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精霊戦争記 ~異世界に転生した私が世界を救う話~   作者: aki.
第5章「学校生活と剣術の師」
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吃驚する再会






 先日、エーデリア師匠に"学校をどうするのか"という疑問を投げ掛けましたが、師匠の屋敷に住み始めて数日。ようやくその答えが返ってきました。学校は変えなくていい。との事です。


「今日からこれを使え」


 そう言って、トールさんが叩いたのは屋敷の壁。そこには楕円形の穴が開いていた。

 トールさんに案内されてやって来たのは、中庭からぐるっと回った所にある屋敷の裏側。屋敷の裏という事もあってこの場所には特に目立つような物はなく、色とりどりの花がたくさん植えてある花壇が何個かあるだけだった。


「何ですか、これ?」

「ワープホールだ。…ポータルとも言うがな。今日からここを通って学校へ行け」

「これでですか?」

「他に手段はないからな。それに、たった一年ぽっちのために慣れ親しんだ学校を辞めなければいけないのは酷だろう」

「…このポータル? は、何処に繋がってるんですか?」

「行ってみればわかる」

「……」


 恐る恐るワープホール…ポータルに入ってみる。足を踏み入れた時、ふわふわと不思議な感覚が全身を襲った。虹色の空間をキョロキョロと見渡しながらゆっくりと出口へ向かう。出口からひょっこりと顔を覗かせると、そこは学校の正門前の道だった。一体これはどうなっているのかと首を傾げる。


 そこで、トールさんの声が背後から聞こえてきた。学校が終わったら端末で連絡しろ、との事。屋敷へ帰るためのポータルを開けてくれるそうだ。ひょいと地面に足を付けるとその瞬間ポータルが閉じられる。


「……」


 うん。

 確かにこれなら、学校を変える必要はないな。


+


「アメリア!」


 正門を通ると、背後からアイシクルの声が聞こえた。立ち止まって振り返れば、彼は正門前に居る通学確認ロボット・アンディくんの認証を終わらせて走ってくる。どうやら驚いているようだ。


「おはよう、アイシクル」

「ど、どうしてここに? エーデリアさんのところで修行するんじゃ…?」

「うん。師匠のところで修行するよ。でも学校は変わらなくていいって、トールさんが」

「兄さんが?」

「たった一年ぽっちのために慣れ親しんだ学校を辞めなければいけないのは酷だろう。って。だからポータルを利用してここまで来たの」

「ポータル? なにそれ?」

「ふふ。私たちの秘密兵器」

「秘密兵器…?」


 きょとん。と、アイシクルは首を傾げる。

 そこで私はアイシクルの姿に少しだけ違和感を覚えた。眼鏡を掛けていたのだ。


「…ねぇ、アイシクル。その眼鏡は?」

「ん? ああ。うん。これはね、エーデリアさんから貰ったんだよ」

「師匠から?」

「この眼鏡を掛けてるとさ、右目を隠していなくてもいいんだ。エーデリアさんが言うには、この眼鏡にはエーデリアさんの魔法が掛かってるらしくて、こうしてるだけで右目の力を抑えてくれるんだって」

「…どういう事?」

「つまり…。あー、えと、…こっち来て」


 説明するより見て貰った方が早いと思ったのか、アイシクルは私を昇降口前の花壇が並んでいる場所へ連れていく。


 そこに咲いている花を見つめながらアイシクルが眼鏡を外すと、みるみるうちにその花からは魔力の結晶が現れた。


「ほら。この状態だと花には魔力の結晶が現れてるだろ? これが眼鏡を掛けると」


 次にアイシクルは眼鏡を掛けて別の花を見つめる。先ほどは魔力の結晶が現れたけれど、今度は花をしばらく見つめていても変化はなかった。


「ね?」

「凄い。その眼鏡どうなってるの?」

「詳しくは教えてくれなかったから俺もわからないけど、たぶんこの眼鏡には"抑制の魔法"が掛かってるんだと思う」

「抑制って?」

「その人が持つ魔力を一定以上にならないようにする補助魔法だよ」

「…つまり、その抑制の魔法がその眼鏡に掛かってるからアイシクルの右目の力が抑えられてるって事?」

「たぶん」


 アイシクルの話を聞いて、ぽかんと口を開ける。どうやらアイシクルが師匠から貰ったその眼鏡はとても凄い力を備えた眼鏡のようだ。そういえば前に師匠が"アイシクルに土産を持たせる"とか言っていたけれど、この眼鏡がそうなんだろうか。


「あと、この眼鏡の他にコンタクトレンズって物を貰ったんだ」

「コンタクトレンズ?」

「うん。でもそれはもう少し大人になってから付けなさいって」

「…ふーん」


 口元を緩ませて、アイシクルは笑う。右目を隠さなくても良くなった。っていうのは本人的に凄く喜ばしい事なんだろうけれど、話を聞いていくうちになんだか胸の中にもやもやした気持ちが現れて素直には喜べない自分がそこには居た。


 右目を隠さなくても良くなったという事は、すなわちそれは右目を包帯で覆わなくて済んだという事。学校に通う前からアイシクルは右目に包帯がマストだったため、学校に通うみんなは今までアイシクルの右目が左目と違う色をしているというのを知らなかった。アイシクルの左右の目の色違いについては、それまで私たちと私たちの家族の間でしか知らない情報だったのに…。


「……、」

「アメリア? どうしたの?」

「…なんでもない。早く中入ろ」

「あ、ちょっと待って!」


 なんだかよくわからない感情が渦を巻いて胸の中を駆け巡る。眉をひそめて、私は足早にその場を離れた。


 そして私とアイシクルは学校の中へ入り、廊下の途中にある階段で別れる。もやもやとした気持ちのまま教室の前まで行くと、何やら教室がガヤガヤと騒がしかった。見ると、教室の隅で女の子たちが群がっている。


「おはよう」

「あ、おはようございますアメリアさん」


 声を掛けると、アンジェラが近付いてきた。何があったのかを聞いてみると、近くに居た男の子が代わりにその質問に答えてくれる。


「転入生が来たんだよ。そんで、女子がキャーキャー言ってるわけ。うるせぇったらないよまったく」

「転入生?」


 机の上で頬杖を付きながら男の子は言う。

 彼は眉をひそめながら、教室の隅で群がる女の子たちを睨み付けていた。


「…あれ、何やってるの?」

「オレが知るかよ。…おーい! オレたちを無視するな女子どもー!」

「そうだぞ! そいつ以外にも男いっぱい居るからたまにはこっち見ろ!」

「あんたらじゃガキすぎて駄目なの!」

「そーそー! あたしたちは年上の誠実な殿方が好みなんだからガサツなあんたたちなんて眼中にないわよ!」

「なんだとこのブスども!」

「誰よ今ブスって言ったの!?」


 女の子たちの中心に居るのはアンジェラの知り合いの男の子だそうで、その男の子とはしばらく会っていなかったそうだが職員室の中で偶然再会したらしい。


 知り合いが居たのならちょうどいいと先生に頼まれて彼にこの学校の案内していたところ、噂を聞き付けた女の子たちが強引に彼をこの教室へ招き入れてしまい、あれよあれよと言う間にこんな状態になってしまったんだそうだ。


「ねぇねぇ、貴方何処から来たの?」

「珍しい格好をしてるわね。もしかして平民なのかしら?」

「平民にもこんなカッコいい男の子が居るのね。初めて知ったわ」

「彼女は居るの?」

「家族は? お父様は何してる人?」

「あ、…えーと、…何て言えばいいのか…」


 女の子たちの質問責めに、何やら男の子は困っている様子。

 鞄を机の上に置いて近付いてみると、彼女たちの中心に居る男の子の顔がちょっとだけ確認出来た。黒い髪の男の子だ。あれ? 見た事のある顔。


「嘘!? トウマくん!?」

「? アメリアさん、トウマさんの事知ってますの?」

「あ、えと、…うん。ちょっとした知り合いかな?」


 頭に"?"を浮かべながら、トウマくんを見る。どうしてこんな所にトウマくんが居るのか。


「おーい、何やってんだお前ら。始業ベル鳴ってんだろ。早く座れ」

「えー! もう終わり!?」

「もっと色々聞きたかったのにー!」

「あまり転入生いじめてやるな。いいから座れ。トウマはこっち来い」

「あ、はい…!」


 教室に入ってきた先生に諭されて、女の子たちはそれぞれ文句や残念そうな声を漏らしながら渋々それぞれの席につく。それを見て男の子…トウマくんはホッと息を吐いて肩を落とした。


 そしてトウマくんは足を動かし、先生のもとへ。その途中で彼は私に気付いて吃驚した表情を浮かべていた。



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