体力測定・壁登り球投げ
「第二測定! 壁登り球投げー!」
「壁登り球投げ?」
トウマくんの体力測定、二つ目は壁登り球投げだ。第一測定の妨害あり長距離走で体力をほぼほぼ使い果たしてしまったトウマくん。このまま引き続いての測定は先生の判断で不可能となってしまい、彼の体力測定の続きは午後の部の授業の時間に持ち越される事となった。
そして午後の部の授業の時間となり、私たちは先生に連れられて学校の裏側へ。そこで先生に第二測定の内容が伝えられると、トウマくんは頭の上に"?"を浮かべた。
「何ですかそれ?」
「名前の通りだ。球を投げて壁を登る。その投げた球を屋上でキャッチ出来れば成功だ」
学校の屋上を親指で指差しながら先生は言う。
「球は何処に?」
「球は自分で作るんだ。魔力でな」
「魔力?」
「こうやって」
言いながら、先生は手のひらに黒い球を生み出す。手のひらの上でくるくると回る黒い球を見つめて、トウマくんは目を見開いた。
「この球を投げるんですか?」
「そうだ。屋上までは推定15メートル。屋上でキャッチするならそれ以上投げなきゃ駄目だが、…いけそうか?」
「……」
先生の言葉にトウマくんは少しだけ不安そうな表情を浮かべて屋上を見上げる。少し時間を置いて、彼は息を吐いて手のひらの上に魔力の球を生み出した。
手のひらの上に浮かぶのは綺麗な水色の球。球の色はその人の魔力の強さを表している。色が濃ければ濃いほど、その人は強い魔法を撃つことが出来る人という事だ。水色の球は、中級の魔法を使えるか使えないかというところだった気がする。
「それじゃ、第二測定開始だ。アメリア、双眼鏡の準備は?」
「大丈夫です、先生」
「よし。行くぞトウマ。…よーい」
「……」
スタート! という掛け声と共にトウマくんは球を屋上に向けて放り投げる。
ものすごいスピードで空に飛んでいく球を、私たちはクラス全員で揃って顔を空に向けて見つめた。そしてトウマくんは壁を登り始めて屋上を目指す。第一測定で見せた壁登りのように、トントンと軽快なステップで軽々と登っていくその姿は見ていて気持ちが良かった。
「トウマの奴すげぇな。もうあんなとこまで行きやがった」
「これなら球キャッチ余裕だろうな」
「おれもあんな風に壁登りしてみたい」
「まるで猿だな」
「よし。これからあいつの事はモンキートウマと呼ぼう」
男の子たちが、トウマくんの壁登りを見て声を漏らす。数分後、彼は屋上に到着して落ちてきた球を受け止めた。屋上からトウマくんが顔を出して、私に球を見せる。私はそれを双眼鏡で確認して先生に報告した。壁登り球投げは成功だ。
「トウマ! やっぱお前の壁登りすげぇな! さすがだぜ!」
「どうやったらあんな風に登れるんだ? 今度おれに教えてくれよ!」
「オレもオレも!」
「トウマくん素敵すぎる! 惚れちゃいそうだわ!」
「私も! トウマくんカッコよすぎでしょ!」
屋上から風の魔法を使って降りてきたトウマくんに男の子たちが群がる。中には女の子たちも何人か混ざっていて、トウマくんの事を褒め称えていた。
その様子を、私は双眼鏡を弄りながら見つめる。…どうしよう、輪に入り損ねた。
「トウマさん、さすがですね」
「そうだね。アンジェラは行かなくていいの?」
「…ええ。私はここでトウマさんが囲まれているのを見ているだけで十分ですから」
笑いながら、アンジェラは答える。すると、先生がパンと手を叩いて私たちを自分の方に向けた。どうやら時間が余ってしまったらしい。相談した結果、残りの時間で私たちも壁登り球投げをする事になった。
先生曰く、私たちは入学時に一度壁登り球投げはやった事があるから余裕で出来るだろうとの事。もちろんみんなからはブーイングの嵐。私も先生に言いたい事は山ほどあった。
「苦情を言いたいのはわかるが、これはもう決めた事だからな。誰が何と言おうとやってもらうぞ。恨むんなら先生じゃなくてトウマを恨め」
「トウマ、お前何て事してくれたんだ!」
「このモンキー野郎! 責任取れよ!?」
「え!? 俺のせい!?」
怒りの矛先が先生からトウマくんに向けられる。先ほどまで皆に凄い凄いと言われていたのに、ひっくり返るのが早い。
「いいか。どんなに時間が掛かってもいいから必ず壁は登りきれ。球は取れなくてもいいから」
「穴が開いたらどうするんですか?」
「大丈夫だ。スコップ持ってくるから」
「…テメェで開けた穴はテメェで処理しろって事か」
「トウマ! 責任取って今度ジュース奢れよ!」
「え、」
そして私たちも先生の合図で壁登り球投げをする羽目になり、教室へ戻る頃には男の子たちも女の子たちもヘロヘロになっていた。




