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水の洞窟・睡蓮 2





[ぐぅ、…っ、ああああ!!]


 ウンディーネの放つ水の魔法が、容赦なく私たちに襲い掛かかる。彼女の放つ魔法はどれも素早く強力で、避けるのが精一杯だった。


「わっ、うわわ!」

[メェ~! メェ~!]

「やめろウンディーネ! 俺たちに戦う気はない!」

[っ、ああああああああ!!]


 トウマくんが言うけれど、その声はウンディーネには届かない。聞こえていないようだ。


「光よ、我らを守れ! ルクトシールド!」


 パニックになっている黒ゴマを連れて、一旦アイシクルが張った結界の中へ。ウンディーネは手当たり次第に様々な魔法を放ち続けて、結界を壊そうとしてきた。


「っ、なんつー力だ! このままだとすぐに壊れる!」

「ウンディーネ、一体どうしちゃったの?」

「わからない。でも、この状況はまずい。なんとかしないと…!」

「戦うのか?」

「いや、戦って勝てるような相手じゃない。無闇に突っ込んでも八つ裂きにされるだけだ」

「じゃあ、どうするの?」

「うーん。こういう時リィドさんが居てくれたら…」


 腕を組んで、トウマくんは顎に手を添える。ウンディーネの度重なる攻撃で、結界にはひびが入り始めていた。それを見たアイシクルは目を見開き、ひび割れたところに新しく小さな結界を張る。


[メェ~]

「!」


 そこで、パニックから回復した黒ゴマがトウマくんの腹部に頭を押し付けた。メェ~。と鳴き声をあげ続ける黒ゴマを見て、トウマくんは彼女の頭に手を置いて息を吐く。


「…大丈夫。こんなところじゃ終わらないから」

[メェ~。メェ~]

「…?」


 黒ゴマの頭を撫でて、安心させるようにトウマくんは口元を緩ませる。そこで彼はふと頭の上に"?"を浮かべた。目線の先には黒ゴマの頭と二本のツノ。二本のツノの片方には宝石の付いた腕輪が嵌まっている。


「…っ、そうか! これだ!」

[メェ!?]


 何か思い付いたのか、叫びながらトウマくんは黒ゴマの頭に置いていた手で素早くツノを掴む。突然自分のツノを掴まれて吃驚したのか黒ゴマは再びパニックとなってその場で暴れだし、慌ててトウマくんは黒ゴマを落ち着かせた。


[メェ!]

「ご、ごめん黒ゴマ。ちょっと興奮しちゃって…」

「トウマくん、どうしたの?」

「思い付いたんだよ。ウンディーネと戦わずにこの場を乗り切る方法が」

「その方法早く言ってくれ!…っ、もう魔力が尽きる…!」

「黒ゴマ。これ、少し借りるな」

[メェ~]


 言って、トウマくんはツノから腕輪を外す。ツノに傷が付かないように慎重に外して、彼はそれを自分の腕に嵌めた。


 腕輪に装飾された宝石が淡く光を放っている。見ると、腕輪には黒ゴマに盗まれた銀色のブローチがくっついていた。そんなところにあったのか。


「その腕輪でどうするの?」

「"精霊壺(ケージ)"を作る」

「ケージって?」

「契約した精霊を収容しておくためのものだよ。精霊壺を作ってウンディーネと契約をかわす事が出来れば、彼女と戦わずにこの状況から抜け出せる」

「上手く行くの?」

「上手く行かせるんだ」


 そして、トウマくんは光っている宝石の上に手を置く。


 眉をひそめて深く息を吐き、目を閉じて呪文を唱えた。足元には魔法陣が描かれ、黒ゴマは私のうしろに隠れる。その呪文は、聞き馴染みのない言葉で唱えているようだった。


[メェ~]


 心配そうに黒ゴマが見つめる。


「っ、うわ!」


 その時、結界が音を立てて割れる。結界が壊れた衝撃で、アイシクルは後方に倒れた。


 結界が無くなったことでこれまで防がれていたウンディーネの攻撃が一斉に私たちに襲い掛かかってくる。


「アイシクル!」

[メェ~!]

「アイシクル、大丈夫?」

「ごほっ、…悪い。防ぎきれなかった」

[メェ~!]

「…よし、出来た! アメリア、アイシクル、一旦部屋の外に避難! 黒ゴマも行くぞ!」

「え?」


 すると、トウマくんは言って走り出した。トウマくんの言葉に黒ゴマは鳴き声をあげ、彼のあとについていく。


 私も、それを見てアイシクルを立ち上がらせて足を動かした。ウンディーネの攻撃を避けながら部屋の外まで避難すれば、トウマくんは深く息を吐く。


「…アメリア、君にこれを」

「これは?」

「精霊ウンディーネの精霊壺(ケージ)だ。何段階か工程はしょっちゃったから、うまく使えるかわからないけど」


 トウマくんから受け取ったのは、透明色の宝石が装飾されたイヤリングだった。それは、今私が耳に付けているアクセサリーと少し似ていた。そういえば、前に貰ったウンディーネ専用の精霊壺もこんな形だったな。


「これで、どうするの?」

「ウンディーネと無理やり契約するんだ」

「契約?」

「うん。多少粗っぽいやり方だけど、その精霊壺を使えばウンディーネを止められる」

「どうしてこれを私に?」

「君は前にウンディーネと契約してたから、今回も君が適任だと思って」

[メェ~]


 トウマくんは言う。


 眉をひそめて、私はイヤリングを見つめた。未だに部屋の中ではウンディーネの声が響いている。その声はとても苦しそうだった。


「…。ウンディーネ、元に戻るの?」

「それは…。やってみないとなんとも」

「……」


 もう一度、イヤリングを見つめる。


 一か八かの賭け。

 しばらく考えたあと、私は眉をひそめて力強く頷いた。


「わかった。ウンディーネと契約すればいいんだね?」

「大丈夫なのか?」

「ちょっと不安だけど、トウマくんたちが援護してくれるんだよね?」

「ウンディーネと契約するためには彼女にある程度近づかなきゃいけないから、アメリアを上手くウンディーネの視界から逸らす必要がある。それは、俺とアイシクルの役目だ。大丈夫。アメリアには指一本触れさせないから」


 口元を緩ませて笑う。作戦は決まった。

 まず最初にアイシクルとトウマくんが部屋の中に入っていってウンディーネの注意を引く。ウンディーネが完全にアイシクルたちに気を取られているとわかったら、次に私が彼女に気付かれないように背後から近付いて"契約の呪文"を唱える。そして最後に彼女と契約して作戦終了。晴れてウンディーネは元の優しいお姉さんに戻り、万々歳というわけだ。


 この方法で本当にウンディーネが元に戻るといいんだけど、成功するか失敗するかは私の頑張り次第だ。あと、精霊壺の性能。


「…、」


 ウンディーネの様子を覗き見て、トウマくんは部屋の中に入るタイミングを伺う。部屋の中に入ってしまえば、あとはスピード勝負。凄く緊張してきた。


「今だ。二人とも準備はいい?」

「いつでも」

「う、うん。大丈夫! いけるよ!」

「よし。それじゃ、お互い死なないように頑張ろう!」

[メェ~!]


 時の加護を我らに。トウマくんは言う。


 そして、私たちはトウマくんの合図で部屋の中へ入り、ウンディーネとの契約作戦を開始した。



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