにやら、後ずさりしながら去っていく転校生。


「裏口ってうわさは本当だったのか……」

ぼそりと眠醒はつぶやく。


「眠醒君…大丈夫!?あんな風に…絡まれて…っそれに名前も…っ」

「…大丈夫。名前っていっても、あだ名の方を覚えただろうし。直接さっきの言い合いを生徒会や親衛隊に見られたわけではないし」


…生徒会に名前が知られるのは不味いんだけど…ぎりぎりセーフかな…?

平凡ながらもしたたかさを見せる眠醒。


「ね、田中君。俺たち平凡同盟だしね。たいしたことは…できないけど。それでも、頼ってよ」


にっこりと田中を安心させる笑みを浮かべる眠醒。


制裁やいじめを表立ってとめることはできないけど、でも、それ以外にできることを、彼のために。


「うん」


今自分が陥っている現状は変わらないが、少し心が軽くなった季沙羅であった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ