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精霊戦争記 ~異世界に転生した私が世界を救う話~   作者: aki.
第5章「学校生活と剣術の師」
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魔法使用OK! 全力鬼ごっこ!





 トール先生による楽しい楽しい魔法の授業。四年と二ヶ月目。本日はトールさんが急用で出掛けてしまったため、師匠に仕えているのメイドさんがトールさんの代わりに授業をしてくれる事になりました。


 トールさんに渡されていたメモによると本日の授業は"魔法を使っての街全体を巻き込んだ全力の鬼ごっこ"だそうで、ルールも事細かに書かれていた。喋らないメイドさんの代わりに説明すると、それぞれチームに分かれて鬼チームと逃亡者チームを決めてもらい時間内に鬼になったチームが逃亡者チームを時間内に全員捕まえられる事が出来れば鬼ごっこは終了。となるそうだ。もし時間内に全員が捕まらなければ翌日に持ち越しになるのだとか。


 チームは私ことアメリアチームとラーフェイさんチームに分けられ、アメリアチームのメンバーは私とアイシクル、スイさんとコロタマ。ラーフェイさんチームのメンバーはラーフェイさんとエーデリア師匠、それとメイドさんだ。


「え!? 師匠も参加するんですか!?」

「面白そうだったからな。安心しろ、加減してやる」


 ふふふ。と、師匠は笑いながら拳と拳を突き合わせる。口元は笑っているけれど、目が笑っていない。


[鬼ごっこ! 鬼ごっこ!]

「それじゃあ、どのチームが鬼になるかはじゃんけんで決めるわよ!」


 チームの代表者、私とラーフェイさんが前に出てじゃんけんをする。私がパーでラーフェイさんがチョキ。ラーフェイさんが勝ったので、ラーフェイさんのチームが鬼だ。


 普通ならこの場合勝った人が逃亡者になるのだけれど、ここではメイドさんがルールとなっているので勝った人が鬼という事になっていた。


「あらん。鬼になっちゃったわね。ごめんなさい師匠さん」

「なに。逃亡者より鬼の方が楽しいからな。謝る必要はない」

「逃亡者かぁ。…あの二人から逃げる切るのは大変そう」

「ラーフェイさんとエーデリアさんはともかくとして、わからないのはあのメイドだよね。…スイさん、あの人ってどんな人なんですか?」

「俺もよくわからない」

[メイド! メイド! 能力未知数! 未知数!]


 メイドさんの事については、スイさんもコロタマもよくわからないらしい。

 わからない人ほど怖いものはない。ラーフェイさんもそれは同じだ。


「制限時間は10時間。それまでの間に鬼は逃亡者を全員捕まえて、この牢屋に閉じ込めてください。ですって」

「……」


 メイドさんの代わりにラーフェイさんがメモの文章を読み、メイドさんは懐から懐中時計を取り出す。あの時計で時間を見るのだろう。カチッと時計の側面に付いていたボタンを押して、それを合図に、本日の授業、街全体を巻き込んだ魔法使用の全力鬼ごっこが開始された。コロタマの"鬼ごっこ!"という言葉で私たちは走り出す。


 隠れる場所は沢山あるとは言っても、これはかくれんぼではなく鬼ごっこなので時間内に捕まる可能性は限りなく100パーセントに近い。


「とりあえず、ひとかたまりになってちゃ駄目だ。みんなバラバラに逃げよう」


 スタート地点の屋敷からしばらく走ったところで、アイシクルが提案する。その言葉に頷いて、私たちはそれぞれ、広場、平民街、商店街の三つの方面へと逃げる事になった。


 お互いの無事を祈って。

 精霊の加護が私たちにありますように。



+


「はぁ。…はぁ、」


 アイシクルたちと離れてしばらく。商店街にやってきた。この時間の商店街は人が多い。とりあえず何処かに隠れたい。そう思って私は息を整えながらキョロキョロと辺りを見渡した。すると、前方に路地裏へ続く道があるのが見えた。


 あの道に入ればしばらくの間は見つからないだろうと、そこを目指して足を動かす。人混みの中を掻き分けて、やっとの思いで路地裏への道がある場所に辿り着いた。その瞬間、そこで私は誰かとぶつかってしまった。前を見ていなかった私が悪いのだけれど、誰もこんな路地裏の入り口に人が居るだなんて思わない。ドンという音が聞こえて、その衝撃で尻餅を付いてしまう。


「きゃっ!?」

「!」

「ご、ごめんなさ…」


 イテテ、と声を漏らして私はぶつかってしまった人に謝りながら顔をあげる。

 顔をあげた瞬間、見えたのは燃えるような赤い髪の毛だった。


「君、大丈夫?」

「っ、…」


 膝に手を付いて、その人は私に手を差し伸べる。私はその人の顔を見て目を見開き、少しの間そこから動けなかった。唇が震えて、冷や汗も浮かぶ。どうして、この人がここに。


「? どうしたんだい?」

「…!」


 声を掛けられて、ハッとする。

 大丈夫です。と震える声で言いながら立ち上がって、私は服に付いた埃を払った。


「ごめんね。少し余所見してて前が見えてなかった」

「…いえ。それはこっちも同じでしたから。すみません」


 ペコリと頭を下げる。

 口元を緩ませて、その人は私の頭に手を置いてくしゃりと撫でた。


 ざわざわとした感覚が胸を貫く。


「礼儀正しい子だね。これからは気を付けてね。…まぁ、俺もだけど」


 はは。と笑って、その人は私から離れていく。慌てて顔を上げるが、その人はもう人混みに紛れて何処にも姿はなかった。


「……」


 眉をひそめて、胸に手を当てる。

 ざわざわとした感覚が落ち着かない。


「アメリア!」

「!?」


 その時、背後から突然大きな声が聞こえた。吃驚して振り向くとそこにはアイシクルが居て、彼は慌てて此方に近付いてくる。


「アイシクル? 広場に逃げたんじゃ…!」

「広場には行ったよ。でもすぐにラーフェイさんに見つかって捕まりそうだったけど、魔法で撹乱してこっちに逃げてきたんだ」

「ラーフェイさんに?」

「アメリアは、まだ誰にも追い掛けられてない?」

「…うん。私はまだ。…でも」

「でも?」


 眉を下げて、奥歯を噛み締める。


 "あの人"の顔が頭から離れない。柱はまだ現れていないはずなのに、どうして…。


「……」

「アメリア?」

「! あ、えと、な、なんでもない。それならとりあえず今は私と一緒に逃げよう!」

「う、うん…」


 先程の出来事については一先ず置いておいて、今は鬼ごっこに集中しよう。鬼ごっこ終了までは、あと9時間と15分。時間いっぱいまで逃げられるかは私の足次第だ。ふるふると頭を振って気持ちを切り替え、私はアイシクルと一緒に路地裏の道を走る。


 その様子を、人混みの中から赤い髪のその人はじっと睨むように見つめていた。



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