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精霊戦争記 ~異世界に転生した私が世界を救う話~   作者: aki.
第5章「学校生活と剣術の師」
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文字の勉強中 ※トウマ視点






 この世界の文字は複雑怪奇だ。


「うーん、…」


 学校の図書室にて借りてきた"マジュリアの歴史"という本と、ローデンさんから借りた"マジュリア語辞典(自作)"という本を開いた状態で机の上に置き、頭を抱える。ノートに本と辞典の内容を書き写して文字の読み書きをひたすら覚えていく方法は勉強の基本としてありがちだからいいのだが、なんなんだろうか、この覚えられてるのかまったく覚えられていないのかわからない感じ。


 学校の授業が終わって寮の自室へ帰ってきてから3時間。ひらすらに机に向かって本&辞典とにらめっこしているけど、あまり成果はあげられていない気がする。


「トウマさーん。はかどってますか?」


 今すぐに本を窓から捨てて逃げ出したい。そう思いながらにらめっこを続けていると、部屋の扉が開いてアンジェラが中に入ってきた。手には三種類のクッキーが乗った皿を持っていて、顔を向けると彼女は笑って近付いてくる。


「はかどってるよ。うん。はかどってる…」

「その表情を見るに、はかどってるようには見えないんですけど」


 はぁ。と、息を吐いて頭を掻く。こんなに頭を悩ませて勉強するのは高校の受験勉強以来だ。


 眉を下げて、アンジェラは持っていた皿を邪魔にならないように机の上に置く。美味しそうな匂いのするクッキーだ。バニラとチョコとバターはちみつ味のクッキーが二つずつ皿には乗せられているらしい。


「どこかわからないのですか? わかる範囲でなら教えますよ?」

「いや、大丈夫だよ。ありがとうアンジェラ」


 クッキーありがとう。

 そう言って、俺はチョコ味のクッキーを手に取って口に運ぶ。サクサクしていて程よく甘味があって美味しかった。


 聞いてみると、このクッキーはアンジェラの手作りらしい。…女の子の手作りお菓子なんて初めて食べた。


「…? あの、これ何て書いてあるんですか?」

「ん?」


 俺のノートを見つめて、アンジェラは言う。そのノートにはこの世界の文字と俺が居た世界の文字がびっしりと見やすいように交互に並んで書かれていた。


「こちらの文字はわかりますけれど、こちらは…不思議な文字ですわね」

「あ、ああ。えっと、これは、外国の文字で…」

「外国の?」

「そ、そうなんだ。この文字は、東の国に古くからある文字で、馴染みがある文字だからたまに使うんだよ」


 はは。と、眉を下げて笑う。まんま嘘っぱちですが、俺がこの世界の人間じゃないって事は絶対に言えないのでしょうがない。

 あまり友達相手には秘密を持ちたくない主義なんだけど、主さんとの約束だからこればっかりは貫かないと。


「東の国の文字。…へぇ。東の国にはこのような文字が存在しているのですね。知りませんでした」


 ノートに書かれている文字を見て、アンジェラは目を輝かせる。


 新しい知識を得るというのは彼女にとってとても喜ばしい事のようで、何処へ行っても何をしていても気が付けば勉強しているその姿からクラスメイトからは"勉強女王"と呼ばれているそうだ。主に男のクラスメイトにだが。


「トウマさん。これは何て読むのですか?」

「ああ。これは、…」

「トウマー。ちょっと入るぞー」


 ふむふむ。と、ノートに夢中になるアンジェラ。これは勉強どころではなくなってしまった。俺が書いた文字を順に見つめて、逐一それが何て読むのかを聞いてくるアンジェラに俺は肩を落として口元を緩ませる。まぁ、少し休憩って形で気晴らしするのもいいだろう。


 そう思って、俺は彼女の質問に答えていく。するとそこで、部屋の扉が開いて誰かが中に入ってきた。声に気付いて顔を向けると、そこに居たのはクラスメイトのサンゼル。サンゼルとは体力測定の妨害の時から仲良くさせてもらっている友人だった。


「この前言ってた本あったから持ってきた、ぞ…」


 部屋の中に足を踏み入れたサンゼルは俺とアンジェラの顔を交互に見て一瞬だけ固まり、持っていた本を足元に落とす。そんな彼を見てアンジェラと二人、頭の上に"?"を浮かべた。するとハッとサンゼルは肩を震わせて我に返り、何を思ったのか顔だけを廊下に出す。そして。


「おーい!! トウマが部屋に女連れ込んでるぞー!!」

「「!?」」


 と、寮全体に聞こえるように叫んだ。

 その言葉を聞いて俺とアンジェラは目を見開き、俺は慌ててサンゼルを部屋へ引き込んで"今のは冗談!"と訂正して勢いよく扉を閉める。


「ちょっと何言ってんだよ!? 吃驚するんだけど!?」

「見たままを言ったまでだが。いやぁ、まさかお前らがそんなムフフ関係だったとはな。お前ってアンジェラみたいなんが好みなのな」

「俺とアンジェラはそんなんじゃないから!」


 ベッドに座らせて、軽く説教。

 ニヤニヤと口元を緩ませて気持ち悪く笑うサンゼルにイラッとする。今だけその顔剥いでやりたい。


「わかったわかった冗談だよ冗談。本気にすんなって」

「冗談に聞こえなかったんだが?」

「いやぁ、俺ってば演技力A+だから」

「……」


 ケラケラと笑うサンゼル。

 それを見て、俺は呆れて溜め息を吐いた。


「…で、頼んでた本は持ってきてくれたんだろ?」

「ん。ああ、そこにあるぜ」


 扉前に落ちている本を指差す。

 拾い上げて、パラパラとページを捲るとそこには知らない文字がたくさんあった。さすが古い本。これははかどりそうだ。


「探すの苦労したんだぜ? なんせそれ結構昔の本だからな。…何に使うんだ?」

「うん…。文字の勉強にちょっとね」

「文字の勉強? …ああ。そういやお前文字の読み書き出来ねぇもんな。それ知った時は吃驚したぜ。"文字が読めなくて書けないトウマさんも可愛い!"って女どもが騒いでたな。…ったく、それのどこが可愛いんだっての。なぁ?」

「…、はぁ。やっぱりあれはこういう意味だったのか。ならこっちは」

「…って、無視かよ」


 ふむふむ。と、顎に手を添えて勉強を再開する。ローデンさんから借りた辞典と本を照らし合わせて、文字をノートに書き写した。今は頭に入らなくても、毎日コツコツ勉強していけばおのずと覚えられるだろう。勉強というのはそういうものだ。


「あっ。…え、えと、では、私はそろそろ戻りますね」


 そこで、アンジェラが口を開く。

 何やら慌てた様子で部屋から出ていき、改めてクッキーのお礼を言おうと顔を上げた時にはもうそこには彼女の姿はなかった。


 部屋を出ていく時のアンジェラを見ていたサンゼルは、何故かまたも気持ち悪い笑みを浮かべてニヤニヤする。


「…なんだなんだ。やっぱりやる事やってんじゃんトウマくん」

「ん?」

「とぼけなくてもよろしいよ。大丈夫。誰にも言わないから」


 親友だものね。

 そう言ったサンゼルは緩ませている口元を隠して気持ち悪い笑みを浮かべたまま俺を見つめる。


 彼が何を言っているのかわからなかったが、またそのイラッとする顔を見せてきているのでもう気にしないでおこう。



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