ブラザーコンプレックス.1
王道学園風の登場人物紹介
【生徒会部】
会長…………揚羽夜 烈静。カリスマ的存在。
副会長………千年。さわやか苦労人。
書記…………春日。
双子会計……楡&桐。
【転校生とその周囲】
王道転校生…近藤 夏海。もじゃっとした頭をしている。声が大きい。理事長の甥。
一匹狼………大河。
美少年………揚羽夜 満散。傲慢可愛い美少年。
巻き込まれ…田中 季沙羅。胃が痛そう。
【モブ】
平凡1………上早眠醒。語り部。
平凡2………山本。腐男子。
平凡3………前田。エロゲー好き。
「夏海!こっちのデザートはいかがですか?」
「おう!春日、サンキューな!うっめぇ~♪なあ、季沙羅、ちゃんと食べてるか?」
「えっ!?いや、僕は…」
「夏海、平凡に構う。……良くない」
「そうだよぉ~?こおんな平凡放っておけばいいよ!なー、楡ぇ!」
「ねー桐ぃ♪夏海、はぃ、あーん」
「おっ桐、アリガトな!」
「……僕、もうそろそろ部屋に戻るから…」
「なんだよ季沙羅!付き合い悪いな!だから友達もできないんだぞ!」
「ぁあ゛!?こんな平凡構うんじゃねーよ夏海。おい、わかってんだろうな?平凡!!」
「酷いこと言うなよ大河!季沙羅とオレって親友じゃん!?」
などなど、大変に騒がしい食堂の一角。
周囲の嫉妬や羨望の眼差しを受け止め、その集団は食事をしていた。
美形さん美形さんひとつ飛んで美人さん可愛い子さん×2+もじゃ頭。
ひとつ飛んだのはいたって気弱そうな平凡な少年。
もじゃ頭は形容し難い不思議少年。
その、もじゃ頭の少年は右手左手正面に美形美人可愛い子ちゃんを挟んで、得意顔。彼らからの好意を一心に受けている。
それら美形な人たちに囲まれた平凡な少年は涙目で、嫉妬や理不尽な怒りに晒され、胃を押さえている。
誰か、正○丸を。
彼に○露丸を!!と言いたくなる始末。
それはまるで王道学園と呼べるような光景だった。
金持ち少年の集まる中高一貫の男子校。
閉ざされた場所での好意の対象は同性へ。
そんな中、顔良し家柄良し性格悪しの大評判な生徒会と、5月半ばで転校してきて早々に美形生徒会役員をメロメロにしていったもじゃ頭。
「いやぁー。王道ですねぇ♪」
「本当だな」
「美形みんなで喰っちゃえばいいよ!王道転校生にいやんうふんでズコズコしちゃえば良いよ!でもって嫌われ平凡も後からおいしく喰われちゃったらいいよ!」
「いいから、早く食べろよ。俺は早く部屋に戻ってワクどき☆メイドパラダイス~おにぃちゃんのハートにラブずっきゅん♪~のミサトちゃんを攻略しなきゃならないんだからな」
「っておいおい二人とも!転校生に絡まれている田中君が可哀そうだろ!?」
そんな愛憎渦巻く食堂の一角から離れ、他の生徒に紛れ込むように食事をしている三人。
そんな彼らの容姿は平々凡容。可愛く整った容姿の多い学園では逆に目立ってしまうような容姿だった。
「でもなぁ~季沙羅っちにかかわってこっちが苛めのターゲットにされるのもなぁ~」
「ああ、俺はそんな面倒に巻き込まれる前にむっちりボインなミサトちゃんと18禁なエンドを迎えたい。今すぐに!」
「…山本、前田。君たち…あのね。同じクラスの平凡同盟の同士・田中君のことを可哀そうと思わないのか!?」
「俺、萌えれればいいから」
「俺、エロゲーがあればいいから」
「この腐男子とオタクがぁ!!」
頭を抱えて項垂れる常識人系平凡、上早眠醒。
……彼がこの物語の主役だったりする。
「みんみん酷くねー?そんなみんみんだって他人の振りしてるじゃん」
「オタクで何が悪い!こんな山奥に隔離された男子校で変なベクトルに恋愛感情が走っていくより、胸のでかい二次元美女に惚れたほうがまだ健全だ!」
「いや、俺もさ…あんな変に目立つ生徒会の前で彼を擁護することはできないけどさ、でも…気持ちだけでは…さ。あと前田キモイ」
「みんみん、偽善者~かーわいー♪もう、みんみんも受けでいいよ。受けで」
「上早、意外と酷くね!?」
そんなこんなギャーギャー騒ぐ三人。
「でもさ、この王道な展開、すごくね?チャラ男会計とわんこ会計、双子書記に一匹狼な不良様!あとは俺様会長と会長に忠実な副会長を落とせばコンプだぞコンプ!」
「ああ、だがエロゲーもそうだが、俺様独善的な会長は落とすのが大変なんだ。ラブキュン女学園~生徒会を食べちゃうぞ♪~では俺(主人公)も跪いて靴を舐めたからな。ふふ」
「前田、キモいよ。大事なことだからもう一回言うけどキモイよ」
「でもさー、王道君。あとちょっとじゃん。ほら、来た!攻略の要!!」
すでにざわめいている食堂に、さらにざわめきがおきる。
「「「キタぁぁぁ!!!揚羽蝶様方ぁぁぁぁ!!!」」」
ざわめきと共に現れたのは、美形と呼ばれる生徒会の中でも一等美しい兄弟だった。
長身痩躯の美形は鋭い眼差しを周囲に向ける。
「煩い」
その一声に、周囲が悶える。
(ああっカッコ良すぎですぅぅ!!烈静様ぁぁぁ!!)
(さすがっ生徒会長様ですぅぅぅ!!!)
「本当、烈静兄様がカッコいいのは事実だけど、醜い声で呼ばれるのは本当に邪魔」
辛らつな言葉をかける小柄な少年。黒髪が美しい兄とは逆に、160しかない細い肢体。栗色の髪と色素の薄い大きな瞳にふっくらと桜色の唇の美少年。
(うをぉぉぉ!!!満散様ぁぁ!ツンデレが今日も眩しいぜぇぇぇ!!!)
(抱きてぇぇ!!いや、烈静様に殺されるからそんなことはできないけど犯してぇぇぇ!!!)
チワワのような可愛らしい少年から野太い男性陣まで、いままで生徒会や転校生に目を向けていた者たちは一様として今入ってきた二人に釘づけになる。
「いやいや、仕方ないでしょう。満散君。君たち兄弟にみんな首っ丈だからね」
さわやかに笑うのは、二人の後から入ってきた副会長の千年。
彼も大変整った容姿であったが、控え目に入ってくる。
「うーん、いつ見てもカッコいいし、可愛いなぁ揚羽夜兄弟♪もう、満散様総受けでいいよ。ツンデレで総受け、最強!」
「あれがメスならなぁ…確実に犯罪でもいいから拉致監禁するのに。ってか、あの可愛さ二次元並だなぁ」
「…やめてよ。二人とも……」
涎をたらさんとばかりに見る二人と、それを何とも言えない気持ちで見守る眠醒。
「ああ!!烈静に満散!!こっちこいよ!!一緒にご飯食べよう!!」
大きな声で二人に声をかけるのは、お約束通りに転校生。
烈静は眉間に少ししわを寄せると、腕を組んで離さない弟を一瞥する。
「あ。夏海だ。本当、あいつって不思議な奴だよね~。兄様ぁ、どうする?一緒にお昼食べる?僕は食べてあげてもいいけどぉ??」
「…他の奴らもいるな。俺は構わない。満散の好きにすればいい」
「本当?じゃぁ、一緒に食べよっかな♪どきなよ、一般人。僕と兄様の道をふさぐんじゃないよ」
満散の可愛い容姿に似合わないような辛らつな言葉。
だが、それが許されるような高貴さがその振舞いから滲み出ている。
「もーう、満散様、今日も絶賛ブラコン中なんだからぁ~♪烈静様も弟の言いなりだしぃ!!もう、二人で禁忌犯しちゃえばいいよ!兄弟禁忌萌え!!」
「ってか、それがあるから会長はまだ転校生になびいてないんだよな?弟が気に入ってるからしかたなく合わせてるって感じするよな」
「なんか、副会長も会長に従って…って感じだよね」
「よくあるバッドエンド的な生徒会全員職務放棄エンドになってないのは会長らがうまくコントロールしてるからだよな。会長副会長はしっかり仕事してるし」
「もーう、副会長は会長に忠義を誓ってるけど、実は弟の満散君が好きで、主人の弟に許されざる恋!とかで悩みに悩んで!もう、押し倒して既成事実作って会長のこと義理兄様って言えばいいよ!!」
「山本煩い。でも、俺様とかなんとか言われてるけど、会長ってすごいよね。独断的だけど、学園のために色々な仕事してるし」
「ああ、あんな男にだったら俺の嫁のミナトちゃんも譲るぜ」
「でもって会長は実は副会長が好きだったりして…三つ巴?3p!?まさかの入れて入れられての禁断の世界!!はぁはぁ、もっ萌えぇぇ!!!」
「前田、二次元の嫁は良いから。あと山本煩い」
そんなこんななカオスとは別に、転校生の周りではまた混沌とした状態になっていた。
「なぁなぁ、烈静!なに頼むんだ?」
「………」
「兄様はいつでも日替わり御膳だよ。夏海は何頼んだの?」
「オムライスだぜ!!」
「ふーん、じゃあ、今日はミートスパゲッティにしようかな。あ、一般人とかぶってる。嫌らしいな。そんなに僕と同じもの食べたいの?」
「え!?ぼっ僕は普通に食べてただけで……」
「ふん、平凡。満散君に気に入られようとわざとするなんて、あざといね」
「本当、平凡。悪い奴」
「そっそんなつもりじゃぁ……っ」
何をどうやっても、巻き込まれ平凡の季沙羅は糾弾される。
蒼白に、胃を押さえる様はまさに生贄の羊のようで………。
「「「よし」」」
コクリと、平凡同盟の三人は決意をする。
友人として、彼にできることを。
「正露○持っていこう」
「生徒会生写真を頼もう」
「エロゲを持っていこう」
「「「………」」」
顔を見合わせる三人。
「山本、前田。とりあえず、田中君のためになることをしようよ」
みんみんこと眠醒は腐男子とオタクに溜め息を吐いた。