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精霊戦争記 ~異世界に転生した私が世界を救う話~   作者: aki.
第5章「学校生活と剣術の師」
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基本は素振り





「よし。アメリア、これから剣術の修行を始める」

「はい!」

「剣術の基本は素振りだ。素振りの型がなっていなければ、強者への第一歩は踏めん。振って振って振りまくれ。そこから剣術の道は始まるのだ」

「はい!」

「では、お前の素振りを見せてみろ! まずは一万回だ! 始め!」

「はい! …って、え? いちま、一万回!?」


 これが、アイシクルに昼食を届ける前の私と師匠の会話。今朝の事だ。朝食を食べ終えてわくわくしながら庭へと足を運んだ矢先に言われたのがその言葉で、私は地下から持ってきた中くらいの木剣を持ちながら軽く吃驚。一万回も出来るわけがないと口を出そうかと思ったけれど、師匠に口答えは出来ないので仕方なく一万回頑張り、それから2時間あまり、現在の素振りの回数は"231回"だ。


 そこまでの回数の素振りをすると私の腕はどうなるのか。言わずもがな、死んでしまうのである。今思えば、よくその死んだ腕でアイシクルの昼食持っていけたな。


「…に、299、…さ、300…っ、!」

「ほら、頑張れアメリア。あと9700回だぞ」

「さん、びゃく…いち…っ! …は、…し、師匠、もう無理です。腕が限界!」

「なんだ、だらしがないな。まだ500もいってないじゃないか」

「はぁ、はぁ…。い、一万回なんて無理です! せめて半分、…いえ、1000回に…してください」


 はぁ。と、大きく息を吐いてその場に座り込む。トールさんのお見舞いが済んで30分後、私は師匠と共に剣術の修行を再開していた。素振りの続きをやり始めたのはいいけれど、午前中の疲れがまだ取れていなかったようで、素振りを再開して10分、もう腕が上がらなくなってきた。木剣を持つ両手に力が入らない。今日はもうこの手は使い物にならないかもしれない。


「まぁだが、アメリアもまだまだ子供だ。無理もないか。…なら仕方ない。その言葉通りに1000回にまで減らしてやろう」

「!」

「私も鬼ではない。一万回はあくまで目標だからな。この一年の間にそれは達成すればいい。気長にな」

「し、ししょ~!」

「よしよし。泣くな泣くな。そのかわり、アイシクル」

「はい?」

「お前がアメリアの代わりに残りの9000回素振れ」

「…はい?」


 私の肩に手を置いて、隣で同じく素振りをしていたアイシクルに師匠は言う。その言葉を聞いて、アイシクルは振り続けていた木剣をピタリと止めた。


 アイシクルが素振りに参加している理由は、師匠が"見ているだけではつまらないだろう"と彼に言ったからである。



+



「1141。1142。1143。せんひゃくよんじゅう…」


 そしてアイシクルは、私の代わりに9000回の素振りをやらされる羽目になった。


 今この場には私とアイシクルの二人だけで、師匠はラーフェイさんに呼ばれて何処かへ行ってしまった。"すぐに戻る"と言っていたので、すぐに戻ってくるのだろう。


「1150。1151…」


 ぶんぶんとリズム良く鳴り続ける木剣を振る音とアイシクルの声が耳に届く。それを、私は休憩がてら座りながらボーッと眺めていた。


「1155。1156」

「…、」

「せんひゃくごじゅう…。…あの、アメリア?」

「?」

「そんな見つめられるとやりづらいんだけど…」


 剣を止めて、アイシクルは言う。


「アイシクルって凄いね。この短時間でもう1000回越えちゃったよ」

「え? あ、ああ、うん。まぁ、これくらいは…」

「いいなぁ。私なんて300回やって腕がパンパンだもん。…私も男の子に生まれてれば1000回くらい余裕なんだろうなぁ」

「アメリアが男だったら嫌だよ、俺」


 男の子になった場合の私でも想像しているのか、アイシクルは眉をしかめて素振りを再開する。


 私が男の子だった場合、私とアイシクルの関係はどうなるのだろう。


「私が男の子だったらさ。アイシクルどうする?」

「だから嫌だってば」

「例えばだよ。例えば」

「例えばでも答えたくないよ、そんなの」

「いいから答えてよ。私が男の子だった場合、どうする?」

「…。…そうだな。…まぁ、友達にはなってるんじゃない?」


 眉をしかめたまま、嫌そうに答える。

 ふむ。まぁ、男の子同士ならそうだよね。婚約者にはならないか。


「そんな事より素振り。早くやらないと日が暮れるよ」


 言って、アイシクルは再び素振りの回数を数え始める。そんな彼を見つめて、私もすぐ傍の地面に置いていた木剣を手に取って、休憩は終わりと渋々だけれど立ち上がって素振りを再開するため木剣を振り上げる。


 そこで、師匠が戻ってくる。

 ラーフェイさんとメイドさんも一緒だった。


「あ、師匠。おかえりなさい」

「素振りは順調か?」

「はい。順調です!」

「…サボってたくせに」

「! い、今から頑張るからいいの!」

「はは。順調なのは何より。その調子で1000回頑張れよ」


 言って、師匠は私の頭に手を置く。

 見ると、メイドさんは荷物を持っていた。


「? 師匠、何処かに行くんですか?」

「ああ。外せない用事が出来てな。これから南の国へ行ってくる。帰りは、一ヶ月後になるかな」

「え? それじゃあ修行はどうするんですか?」

「安心しろ。私が居ない間はラーフェイが代わりにお前の剣術を見てくれる」

「ラーフェイさんが?」


 師匠からラーフェイさんの方に顔を向けると、彼女は口元を緩ませて笑いながら小さく手を振る。


「こう見えてもラーフェイは、弟子の中でもイチ・ニを争う程の剣の実力者だからな。十分に私の代わりをつとめてくれるだろう」

「よろしくね、アメリアちゃん」

「…、」

「それじゃ、私はそろそろ出発する。馬車を待たせているのでな。…行くぞ、メイド」

「……」


 そして師匠は私たちから離れてメイドさんと一緒に門方面へと歩いていく。


 これから一ヶ月の間、師匠が居ない。外せない用事が出来てしまったのは仕方がないけれど、少し残念な気持ちだ。


「行っちゃったわね。…ごめんなさいねアメリアちゃん。修行が始まったばかりなのに」

「い、いえ。外せない用事が出来てしまったのは仕方がないですし。それに師匠の代わりにラーフェイさんが見てくれるって話ですから」

「あら、いい子」


 ラーフェイさん曰く、師匠から一ヶ月分のメニューは伝えられているそうなので、予定どおりに修行は進められるとの事。


 とりあえず今日は素振り1000回の達成を目指せ。との師匠からの伝言だ。


「素振り1000回…」

「がんばりましょうアメリアちゃん。あと何回やればいいの?」

「アメリアがあと700で、俺があと7800くらいです。合計して一万なので」

「あらま。共同作業ってわけね。それ素敵!」


 あと700回も素振りをしなけれぱいけないなんて地獄です。


 でもアイシクルの残り回数を考えたらあと700なんて全然マシな方なので、口に出しては言わない。


「……、」


 素振り1000回を達成したら、一体私の腕はどうなってしまうのだろうか。はぁ。と、溜め息を吐いて、私は素振りを再開した。



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