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精霊戦争記 ~異世界に転生した私が世界を救う話~   作者: aki.
第5章「学校生活と剣術の師」
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剣聖武闘大会2 ※トール視点






 剣聖武闘大会。予選。

 予選Aグループの戦いは、どの試合も白熱したものとなっていた。


 世界中から集まった数多の剣術自慢の男たちが血と汗を流し、そして荒れ狂う。年に一度の称号を賭けて戦う男たちの姿は、毎年毎年様々な形状を浮かべて俺たちの前に色を残していた。


「ぐっは!」

《おおっと! これまた一撃必殺! トール選手、またしても一瞬にして勝利を掴みました!》


 相手の血で塗れた剣を振り払い、鞘に収める。腹部に強烈な一撃を浴びた対戦相手の男は、白衣を着た救護班らしき人たちによって運ばれていった。


《これはもしかすると今年の優勝者はトール選手で決まりなのか!?》


 熱気溢れる実況の男の声を聞きながら控え室に戻る。控え室に戻ると、そこには残りの出場者の他に異様な仮面を被った男が会場を映した魔法モニターの前に立っていた。男は俺に気が付くと、軽快な足取りで声高々に近付いてくる。


「おー! お疲れさんトールくん!」

「…ああ」

「今の試合も、これまでの試合もずっと見てたで! 相変わらず涼しい顔で容赦ない攻撃してたなぁ。 お相手さんが気の毒やで」

「相手が弱すぎるのが悪い」

「相手が弱すぎるんじゃなくて、トールくんが強すぎるんや。あんさん年々自分が強くなってんの気付いてへんやろ。…でもま、これでトールくんは予選突破か」

「そうだな。…次はお前の番だ。負けるわけはないと思うが、頑張れ」

「おう! 決勝でトールくんと当たるためにも予選準決ともにらっくらくに突破するで!」


 おー! と、仮面の男は声をあげる。話していると、予選Aグループ終了という声が聞こえてきた。しばらくの休息を挟んで予選Bグループの戦いを開始するとの事だ。


「…あれから、炎の柱はどうなっている?」

「問題あらへんよ。リィがしっかりと目を皿にして見張っとるからな。それに、主も定期的ではあるけど様子を見る言うとったから、これからはリィと主の二人体制での監視や」

「なるほど。俺たちはこれからどうすればいい?」

「しばらくは何もせんでええって」

「…トウマはどうするんだ?」

「トウマくんは只今絶賛学生生活謳歌中やから心配せんでもええ。卒業してからは考える必要あるけど」

「そうか」

「精霊の方もあと半年くらいで契約終了やし、これでわいらのやる事はだいたい終わったって感じ?」

「だいたい…な」

「あ。そういや、アメリアちゃんの方はどうなっとるん?」

「少しずつではあるが、強くはなってきている」

「もうすぐ約束の五年やろ? 大丈夫なんか?」

「どうだかな。だが、これまでの道は以前のそれとはだいぶ違っている。最悪の事態は避けられるだろう」


 約束の五年。それを過ぎれば、俺の"魔法の師"という役割は終了する。これまでの五年で、あいつは少しずつではあるが着実に成長してきた。魔力の抽出はまだ完全にマスターしたわけでは無さそうだが、だがすべてはあいつが"最終試練"を突破出来るかどうかで決まる。剣術の方も師から教えを叩き込まれているようだし、そこまで心配する必要もないだろう。


《それでは! あと5分で予選Bグループの試合を始めたいと思います! 出場される方がたは控え室の方にお戻りください! 繰り返します! あと5分で…!》


 そこで、控え室に熱狂冷めやらぬ実況の男の声が響く。観客席からも"早くしろ早くしろ"との声も聞こえてきていた。血の気の多い奴らだ。


「お。もうすぐやって」

「…それじゃ、俺はあいつらの所に行く。無用な傷は負うなよ」

「え。それはさすがにトールくんやないから無理」


 仮面の男は笑う。


 頑張れとの意味を込めて肩を叩き、俺は男に背を向けて観客席方面へ歩き出した。



+



 わー! と、実況の男と同じような熱量で観客たちが声をあげる。アメリアたちの居る席の近くまで歩いてくると、すでに仮面の男の試合は始まっていた。


《ああっと! これはキツい一撃! ダバダハ選手立ち上がれるか!?》


 どうやら仮面の男の攻撃が、相手の懐に大当たりしたらしい。ドスンという音と共に仰向けに倒れ、大男は痛みで表情を歪ませていた。


 戦いの勝敗や優劣に体格の差なんてのは理由にはならない。もし戦う相手が自分よりも何倍も大きな身体の持ち主ならば、その相手の強さに合わせて己の力をコントロールすればいいだけの話だからだ。


《さぁ。只今、判定員がダバダハ選手のもとへ近付いていっています》


 控え室から判定員の男たちが走ってきて、倒れている相手の男と会話を交わす。


 しばらくの会話のあと、判定員の一人が実況の男を呼び寄せて会話の内容を伝えた。どうやら相手の男は途中棄権(リタイア)という形で負けを宣言したらしい。


《ダバダハ選手途中棄権! よって、勝者は謎の仮面ゼット選手!》


 声を大きくあげて実況の男が言うと、観客席は大きな歓声をあげる。それを聞いた仮面の男は武器を収め、アピールしているのか両手をあげた。


「あ、トールさん!」


 それを見て、呆れながら小さく息を吐く。そうしていると俺のもとにアメリアがやって来た。表情から察するに、少し興奮しているようだ。


「トールさんトールさん! 見てましたか今の! …あっ、予選突破おめでとうございます!」

「…落ち着け」

「落ち着いてなんていられませんよ! あの仮面の人何者なんですか!? あんな大きな男の人をたった一突きで倒しちゃいましたよ!? 凄いです! トールさんの強力なライバル出現ですね!! 」


 興奮が止まらないのか、早口で捲し立てる。先程まで会場の熱気に圧倒されて緊張していた奴とは思えないな。


「詳しい事はわからないが、相当な手練れだというのは聞いている。確かに、あいつは強敵になり得るかもしれないな」

「ですよねですよね! もしあの人とトールさんが決勝で当たったら凄い試合になると思うんです!」


 まだ準決勝もやっていないと言うのに、もう決勝の話をしている。こいつの頭の中では俺はもう決勝まで勝ち残っているみたいだ。


「でももしそうなってもトールさんが勝ちますよね! 私、精一杯応援します!」

「ちょっと! 何を言っていますの!?」

「!」

「勝つのは絶対に謎の仮面ゼット様ですわ!」


 するとそこに、あいつと同じ仮面を被った一人の少女が叫びながら近付いてくる。勝手についてきたと言っていた少女か。どうやら彼女も一緒に観戦していたらしい。


「違うよ! 勝つのはトールさんだよ!」

「いいえ! 勝つのはゼット様ですわ!」

「トールさんだって!」

「ゼット様ですってば! わからない人ですわね!」


 本人を目の前にして言い争いを始めるアメリアと仮面の少女。


 その様子を、近くの観客席に座っていた人たちは微笑ましい表情を浮かべて見つめていた。こんな所で喧嘩をしている暇があるなら試合を見ろと言いたい。


「トール。アメリアたち回収しに来た」

[回収! 回収!]

「…頼む」


 そして、それから予選BグループはAグループと同様に白熱した戦いとなり、長い時間を掛けて行われた予選は興奮と熱狂が止まらぬ最中で終わりを迎えた。



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