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夢を見た。けど、さっぱり覚えていない。

 




「…………ん、」


 目を覚ますと、そこはベッドの上だった。


 寝惚け眼でゆっくりと起き上がり部屋を見渡す。いつの間に帰ってきたんだろうか。何も覚えていない。


「……………」



 ーーなんだか、とても不思議な夢を見た気がする。



 +


 学校に行くため外出用の服に着替えて、鞄を持ち1階のリビングへと降りていくと、そこにはリィドさんとアイシクルが居た。


 テーブルを挟んで合い向かいに座り、二人は朝御飯を食べている。


「あら、おはようアメリア」


 ぽかん。としながら彼らを見ていると、銀色のトレイを持ったお母様が近付いてきた。トレイの上には紅茶が入ったカップが二つ。リィドさんとアイシクルの分だろうか。


「目が覚めて良かったわ。一昨日の夜に帰ってきてからずーっと眠ったままだったから心配してたのよ?」

「おはよう、お母様。……ん? 一昨日?」

「?。覚えてないの? 一昨日の夜、眠っている貴女をアイシクル君が連れてきてくれたのよ。それから今日まで貴女ずーっと寝ていたんだから」


 お母様は言う。


 ずっと寝ていた? 一昨日から?


「どういう事?」

「それはこっちが聞きたいわ。…それより、早く御飯食べちゃって。遅刻するわよ」


 見れば、私の分の朝御飯がアイシクルの隣に置いてある。


 お母様の言葉に従い、……よくわからないけれど、私はアイシクルの隣の席に座ってフォークを手に取った。本日の朝御飯は目玉焼きとベーコンエッグだ。


「おはよう、アメリア」

「おはようございます、リィドさん」


 挨拶もそこそこに、テーブルの上に置いてあった朝刊を見る。私の朝はこれを読まないと始まらない。

 朝刊には、この間取り上げられていた魔法学園爆発についての続報が記されていた。犯人を無事に捕まえる事が出来たらしい。それは良かった。


「はい、アメリア。紅茶」

「ありがとう、お母様」


 目玉焼きを口に運んで、紅茶を一口。

 (ほの)かな甘味。

 これは私の大好物"蜂蜜紅茶(はちみつこうちゃ)"だ。口の中で広がる絶妙な甘味が堪らず、何杯でも飲める美味しさだ。


「……で。リィドさんはなんとなくわかるんだけど、なんでアイシクルまでここに居るの?」


 ぷは。としっかりと紅茶を堪能して、アイシクルの方に顔を向ける。

 家が無くなったリィドさんがうちに居るのは、まぁなんとなくわかる。一時しのぎの宿として使っているか、たまたま立ち寄ったかのどっちかだ。

 アイシクルの方は、何故ここに居るのかさっぱりわからない。眠りこけた私を連れてきたって言うのは聞いたけど…。


「俺が居たら駄目か?」

「別に駄目とは言ってないけど。…何でかなって思って」

「…うーん。まぁ、寝てたから仕方ないか」

「ん?」

「…それより、早く食べなよアメリア。君を待ってて俺まで遅刻ってのは勘弁だからな」

「別に待っててくれなくてもいいんだけど」

「そういうわけにはいかないんだよ。今日は。特に」

「?。どういう意味?」


 きょとんと首を傾げる。


「…ここで問題。今日は何の日だ? 解答権は一回」

「えっ、問題? 今日は何の日って……そんなのわかるわけないじゃない」

「じゃあヒント。去年は散々だった」

「は? ますますわかんないんだけど?」


 突然、謎の問題を出すアイシクル。頭の上に"?"を浮かばせながら訝しげな表情で彼を見つめ、ベーコンを口に運ぶ。

 お母様とリィドさんは、二人で何やら話し込んでいた。


「わからないか? ならもう一個ヒント。答えは、いつも君が忘れてるとても大切なイベントだ」

「んん?」


 いつも私が忘れてる、とても大切なイベント……?

 それは、ヒントになっているの?


「……テスト、とか?」

「…。…はあ」


 盛大に溜め息。

 テストは来月だ、ばーか。

 そう言われて、額を指で弾かれた。

 ……痛い。


「そんなヒントでわかるわけないでしょ。……答えは?」


 少しだけ、赤くなった額をさする。


「言わない」

「は、」

「毎年の事だからな。今年は自力で思い出して欲しい」

「………何それ」


 む。と、眉をひそめる。

 そんな私の顔を見て再び溜め息を吐き、アイシクルは椅子から立ち上がった。


「…食い終わったら出てこいよ。待っててやるから」

「……」


 今日は何の日。

 ……、うーん。考えてみてもわからない。今年は自力で思い出せってどういう事よ。


「…って、聞いてないし。いつもの事だけど」

「ん? 何?」

「いや、別に。…玄関で待ってるから、早く来いよ」


 言って、アイシクルは私に背を向けて歩いていく。残っていた目玉焼きとベーコンエッグを全部平らげ、私も椅子から立ち上がった。

 壁に掛けてある時計を見ると、急げばまだ学校に間に合う時間だ。一昨日から眠りっぱなしで今日起きたって事は、昨日は私は学校は休んだって事になる。皆勤賞を狙っていたのに。ちょっと残念。


「ご馳走さま。……いってきます、お母様、リィドさん」

「ふふ。いってらっしゃい」

「頑張ってね」

「……ん?」



 ……ーー頑張ってね?


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